〇起立動作のバイオメカニクス

・支持基底面の変化に対応した重心制御。スクワットは支持基底面に変化はない。

 

・起立は殿部~つま先のBOSから足部のみのBOSへと狭くなるのが特徴。

 

・殿部を浮き上がらせる前に足部への重心移動が必要。スクワット動作ができても、起立ができるようになるとは限らない。

 

①脊柱のVertical Extension、②前方への加速、対側性運動リズム、③Power Transfer殿部離床、④下肢と体幹のVertical Extension、Ankle strategy。抗重力伸展活動

 

・ほとんどの人が殿部離床までのところで失敗することが多い。後ろに引っくりかえったり。前方移動課題が難しい。筋力が弱い人はそもそも離殿ができない。

 

 

・Stabilization strategy 重心を支持基底面に入れてから立ち上がる方略。体幹を大きく傾けるかたち

→時間がかかる。動作中はずっと筋を収縮させることになるので疲れてしまう。体幹を起こすために股関節伸展筋を強く使う必要がある。随意的な動作となる、フィードバック制御となる。大変だけど安心のため高齢者などは選択する戦略。

 

 

・Momentum strategy 運動量、勢いをつけて立ち上がる方略。重心の位置がBOS内に入っていない。傾きは少ない。自動制御に近いかたち、フィードフォワード制御なので難しい。重心がうまく足部のBOS内に入る具合の加速を予測しつつ行うので、うまくできないと転倒リスクは高まる。そのため高齢者など怖くて選択できない。時間は短くすむが、筋が瞬間的に働き、切り替える必要がある。

 

・立ち上がりを歩行につなげるにはMomentum strategyができるようにしたい。歩行もフィードフォワード制御。予測されるBOSに向けて重心を押し出すかたち。これができないと歩行は難しく感じる。

 

 

・重心を前方へ移動させる課題が必要。

 

・もう一つは重心を上方へ移動させる課題が必要。重心を移動させるためには、身体の外側から作用する外力が必要。

 

・重力は常に一定なので、床反力の大きさを変えて力のつり合いを崩して重心を上下動させる。

 

・重力=床反力であれば、静止する。重力>床反力でしゃがみ込み(床を押す力を弱める)。重力<床反力で重心を上に移動できる(下肢伸筋を使って床を大きく踏み込むように)。

 

 

・殿部離床直前(お尻が座面から離れる瞬間)までに抗重力伸展活動はピークに。体重の1.2~1.3倍くらいはかかる。下肢全体で一気に伸ばす力。座っている状態でも体重と同じくらいの力で床を押している必要がある(頭部が足部のBOS内にいくくらい)。

・殿部離床後は床を押す力を弱めて、体重以下の床反力に。一度上向きに加速したものをブレーキをかける感じ。重力でブレーキするために床を押す力を弱める。その後静止立位に。

 

・床を押す力は何か。股関節伸展筋力が重要。大腿四頭筋は床を斜め方向に押す形になってしまう。真下に押すには股関節伸展筋。

 

・重心を前方移動するには体を傾ける(股関節屈曲)が必要。

 

→お辞儀をしてください。。。動作指導としてはNGワード。股関節伸筋の力が抜けてしまう。そうすると床を押す力がなく立てなくなる。

 

・Hip Lnmber Rhythm 前方へのリーチと相反性腰椎―骨盤運動リズム。

 

・同側性運動リズム。頭部の位置が空間上位で移動する。骨盤前傾、腰椎屈曲。おじぎ、物を拾う。体幹の伸筋はほとんど活動しない。ただ倒れるかたちに。下肢に力が入ってこない。

 

・対側性運動リズム。頭部の位置が空間上位で固定される。骨盤前傾、腰椎伸展。股関節屈曲するときに腰椎伸展するかたち。体幹の抗重力伸展が高まる。同時に下肢も高まる。前方へのリーチ動作

 

 

・前方へのリーチは、股関節屈曲するために腰椎伸展が必要。脊柱をVertical Extensionするには、腰椎・骨盤・股関節の相反性運動リズムが必要。座位で手をリーチングする動作によって誘発。

 

・動作誘導も前方リーチ(頭部が足部のBOSにいくまで)させて、股関節屈曲・腰椎伸展得られていれば、あとは少し引っ張るだけで立てる。

 

 

①脊柱のVertical Extension(後ろにのけぞるのでなく、上に向かって伸びあがるような動き)

・後ろにのけぞるのは同側性運動リズム、上に伸びあがるのは対側性運動リズム。

 

・安静座位は骨盤後傾して腰椎屈曲ぎみ。体幹の閉鎖性運動連鎖(対側性腰椎骨盤運動リズム)による骨盤前傾(股関節屈曲)と腰椎伸展が起きて、体軸が抗重力方向に伸展して抗重力伸展活動のための構えが作られる。

 

・起立の構えを作ることが大事。骨盤やや前傾、腰椎やや伸展、Th9,6?が上に伸び上がるような伸展。

 

・主動作筋 多裂筋と腸腰筋の同時収縮で骨盤前傾。どちらも対称的に脊柱を前後に引っ張っているかたち。左右4方向にコアマッスルとして支持している。

 

・腸腰筋が骨盤を前傾させると同時に多裂筋が収縮して腰椎を伸展させて機能的な腰椎の前弯位を保持。L5についている腸腰筋から始動し、多裂筋、L4,3と下から順番に動きを作ってくる。お辞儀をすると全体的に屈曲メインになり多裂筋が働かなくなる。

 

・腸腰筋は腰椎のアライメントによって、腰椎への作用が逆転する。腰椎が屈曲位では筋の作用線が回転軸の前方を通過するため腰椎を屈曲させる作用を持つ。腸腰筋が骨盤を前傾させる際には多裂筋が腰椎を伸展位に保っていないとVertical Extensionがcontrolできない。

 

・腹横筋。胸腰筋膜を介した下部体幹の安定化。白線~体の後ろに回り込んで胸腰筋膜に。Y字型に付着。腹横筋が収縮すると腰椎を伸展させる。ただし力としてはそんなにない。

 

・水力学的増幅メカニズム。横突起にも胸腰筋膜は付着。腹横筋が収縮すると、横に引っ張るかたち。椎体が両側から固定されて安定性(軸)をつくる。腹横筋がゆるいと椎体が前後に緩くなってしまう、その状態で多裂筋や腸腰筋が働くとズレたり滑る形に。軸を作って初めて、多裂筋がしっかり働く。腹横筋と多裂筋の共同収縮が必要。高齢者は多裂筋が萎縮していることが多い。

 

・多裂筋が萎縮すると棘突起が突き出ているような感じになる。対側運動リズムが作り出せず、腰椎の安定性も低下して、体が潰れる形になっていく。

 

・胸椎のVertical Extensionについて。Th9を中心として、そこから上の椎体が反時計回りに回転。下位胸椎は時計回りに回転。脊柱のS字カーブが長軸に伸びる動き。上下で逆方向の動きが必要。

 

 

 

 

・対側性運動リズムの主動作筋は、胸棘筋。腸肋筋メインだと後ろにのけぞる形になってしまう(同側性)。

 

・胸棘筋。Th8→10、Th7→11、Th5→L1、Th3→L3・・・・棘突起と棘突起を結ぶ筋。脊柱起立筋の中で最も内側に位置。Th10 ~12からTh2~8に停止。通常Th9には付着しない。上に向かって伸び上がるような動き。筋力自体は小さいの

 

・僧帽筋下部線維がメインの主動作筋。リバースアクション。Th9~下の椎体に付着。肩甲骨が固定された状況下で収縮するとリバースアクションで胸椎伸展する。

 

・L1~3は多裂筋が伸展、そこから上は僧帽筋下部、そこに胸棘筋の働きでupright(他に腹横筋、腸腰筋)。胸腰椎伸展、股関節屈曲の可動域制限も確認。可動域制限がなければ筋力の問題か。UprightとVertical Extension、抗重力伸展活動はほぼ同義で。

 

 

②前方への加速 対側性運動リズム

・Momentum strategyを用いた起立動作を可能にするには。。骨盤をタイヤ(股関節の車軸まわりを)のように一気に回転させる。このとき腰椎伸展しているようにすれば水平に前方重心移動する。

 

・椅子に座って勢いよく立つと、椅子が後ろに飛んでいく。椅子がしっかり固定されていると、お尻で椅子を押す力が前方に向く。

 

・お辞儀をしてください→体幹の前方傾斜が上部体幹から脊柱の屈曲(胸椎屈曲→腰椎屈曲→骨盤後傾)を伴って起きると、脊柱屈曲に伴って骨盤は後傾してしまうため(むしろ重心が後ろにいって体がつぶれるだけ)、身体重心を前方へ移動できなくなる。体幹前傾はあくまでも股関節のみが屈曲して、骨盤が前傾することによって生じる。

→どんなに前にお辞儀しても殿部離床できない。

 

 

・リーチと体幹の抗重力伸展活動。リーチでは胸椎屈曲しないように。胸骨柄がターゲットに対して、直進するように体幹運動が制御される。体幹の対側性運動リズムが必要。脊柱と下肢は動作中に抗重力伸展を高め、体重移動を可能にする。

 

・骨盤をタイヤのように一気に回転するために。坐骨結節を中心とした骨盤回転(股関節の位置が前に押し出されていく、膝の位置が前に出てくる、下腿は前傾しないといけない、足関節背屈が必要)

→股関節が軸となった骨盤前傾に切り替え。

 

・足関節背屈制限があると下腿前傾できず、膝が前に出ない→骨盤前傾できなくなる(片麻痺の人など)

 

・骨盤前傾できない理由は?座位で骨盤前傾できるか→高座位で足浮かせて骨盤前傾できるなら足関節の問題。体幹に問題がある場合は、足を浮かせても前に行けない。

 

・腸骨稜が股関節の真上くらいになると回転軸は股関節に。股関節を中心に骨盤が前傾する。坐骨結節は後ろに下がる。そのとき座面を押すようなかたちに

 

・大殿筋上部線維による骨盤前傾。股関節屈曲位では股関節内旋作用を有する。大腿骨の前捻角。坐骨結節中心に回転→股関節中心に切り替わるとき、股関節軽度内旋すると骨頭の位置が下に沈んで骨盤が前傾できるように。大腿骨内旋によって骨頭の位置が下がり臼蓋が骨頭上を回転しやすくなる。

 

・恥骨筋を使って内旋すると内股みたいになって逆に立てない。

 

大殿筋上部は、股関節が伸展位では股関節外旋作用を有するが、股関節が70°以上屈曲位に置かれると、筋の走行が変化するため股関節内旋作用を有するようになる。

 

・大殿筋上部が萎縮している大腿骨骨折の人などは、坐骨結節を中心に前傾するようになってしまう。前にずっこけてしまう形に。

 

・股関節のインナーマッスル。内・外閉鎖筋、上・下双子筋、大腿方形筋は、大腿骨頭を臼蓋に引き付ける作用を有しており、股関節の安定化に重要な役割を持つ筋群といえる。梨状筋は逆に外旋させていくので別。

 

・腸腰筋と内閉鎖筋は、大腿骨頭を臼蓋に縛り付けるように螺旋的に拮抗する方向に走行し、股関節の安定化に寄与する筋群で最も主動的な安定化筋としての役割を担う。縛り付けてぐっと回転(股関節を中心に)回転させるイメージ。

 

・大腿骨頚部骨折だと筋肉が切られてしまい、機能低下していくため難しくなっていく。内外閉鎖筋が残っているかどうか。健側でカバーできるか。

 

 

③殿部離床 Power Transfer

・前脛骨筋の役割が重要。殿部離床直後、重心はまだ足部のBOSにいってない状態で後ろに倒れる方向へモーメント。後ろ向きへの回転力が強すぎるとひっくり返る。床反力作用点の位置と重心の位置の距離が離れると後方への回転力が強まる。床反力作用点の位置を踵の方に、後方にしておきたい。前脛骨筋が強く作用すれば後方に行くが、下腿三頭筋が優位になると前方へいってしまう。

 

・立ち上がるときに足を後ろに引く。つま先で踏んでしまうと床反力作用点が前方に行ってしまうので、踵でしっかり踏めるようにTAを収縮。

 

・大腿四頭筋も収縮するが、、、強く収縮すると大腿・下腿部が同時に回転して後ろに飛んでいく感じになる。そのとき下腿が前脛骨筋の働きでしっかり固定されていれば、問題ない。縁の下の力持ち的な

 

・身体重心を前方へ移動させながら膝関節を伸展させるためには、脛骨を固定して、大腿骨がだけが回転する必要がある。慣性によって膝を回転、重心は前に。下腿の前傾角度が70°くらいあれば。

 

・膝が伸展するタイミングと股関節の動きが止まるタイミングは一致していく。

 

・膝を伸ばして立ち上がろうとするのでなく、前に向かって加速したものを、ブレーキして慣性を利用

 

 

・ヒト化プロセス。下肢の抗重力伸展とは、踵接地(足関節背屈)→膝関節伸展→股関節伸展。四つ足動物からヒトへ。元々前足はまっすぐ、後ろ脚は駆動に適するように曲がってつま先立ちな状態。サルはオーバーヘッドリーチで上肢を解放、空間に向かってリーチできるよう前足荷重から後ろ脚荷重メインに。踵が地面につくようになり背屈してくる。徐々に足部でBOSをつくるように。そこからヒトは直立していく。坐骨結節と踵の距離が延伸する過程。

 

・足関節を背屈した状態で膝・股関節を伸展させていく。

 

 

・CKCにおけるハムストリングスの膝関節伸展作用。股関節伸展・膝屈曲作用だが、荷重位では強力な伸筋となる。

 

・殿部離床したあとは、ハムストリングスを使用して股関節・膝関節を伸展させていく。大殿筋と大腿四頭筋で行うと制御が難しい。

 

・ハムストリングスが強く収縮するためには骨盤が後傾しないように、多裂筋が働いている必要がある。働いていないと後ろにのけぞる形になる。体幹の抗重力伸展が高まっていることが前提

 

 

 

◇着座動作のバイオメカニクス

・起立より着座ができない人が多い。勢いついてドスンと座ってしまう。

 

・着座はStabilization strategyのみで実施。身体重心の降下と前後方向の変位を協調的に制御しなくてはならない。殿部を座面につけるくらいで重心を後方へ移動する感じ。殿部が座面につくまでは重心が足部のBOS内にある状態で。

 

・最初に膝を曲げるのが難しいところ。足関節底屈筋が働いて立位保持。立方骨のあたりに床反力作用点がくる。膝を曲げるには床反力作用点が膝よりも後ろにいくように。足関節底屈筋の張力を減少させる。ヒラメ筋を緩めて下腿を少し前に傾ける。膝が少し前に出るような。

 

・床反力が膝関節の前方を通過すると、膝関節は過伸展する方向に外力を受けるため屈曲することができない。そのため、動作開始に先立って、膝関節前方を通過している床反力作用線を膝関節の後方に移動させる必要がある。

 

・体を先に前に傾けると床反力作用点はより前方にいってしまうため、膝曲げられなくなり、足関節を底屈させて後ろに引っくりかえる形に。

 

・正常な着座では足関節の背屈に連動して骨盤前傾が起きる。落下着座では足関節背屈と骨盤前傾が連動しない。

 

・体幹内部に強い伸展活動がつくられることで、下肢にも抗重力伸展筋の活動が波及する。股関節と腰椎の間で相反方向性運動リズムが作られることで、殿部が座面に接地するまで下肢の抗重力活動を高め続けることが可能になる。

 

・椅子に座る直前が最も大きな力が必要になる。最初に体幹の対側性運動リズムをつくる。→骨盤前傾と足関節背屈を連動。→股関節屈曲するほど下肢の抗重力伸展活動高まる。