人並みに紛れ、

 

三条方面に向かう。

 

 

とおりすがりの旅行者でしかない私に、

 

出来ることはないのだろうか・・・と考えていたら、

 

河原町オーパビルに差し掛かる。

 

 

「はて、ここは、以前 輸入雑貨店だったはずだけど、

 

ずいぶん様がわりしたな」と、フロアガイドの案内を眺めた。

 

 

8FにBOOKOFFがあるんだ―と思ったとき、

 

閃いた。

 

「もしかしたら、古着を扱っているかもしれない」

 

 

 

彼のズボンは、座面の腰部から両大腿部にかけて

 

擦り切れたすえに失われたのだろう、

 

背後からは下着と太ももが丸見えだった。

 

 

それでも、

 

そのズボンを身に纏っている、ということは、

 

彼の社会性の証明だ、と私は感じていた。

 

ならば、私は、

 

せめて、そこを扶けようと思った。

 

 

エレベーターで8Fに行くと、

 

幸いなことに、衣類も取り扱っていて、

 

私はじきに、Used感の少ない、こざっぱりした、

 

アンクル丈Ⅿサイズのボトムスを見つけた。

 

合わせてグレーのTシャツ、

 

それと麻の葉文様のトートバッグを見繕い、

 

このトートバッグの中に、

 

ボトムスとTシャツを入れてもらい、急いだ。

 

 

 

「おじいさんは、まだあの場所にいるだろうか・・・」

 

 

 

彼は、デパートの出入り口付近を

 

冷気を求めてうろついていた。

 

 

ほっとして、私は彼の後ろから声をかけ、

 

「これをどうぞ・・・」とバッグを手渡した。

 

 

少なくとも、今の恰好でいるより、

 

店舗の人たちから、

 

追い払われる目に合う回数は減り、

 

少しでも、涼しさを味わえるだろう。

 

 

―これが今の私の精一杯、そう思いながら、

 

私は、彼から離れた。

 

 

日本国憲法は、

 

すべて国民に生存する権利を保障している。

 

 

しかし、

 

その権利を利用する能力こそが、

 

不平等なのだ、とヒリヒリ思った。

 

 

そして、日本は、欧米諸国に比べても、

 

ホームレスの方々への慈善事業が極めて貧しい。

 

 

 

京都市役所を右手に―、

 

大きな観光寺院を通り過ぎ―、

 

そんなことを想いながら、歩いていたら、

 

古くからの家並みに迷い込んでしまった。

 

 

ともかくも、大通りを目指そうと歩いていたら、

 

路地方から、

 

ささやかな水の流れる音が聞こえてきた。

 

 

その音を辿ると、

 

白山神社が祭られていた。

 

 

町衆が守ってきた小さな小さな神社。

 

 

 

思わず、手を合わせ

 

あの老人の幸いを祈った。

 

 

 

新月満月