〇歩行のバイオメカニクス

・    位置エネルギーと運動エネルギーを相互に変換しながら歩く→重力を利用した推進系を採用。単純力学モデル。

 

・重力を使うには重心を一度高い位置に持ち上げる必要がある。MStで体幹uprightにして直立した姿勢をとれるように。

 

・立脚初期で衝撃を吸収できるようにする。

 

・重心を前に落下させるとき、股関節が伸展するように(体軸を超えて)。ヒトしかできない

 

 

 

・歩行中、体重の1.2倍程度の荷重を1本の足で支えられないとうまく歩けない。

 

◇初期接地と剛性制御(踵接地の瞬間くらい)

・踵接地のときに下肢の剛性を高めて崩れないようにする必要がある。

 

・遊脚している足には力が入ってない。膝関節の安定化は靭帯機構にいよる受動的な固定性によって保障される。足関節の安定化は、距腿関節のはまり込みによって保護される。

 

・初期接地における下肢関節の安定化。関節をしまりの位置にする。筋肉を使用した剛性制御は難しい。

 

・アライメント制御が重要。足関節は底背屈0°でしまりの位置。底屈位だと緩いので捻りやすくなる。膝関節は伸展0°がしまりの位置。すべての靭帯の緊張が高まる。屈曲すると緩んでくる。

 

・股関節は緩みのポジションになっている。どう安定させるか?

 

 

・下腿内外旋位はどうか。大腿骨からみると下腿は10~20°外旋位して伸展している(SHM)。過外旋は膝伸展難しく屈曲してる人が多いので調整は必要。

 

・初期接地時、股関節は緩みの肢位で、荷重負荷を受けるが、臼蓋の最深部で荷重を受けるので、関節剛性が保障される。股関節40~60°くらいで接地。踵ついたときにはカップが骨頭を受けてくれる。

骨盤後傾で踵接地すると、骨頭が上に抜けやすくなり前方変位、股関節外旋方向に。

 

 

・正常な股関節では荷重時に骨頭を臼蓋に圧迫する分力が作用する。臼蓋の傾斜が急峻になるにしたがい、骨頭を外上方へ押し出す分力が作用する。

 

・AROによる安定化(水平0°骨頭は内側に入ってくる感じ)。理論的には16°傾くと圧縮応力だけになり剪断力がなくなる。50°傾斜すると、骨頭が上外側に滑っていく形になる。臼蓋形成不全の人がOAになる過程に。徐々に削れてきてしまう。

 

・臼蓋形成不全がなくても同じ様なことは起こり得る。骨盤が荷重時に遊脚側に16°以上傾斜するとAROも傾斜してきて、剪断力が上外側方向に向いて剛性制御が保てなくなってくる。骨盤がスウェイせず水平になるようアライメントもみていく。

 

・骨頭周囲の筋肉が大事。腸腰筋と閉鎖筋の同時収縮を促す。両方同時に収縮すると骨頭を臼蓋に引き寄せるトレーニングに。回転中心軸の形成へ。

 

・深層外旋六筋。すべて骨頭を内側(求心位)に引っ張っている。背臥位で大転子に触れ骨頭と骨頭を近づけるように動かすイメージ。大腿骨を内側に圧迫する感じ。お尻の穴をしめないで。閉鎖筋群の同時収縮を促す。

 

・腸腰筋トレーニング。大腿骨頭を抑えておきPSISとL1,2の棘突起に指を置いておく。そのまま股関節屈曲してもらう。大腿骨頭とPSISあたりに紐があるようなイメージで、短くするようにactive assistiveに動かしていく。

 

・SLR60°くらいで足底から大腿長軸に向かって荷重圧をかける感じ。足関節、股関節が安定しているかみる。押し込む感じ。股関節が動いてしまってたら、閉鎖筋群の促通、、など。

 

・初期接地は骨盤のアライメントが特に重要。側方制動に寄与する股関節外転筋の補充作用。股関節屈曲位のときは大殿筋の上部線維が主に制動。中間位のMStでは中殿筋、伸展TStでは小殿筋、さらに伸展した状態ではTFLが主に制動。ICでは大殿筋上部線維を働かせる。弱いとスウェイしてくる。

 

・大殿筋上部や小殿筋は特に高齢者で弱化しやすい。

 

・大殿筋上部のトレーニング。作用は伸展・外転・外旋。下部線維は伸展・内転・外旋作用。お尻固めてもらっても上部が緩い人が多い。腹臥位で膝屈曲させてやや外転、外旋させる感じ。等尺性収縮をいれたり。

 

 

・ICの剛性制御。膝は完全伸展に近いところでICへ。膝関節は9°屈曲すると荷重のみで安定化することができなくなる。直線配列に積み上げられたブロックは荷重によって安定する。1度ズレるだけで、崩れる方向に作用していく。大腿四頭筋を収縮しているわけではない。

 

・20°以上膝屈曲位となるとITBが緊張する。腸脛靭帯とLCLは相補的に機能する。LCLは膝伸展位で緊張、20°膝屈曲すると弛緩する。コントロールはほぼできない状態になってしまう。側方制動が難しくなる。

 

・Screw Home Movementと膝関節伸展可動域。しっかり作る必要がある。上からひたすら押しても意味がない。大腿骨の内側関節面と外側関節面の曲率半径の違いから、内側関節面の移動距離が外側関節面に比べて長いため、SHMが誘発されないと、膝関節は完全伸展できない。SHMは膝30°先の伸展域くらいから働く。それまではハムストリングスの硬さが影響しているか。股関節伸展、屈曲位での膝伸展に差がない場合はSHMの問題といえる。股関節伸展では膝伸びるが、屈曲位では膝が伸びない、などだったらハムの問題か。

 

・SHMができない理由。脛骨内側の引き込みを生じさせる筋。膝の屈曲・内旋筋(縫工筋、薄筋、半膜様筋、半腱様筋あたり)。内側ハムが硬いとそもそも膝伸展できなかったり。股関節角度を変えてみて膝伸展角度が変わるかどうかみて。

 

・縫工筋は股関節屈曲位だと膝伸展するが、伸展位だと伸びなくなる。など。

 

・薄筋なら、股関節外転位だと膝伸びにくくて、内転位にすると伸びやすくなる。

 

・内側ハムなら股関節伸展位なら膝伸びやすいが、屈曲位だと伸びにくくなる。といったみかた。

 

・SHMを阻害する因子で多いのが半膜様筋。一部は鵞足に付着。第2パートは膝窩筋の方に付着。第3パートは斜膝窩靭帯、関節包後壁へ。第3パートの部分を緩める必要がある。

 

・SHMでは第2,3パートが必要。荷重位で膝伸展するとき、脛骨に対して大腿骨が内旋する必要がある。ストッパーとして機能

 

・半膜様筋に対してリリース。腹臥位で膝窩から長軸方向に押し込む感じで、回旋中間位にして膝を伸展してみたり。

 

・背臥位で膝30°屈曲位くらいで、大腿部固定して、半膜様筋をもち長軸方向に引っ張って緩める。膝を伸ばしつつ、その後内側顆を押し込む感じ(親指で、大腿骨内旋誘導するように)。

 

・OKCだと大腿骨に対して脛骨が外旋、CKCだと脛骨に対して大腿骨が内旋する動き。両方を評価。

 

 

◇荷重応答期

・衝撃吸収のメカニズム。筋を遠心性に収縮させることが必要。足関節の衝撃吸収の場合、フットフラットで前脛骨筋が遠心性に収縮。関節運動は自分でつくらないようにする。

 

・足関節の場合は、回転軸より後ろの踵から地面につくことで、梃子の原理で足関節が前に倒れる形。

 

・膝関節の衝撃吸収。踵接地のときは膝伸展位で。そこから20°くらい屈曲するが、そのとき大腿四頭筋の遠心性収縮で衝撃吸収。踵の位置は膝関節より前にあるが、前脛骨筋が下腿を前に引っ張ってくれるので自動的に膝が曲がってくる。前脛骨筋が特に重要。腓骨神経麻痺の人などはドロップフットで膝過伸展傾向に(後方の組織に負担かかる)。

 

・踵で地面につけないとそもそも衝撃吸収できなくなる。そのために何が必要か?

 

・足関節背屈できるだけでは難しい。ICのとき膝が完全に伸びてないと、全足底接地になってしまう。膝OAの人など、足関節・膝関節の衝撃吸収が破綻。

 

 

・ICのとき大殿筋によって股関節の角度を固定している。大殿筋のトレーニングは関節の固定をメインに考える。ブリッジは、大殿筋を使って股関節伸展させる動きだが、、、動作ではあまり行わない動き。

 

・トレーニングとしては、10cmくらいの台の上に足(踵)を乗せて、膝を徐々に曲げていくような感じで。股関節の角度を変えずに膝・足関節の角度を変えていく。LRの練習。大腿四頭筋、前脛骨筋の遠心性収縮Ex

 

・徐々に台を低くしていって、今度はフォワードランジ、ステップへ。股関節伸展しないように

 

・遊脚での振り出しは二重振り子。CPGの切り替え。立脚後期で腸腰筋伸ばされて、反対側に荷重のると一気に短縮方向し振り出し。屈筋優位から伸筋優位になり殿筋が働きブレーキかかる。そのまま慣性で膝が伸びていく感じで。接地点を意識して踵から地面につくように

 

 

◇立脚中期  下肢の抗重力伸展活動

・荷重位における膝関節の伸展には足関節背屈と股関節伸展が組み合わさる。歩行時も。踵をできるだけ遠くに置くかたち。踵と坐骨結節の距離を遠くしたり縮めたり。イメージとしてはこっちの方がいい

 

・随意的な膝伸展運動は、足関節底屈、膝関節伸展、股関節屈曲が組み合わさる。ボール蹴ったり、MMTの膝伸展みたいな動き。こっちのイメージが強すぎるとバックニーになったり。

 

・大内転筋とハムストリングスが主動作筋。CKCにおける膝関節伸展。

 

・ハムストリングスが膝の屈曲筋になるのは非荷重位のみ。地面に固定されると、膝関節伸展方向に働く。

 

・内側ハムストリングスと大内転筋の活動はLRで乱れたアライメントをフィードバック情報なしに、立脚中期までに鉛直配列に回復させることを可能に。

 

→一歩足を前に出したところで、坐骨結節をもち、内側ハムストリングスと大内転筋を把持し、体重を乗せるときに両方を持ち上げる感じ。最初は両足でやっていく。坐骨結節を上に引っ張り上げるように。内側ハムと大内転筋を坐骨結節に近づけるように。

 

・立脚初期に衝撃吸収しつつ、重心を前進させる必要がある。立脚中期、下腿は常に前方へ回転し続けることが重要。

 

・踵が地面に着くと前脛骨筋が遠心性に引き延ばされ、フットフラットに。前脛骨筋は伸ばされて蓄えられたエネルギーを解放(ばね)することで、下腿の回転がおきて、下腿前傾で大腿四頭筋が引き伸ばされてエネルギー解放→棒高跳びみたいに、引っ張られたものが縮まるの連続。

 

・20cmくらいの台へのステップで、大腿四頭筋が引き伸ばされた状態から下に縮まるように誘導する動き。前に加速させる練習 

 

 

◇Hip Extension

・脳卒中患者の歩行能力を予測する指標。「患者の生活範囲は歩行速度(快適)によって影響を受ける歩行能力に最も影響する因子は歩行速度である」Perry

 

・0.8m/s以上は制限なく地域に外出可能。0.4~0.8m/sは長距離歩行が困難などの限られた範囲の外出が可能。0.4m/s以下は生活範囲が屋内にとどまる。という報告。歩行距離はあんまり関係ないか。

 

・同じ1km歩いても30分で行けるのか、1時間かけているのか。距離が伸びても実用的かどうか。いかに速く歩けるかも大切。歩行速度がパラメータとしてよくみられる。

 

・高齢者の日常生活自立度は、歩行速度が0.25m/sec以下になるとADL自立度は36%低下する。0.35~0.55m/secはADL自立度比率72.1%。Potter J M 

 

 

・歩行速度が上がらない原因として、麻痺側が立脚後期にうまく作動せず、体を前に押し出す加速ができない。麻痺側が立脚初期になったとき減速できない。それとも両方なのか、という問題がある。

 

 

・脳卒中片麻痺者では、麻痺側推進力が歩行速度と相関が高いという報告。重心の前後方向への加速度は床反力の前後成分によって決まる。Bowden

 

・麻痺側が立脚後期に加速できるか、できないかが重要

 

・脳卒中患者の足関節底屈モーメントと、立脚後期にの下肢の位置が歩行の推進力と正の相関関係にあり、推進力に対する足関節底屈筋の寄与は、立脚後期の下肢の位置に依存する。Peterson CL

 

・脳卒中患者の歩行速度の増加は、第五中足骨頭と大転子へベクトルと垂直軸のなす角度(TLA Trailing limb angle)の増加と関連する。Tyrell CM

 

・歩行速度を向上させたいときは、TLAを増加させることが効率的とされる。

 

・TLA7度、足関節底屈筋が80Nmとすると、推進力は68N 。推進力を100Nにしたい場合、底屈筋の力を116Nmに増やす必要がある。ペットボトル12本くらいの重さ分の力になってしまう。現実的ではない。TLAを10°に増やすと、底屈筋を2Nm増やすだけで100Nの推進力を得られる。

 

 

 

・股関節伸展可動域が大事。立脚後期では股関節屈筋の完全な遠心性コントロールが重要。頚部骨折の人などは難しかったり。

 

・腸腰筋が弱いまま股関節伸展したら崩れてしまう。腸腰筋の遠心性収縮が必要。骨盤は前傾していることが必要。

 

・高齢者の立脚後期を作れない要因として、骨盤後傾してしまっていることがある。

 

・股関節伸展するときには足関節背屈してないとならない。Hip ankle trade-off。歩行立脚では股関節の運動と足関節の運動は相反性に動く。ヒラメ筋の遠心性収縮はどうか?足関節可背屈制限の影響は大きい。

 

・ステップ長の制御には股関節の伸展とForefoot Rockerが必要不可欠。腓腹筋の強い力で足関節を十分に底屈しないと股関節伸展できない。

 

・骨盤の高さは徐々に下がるので、そのままだと反対側の足が地面について動きが止まってしまう。立脚後期の後半から底屈筋の収縮でMP関節を中心とした円軌道をつくり、滞空時間を稼げる。→股関節伸展できるように

 

・けり出し時の底屈筋は時速4kmくらいだと80Nmくらいの力を使っている。膝はLRで軽度屈曲するときがピーク30Nmくらい。股関節伸展筋は立脚初期で40Nmくらい。

 

・足関節底屈筋は大きな力が必要。片足立ちで底屈が20回くらいできるレベルが必要だったり。

 

・遊脚期は立脚期でつかったバネの力が解放されている時期といえる。

 

・遊脚のメカニズム。遊脚初期に大腿が股関節の屈曲筋によって前方に振り出されると、下腿には慣性力が働き、膝関節が受動的に屈曲する。遊脚は慣性の作用のみによってもたらされる。片足支持期は、次の遊脚のためのエネルギーの発生と蓄積に重要。強くて長い立脚期は、よりよい遊脚につながる。

 

・片麻痺者の遊脚だと随意的に持ち上げる感じになっている。立脚後期をしっかり作ることが大事。

 

・足関節背屈、股関節伸展、骨盤前傾をキープ、腸腰筋・ヒラメ筋の遠心性収縮、股関節伸展しながら足関節を強い力で底屈できるのが必要。

 

・片麻痺患者の遊脚。。脳が準備したリズム通りにはなかなか動けない。

 

・歩行を制御する感覚―運動協調。除荷則、股関節伸展則   末梢からの入力

 

・立脚相から遊脚相への遷移には、2種類の感覚情報が重要な役割を持つ。一つは、足にかかる荷重が小さくなり、足関節底屈筋の寄与が減少すること(除荷則)であり、もう一つは、股関節が十分に伸展すること(股関節伸展則)である。 Duysens

 

・除荷則と股関節伸展則は、除荷則の方が外乱や環境変化に対してより頑健な歩行生成に寄与する。Ekeberg

 

・ヒラメ筋は荷重に釣り合って働いている。力が抜けると荷重しなくていいタイミングと判断できる。他の筋肉も一斉に力抜けて遊脚の準備ができる。重心がつま先をこえて前にきたときに、抜けていく。

→腸腰筋が伸ばされたところから縮まる

 

・片麻痺の人は、重心の位置が常につま先より後ろにあるので、ヒラメ筋は緩まず遊脚になっても力が抜けない状態。

 

・つま先立ちのトレーニング。ヒラメ筋を遠心性に緩めるトレーニングにもなる。BOSの変化がある。つま先立ちするとBOSがMPエリアに限定される。

 

・Standing calf raise。重心の位置を新しいBOSに動かしてから、踵を持ち上げるかたち。APAでつま先立ちの前に重心を前方に移動させている。そのときヒラメ筋の緊張を一度抜いている。重心がMP関節上にきたら踵をあげていく

 

・重心移動しないと後方へ倒れる。うまくできないと体幹を前傾させて代償させたりする。

 

・壁の前に手をついてもらい足関節背屈させながら。体幹は屈曲させない。屈曲すると足関節は底屈してしまう。股関節伸展と足関節背屈のトレードオフ。屈曲しないよう肋骨をアシスト(後方回旋)して。

手を壁について、背伸び・上に持ち上げて、地面について後ろに戻る。体幹前傾しないように注意。

踵を下ろすときにヒラメ筋の遠心性収縮が働く。体幹は常に伸展させた状態で。

 

・ステップ台のぼり。立脚後期の下肢の機能は、ステップ台に登る際の後ろ脚の機能と同じ。片麻痺の人はこっちからやってもいい。

BOSが出来上がっている中で、重心移動ができるので歩行よりも制御が楽。前脚と後ろ脚がCKCになるので麻痺側の足関節底屈筋群を緩めやすい。

伸展キープして前に行って、プッシュoffして戻る。足は戻さなくていい。骨盤は後傾しないよう坐骨結節を持ち上げて。体幹保持難しい人は多裂筋をアシストしたり。そのまま段差に登ったり。後ろ脚は立脚終期の動きと同じ。