◇人工膝関節のキネシオロジー

・膝関節の屈曲に伴うRoll back motionを誘導して、安定した屈曲可動域の確保を図る。

・滑り運動と転がり運動が両方必要。人工関節もRoll back motionが必要。

 

・PCL温存型(CR型)。PCLの緊張を使って回転させる。骨―インプラント間のストレス軽減による長期成績の向上。ACLは切除する。

 

・PCL置換型(PS型)。ポストカム機構により屈曲に従いRoll back運動が誘導(機械的に可能)。ACL・PCL切除するため手術手技が容易で安定した成績が得られる。骨セメント使うこと多く、初期は固定性いいが、後々緩みやすい可能性も。摩耗が生じやすい。

 

 

・CR型はPCLが機能しないとRoll backが起きず、可動域制限が大きく生じてしまう。高齢者は靭帯が緩んでいることが多い。そのため術後もうまくいくかどうかはわからない。

 

・PS型はACL切ってしまう。大腿四頭筋を使いすぎてスクワットなどすると、脛骨が前に押し出されて曲がりにくくなるかもしれない。骨盤後傾位で膝曲げるとPCL緩んでしまうので、ハムも聞きかせる必要あり。

 

 

・Mobile Bearing型。PS型は無制限の内外旋を許容する。CR型は5mm前後の可動を許容、無制限の内外旋。

 

・耐久性:10年 90%~20年 50%くらい。主因は骨と人工関節間のゆるみ。誘因として人工関節内の過度の摩擦。20年くらい前の手術でも半分くらいは持っているイメージ。今の手術はどれくらい持つか?

 

・関節の摩擦係数:生体関節0.005~0.02、人工関節0.1~0.3 氷0.03

 

・緩んでいると荷重時など痛みが出てきたり。膝蓋骨の関節面も摩耗しやすい。

 

 

・TKAの膝蓋骨置換部のポリエチレンの力学的安定域10MPa。動作中の接触面の偏りや膝関節伸展モーメントの過剰な上昇により、膝蓋骨置換部の摩耗を容易に引き起こす。TKAの膝蓋骨骨折の頻度0.66%~3.2%。多くが外傷機転ない。膝蓋骨にかかる力は体重の3~6倍、接触圧が最大となる角度60~90°最大12Mpa。

 

・膝蓋骨がずれたりQuadの張力の変化などで、接触面が偏ると問題が生じてくる。スクワットなど大腿四頭筋を過剰な使用で、膝蓋骨への負荷大きくなったり。立ち座りなど殿筋やハムも使っていく。骨盤を前傾させていく

 

・大腿直筋はパテラの表面につく。骨盤後傾位で膝曲げていくと、ドスンすわりに。その勢いでパテラに圧力集中して折れることも。→安定した動作指導が必要。

 

 

◇目標

・人工関節は機能障害を改善する目的で行われる。術後の身体機能は術前より良くなっていなくてはならない。ゴールありきでスタート。期間も限られている中で進めていく。

 

・長期成績を保障する身体機能、動作獲得を目指さなくてはならない。人工関節が再置換せずにすむような動作パターンになっているか。

 

 

◇病態 術後

・下肢アライメント、関節形態、機能の劇的変化

→中枢神経系の混乱による運動制御能力の障害

 

・内部世界。内部状況の劇的変化によって、動くために必要な知覚の手がかりを判別することができない。その行為に対する結果の正しい予測ができず、体固めて運動自由度を拘束した動作パターンを構築していく。関節角度を固定したような動き方に。棒みたいな感じで動かしたり。

→術部に負担がかかる

→新しい動作学習に半年くらいはかかるかもしれない。

 

・OAや膝OAは特に経過が長いので、より修正に時間がかかる。

 

・TKAの人は痛みに過敏な人が多いというみかたも。術後2,3週間たっても腫れて痛いという人。疼痛に対する閾値が下がり、慢性疼痛となっているかも。感作、自律神経の反応など、、CRPSに近い状態になっているかも。荷重しても痛くない、という感じを繰り返しインプットできるか。

 

・痛いのに無理やり曲げるみたいなやり方は逆に強化してしまうので。痛みのない状態というのを経験学習していければ。

 

 

◇目的

・運動機能の混乱を合理性に基づいた適応状態に収束

・運動課題と環境に相互作用するための新たな探索を行い、より適切な運動戦略を組織化することが重要

・動くことと、知覚することへの新しい戦略の学習が必要。他動ではなく、自分で動いてもらって(誘導して、徐々に自動で)。

・ボールをまっすぐ転がしてもらうなど。自転車こぎもあり。股関節、膝関節、足関節の協調的な動き

 

・足が重いという人、、、重いと感じているのは知覚の問題?足を動かすための筋力が弱いか、、重いと思い込んでいる?重いから棒みたいに持ちあげるような動きになったり。痛い膝をつくときは後ろにのけぞりながらつこうとしたり。

 

・ただ可動域、筋力改善だけでなく。

 

 

◇動作分析のポイント

・立位、起立着座、歩行立脚中期における下腿の直立化と、術中FTA(骨切して軽度外反位、角度は?)が荷重動作時に再現されているかを観察。

 

 

・TKAのアライメントデザインは静止立位時に前額面からみて下腿が床面に対し垂直になるようにデザインされている。下腿が直立していても膝が内反していたら、FTAが再現されていない可能性。

 

 

・矢状面では歩行中にDouble Knee Actionが出現しているかを観察。2回の膝屈伸がある。膝を固定して歩く人が多い。

→ボディイメージができていない。関節が動かないよう固めて動かす。疼痛回避的な歩き方に。

 

・DKAがないと、同じところに負荷かかり摩耗が進む。

 

・ICで膝は完全に伸展する必要がある。TKAは靭帯が緩い状態なのでより伸展して圧縮応力で安定させたい。ほとんど筋活動はないので、大腿・下腿が直線配列になるように

 

・LRにかけて膝が曲がって、衝撃を吸収。曲がらないと吸収できない。

 

・MStで一度膝が伸び上がる。重心を高くして推進力作る準備。膝曲がりっぱなしだと大腿四頭筋を使いっぱなしになる。そのまま続けると、パテラにも負荷がかかる。

 

◇評価

・下肢アライメントの評価、、、内反、FTA、、

 

・筋力の弱化か?靭帯が緩んでいるための不安定性か?

・可動域、拘縮の問題か?

・臥位の内反角度、立位(荷重)の内反角度の差がない場合は、拘縮の問題。内側ハム、関節包など

・内反アライメント→外側関節面の離開→可動域制限、DKAの消失、、

 

・脛骨の位置もみたり。後方に下がっているか、、PS型だとRoll backが難しくなる。end feelは?関節可動域評価(屈伸)

 

・人工関節は基本120°屈曲が可能。

 

 

◇治療

・Roll backの有無と後方関節包の緊張。ないと膝関節90°くらいで止まる。膝窩部、後方に突っ張るような痛みがでる。120°まで行かないことが多い

 

・後方の関節包は元々硬いが、Roll backがおきるとたるんでくる。ないとより伸ばされてガチっと止まるような感じ。

→脛骨を前に引き出しながら膝を曲げないと、後方関節包の緊張がゆるまない。後外側不安定性を引き起こす可能性もある。前に引き出しても可動性変わらない場合は、他の要因も検討。わかりづらい

 

・脛骨上での大腿骨の後方移動が大きいほど、より大きな屈曲可動域が得られる。大腿骨が1mm大きく移動すると1.4°の屈曲可動域が増加という報告。120°曲がるにはだいたい15mmくらい必要。まったく移動ない場合は95°~100°。

 

・大腿骨のRoll backとPivot pattern rotation。大腿骨内側顆と外側顆の移動量は異なる。外側顆は、屈曲につれて後ろに下がる、内側顆は移動量は少ない。膝曲がるにはMedial pivot movementも重要

 

・Roll backによる大腿骨の後方移動は非対称。大腿骨外側顆は内側顆に比べて脛骨外側顆後縁まで移動する。結果的に屈曲に伴い、大腿骨は脛骨に対して外旋する。(大腿骨に対する脛骨の内旋)

 

・人工関節も同じ様な構造にしている。曲がるときには内旋、伸ばすときは外旋しないといけない。SHMとは違うが、内外旋が複合するという考えで。屈伸+回旋が必要

 

・回旋の軸は常に変わっていく。脛骨外側、内側の引き出し方で軸は変わる。PS型は特にその傾向がある。脛骨内旋出すときは、内側・外側を同じようにする、内側を固定して外側だけ、内側を少し・外側を大きめに。の3パターンくらいやってみたり。

 

・腸脛靭帯の過緊張はMedial pivot movementを阻害する。腸脛靭帯が前後に動けるように。ストレッチというよりも。股関節外転位で緩んでくるので、徐々に中間位で。

 

・Four Bar Chain Mechanismと関節動揺。正常膝では靭帯による引っ張り方向の拘束形状と関節面による押しつけ方向の拘束形状とが絶妙に一致している。そのため動揺性は極めて小さく、かつ広い可動域が保証されている。

 

・大腿骨側と脛骨側のADL、PCL付着部間の距離によって関節運動の軌道が決まる。

 

・Four Bar Chain Mechanismの喪失による人工膝関節の動揺性。靭帯の走行が変形したり、関節面が変形性して、拘束形状のバランスが崩れると可動域制限が起きる。

→関節面は両側がしっかりコンタクトしていないと曲がらない。

 

・コンポーネントのアライメントと両側関節面がコンタクトする運動軌道の評価。曲がらないところで、関節面がぴったりくるところを探しつつ動かす。スクワットなどでも同じように。どういう内外反角度で曲がると離開しないで曲がるようになるか?その軌道を常に再現できるように練習。

 

・Flexion gapとExtension gap。脛骨、大腿骨カットして人工関節を入れていく。緩すぎてもきつ過ぎても×

 

・良好なSogt tissue balancing。90°屈曲位と完全伸展位においてFlexion gapとExtension gapがそれぞれ長方形になる。内外側の軟部組織、特にLCLとMCLが同じ長さで同じ緊張度を保つ。Flexion gapは少し緩めでまだ外側のtensionも少し緩めの方が望ましいという報告が少なくない。外側は緊張高めやすいので。

 

・膝が内反方向になりやすいので、外側の関節面が離開しないように内外側の均等に荷重かけられるような屈伸を誘導。

 

 

・関節接触面圧の違いと筋性防御。関節面を意識せずとりあえず曲げた時はハムストリングスと大腿直筋の緊張↑。内側・外側の関節面を一致させた状態で曲げるとほとんど筋活動なかったという報告。

 

・外側が緊張しやすいので、腸脛靭帯を緩めておく。腸脛靭帯とLCLは相補的に機能する。完全伸展では腸脛靭帯緩む、LCL緊張。膝20°屈曲すると腸脛靭帯の緊張高まり、LCLは緩む。この状態がつづくと腸脛靭帯の緊張高まり関節面が圧縮されていく。前後の可動性を確保

 

・膝関節の屈曲可動域と膝蓋骨の可動性。膝蓋上嚢が癒着するのはあまりないが(癒着すると屈曲20°限界レベル)、、、人工関節の人はあんまり固くならないかもしれない。固くなりやすいのは、膝蓋陥凹のひだ状の部分。手術で内側関節包の縫合により、ひだ状の部分がかたくなったり。内反傾向で外側が離開したり。

 

・パテラの軽いモビライゼーションだけでは足りない。内外側の関節包を圧迫しながらmobilization。術直後はもちろん避けて、癒合してからだが。

 

・膝が伸びるためにはScrew Home Movementが重要。膝は完全伸展位までの間で10~15°程度の外旋運動を伴う。膝の外旋=(大腿骨に対する脛骨の外旋、脛骨に対する大腿骨の内旋)

 

・膝関節回旋を阻害する因子。。内側膝蓋支帯、腸脛靭帯、半膜様筋、半腱様筋などたくさん。。。

 

・腹臥位で、膝伸展位での外旋可動性の改善。まずは完全伸展を作ることが必要。うつ伏せをとれるように。膝下に枕入れて屈曲30°くらいのところで。

 

・腸脛靭帯の付着部、大腿二頭筋の硬さなどみたり。→緩めつつ。腓腹筋の外側頭も硬いことも。

→回旋の可動性を確認

 

・背臥位で、脛骨固定して大腿骨を内旋するような動き。内側の関節包を動かしたり。たるむように。内側関節包を牽引しつつ脛骨を外反した位置にもっていって、膝伸展出したり。FTAはどうか

 

・腹臥位で腸脛靭帯の可動性を上げたり。

 

・屈曲位での内旋可動性の改善へ。腹臥位で屈曲位では内側関節包は硬い。内旋制限は強まってくる。腸脛靭帯などを緩めたり

 

・背臥位で屈曲可動範囲の改善。大腿・下腿同時に動かすのは難しいので、大腿固定して下腿だけ動かすようにしたり。

→屈曲位で軸をずらしつつ内外旋出したり、伸張ストレス与えてみて痛みがないところを認識してもらったり。内外側の関節面を一致させて、脛骨引き出しつつRoll back。脛骨内旋を誘導し、内側関節包に緩みをつけるように。曲げていく

 

・痛みは誘発させず、膝関節前面の伸張感程度に。

・腹臥位の方が操作しやすい。

 

 

 

・座位にて能動的膝伸展の練習。膝が内反していないか?外側の関節面が離開しないように誘導。

 

・ボールを前後にまっすぐ動かす練習。1つのシステムとして協調できる能力を獲得。内外側の関節面を一致するところで。慣れてきたらやや内外側に動かしたり回したり。関節面をキープさせつつ。足関節・股関節の動きも。ボールの大きさ変えたり。

 

・筋膜のずれで違和感を感じている。捻じれたところで長くいると、徐々に慣れてきてそれがニュートラルになってくる。それをまた改善しようとすると違和感を感じてくる。繰り返しで学習していく。

 

・ハムストリングスを使って膝を伸ばせるように。CKCにおけるハムストリングスの膝関節伸展作用。

 

・大内転筋とハムストリングスを使って後ろから引っ張り上げるイメージ。スクワット、ランジなどで

 

・荷重位での抗重力伸展。脛骨が床面から垂直で、FTAとレントゲンの再現性あるように。

 

・可動域上げても立位では膝が曲がってしまう。ハムストリングスを引っ張り上げるように坐骨結節を持ち上げていく。脛骨に対して大腿骨が少し内旋するように。このときお尻引けないように固定する。立った時にまた同じようにできるか確認。両足で出来るようになったら歩行へ。

 

・立った時に殿部の筋肉が使えるか。大腿骨が内旋してしまう。屈曲位から内旋すると膝蓋大腿関節の不適合性。立つときに内旋しないように。恥骨筋や薄筋が過緊張だったり。