〇キャスパー・アプローチについて

・何に対して恐怖を持ち、どこに緊張が生じるのか。安定・安心・安全。重力から引き起こされる物体的な不安定を物体的に安定変える。

 

・新生児から。お腹の中から出ると重力と呼吸に変化。呼吸を確保するために体を捩じったり反ったり安定した環境を求めて色々動いていく。

 

・物体的不安定→機能的安定で、リラックスして呼吸しやすくなる。安全、安心なところから動きをつくる。重力によってズレたり不安定になってくる。後方をしっかり支える形がよさそう

 

・元々持っている体型に合わせて、リラックスする位置を探す。

 

・フルオーダーの車椅子はハードルが高すぎる。既製品で調整できるように。胸郭を乗せる、骨盤を乗せる。円背の人が平らなところで横になるのは難しい。

 

 

◇基本的な考え方

・①骨盤、②腰椎、③胸郭下部、④肩甲骨、⑤頚部、⑥頭部の位置関係

 

・立つように座るのは不自然で無理が生じている。座ると骨盤は倒れていく。立位では筋の張力が影響して自然と骨盤安定。腸腰筋と殿筋群。股関節屈曲すると骨盤は倒れようとする。殿筋群伸長し、腸腰筋はゆるむ。骨盤倒れて腰椎後弯していく。構造的な問題。

 

・座位姿勢での骨盤前後傾の個人差。角度によって乗せる面積や位置が違う。坐骨が乗る位置は骨盤に対して90°の座面。大腿骨と坐骨が乗る部分

 

・骨盤を無理に起こすのでなく、倒れすぎない角度で背もたれに乗せる。

 

・6つの不安定要素

①姿勢によって体が重力によって引き延ばされる。そのままの身体的ラインに合わせて調整。

②つぶれる。頭部や胸郭がつぶれるような。骨盤倒れすぎ顎が出たり。

③倒れるは円運動。骨盤が倒れて、側方へ

④滑る。お尻が前に滑り出す。これを止めるのでなく、原因を探す。

⑤転がる。

⑥捻じれる。頭部や胸郭が頚椎や腰椎でねじれてしまう。骨盤と胸郭が当たって捻じれたり骨盤を中に入れたり、前に捻じって逃がしたり。

 

・5つのパーツに分けて考える。①頭部(ボール)②頚椎(フレキシブルジョイント)③胸郭(かご)④腰椎(ジョイント)⑤骨盤(板)

 

・座位での支持基底面があってもハムストリングスのコントロールされた収縮がないと活用は難しい。大腿部を支持基底面として活用することは難しい。

 

・後方へ支持基底面を広げていく。第1の土台:坐骨部と骨盤背面。坐骨に載っても前滑りしないように。体重の7割が骨盤倒れる方へ乗ってくる。後ろに空間が空いていたら問題。坐骨が乗る部分が骨盤の角度に対して90°。大腿と坐骨部を分けてみる。

 

・第2の土台:腰椎から胸郭下部(丸さのトップより下)。頭部、頚椎、胸郭上部の骨格軸ができ、重たい頭部がのっかる。胸郭上部、肩甲帯が垂直近くになってないと安定しない。

 

・第1と第2の土台の位置関係。第1の土台が起きすぎても倒れすぎてもそれより上部は不安定。連動された不安定。ちょうどいい位置は、頚部が重力に対して骨格軸を形成した状態。背もたれにゆだねてリラックスできる位置。反応が出ないような位置。

 

・第2の土台の位置は個々の体の形状(プロポーション)によって決まる。緩んだ状態で出るように。第3の土台。S字側弯の人など。

 

・頚椎の軸を確保する。機能的中間位は、頭部が少し前倒れになる位置。物理的中間位の少し後方にヘッドレストをおく。頭部が前後左右にバランスとれた位置。

 

・枕の位置は頚椎から後頭隆起のトップより下において、載せるような形に。

 

・筋肉がうまく使えない。重力、痛みや不快感、精神面。股関節脱臼等による痛さ、内疾患による痛さ、誤嚥、呼吸不全などなどによる過緊張など。恐怖、防御的、感情の影響。重力のみに対するアプローチ。重力→不安定→緊張、痛みサイクル。

 

 

〇姿勢代償法 リクライニング位

・食塊の送り込み改善、誤嚥防止、胃食道逆流の防止

 

・送り込みが悪く、残渣がある、誤嚥が重度(嚥下反射の遅延、タイミングのズレ)、胃食道逆流な人が対象。不適切なリクライニング位は逆効果

 

・気管と食道の位置関係。気管は食道の前にある。歯がないと下あごが前にせり出しやすく、咽頭が広がりやすくなったり。

 

・リクライニング位だと誤嚥は起こしにくいが、飲み込みやすいわけではない。座位ができるとか歩けるからリクライニング位じゃなくていい、というわけではない。

 

・注意点。舌根沈下のある人はリクライニング位で呼吸状態が悪くなる可能性がある。エアマットや柔らかいマットの使用により頭部が沈み頭頚部伸展位になる恐れがある。

 

・医療職間で目的意識がズレることがある。

 

・正しいリクライニング位でなければ、姿勢代償法としてのリクライニング位は効果がないばかりかマイナスにもなりえる。

 

◇リクライニング位

・左右対称姿勢、頭頚部前屈位(顎―胸骨 4横指分)、肩甲骨を支える(左右対称)、脊柱はまっすぐに(呼吸を妨げない)、前腕と床と平行に支える。浮く大腿を支える。腕の重みをとる。

 

・ベッド上では、背上げ軸と股関節を合わせてギャッチアップする。枕の位置を固定して、合わせることを意識できるようにしたり。大腿部は浮いてくるのでクッション、タオル入れたりする。大腿とタオルの間に手を入れて大腿部の重みを手がしっかり感じる程度が目安。

 

・肩甲骨面は水平面に対し30°~程度傾いている。

 

・肩甲骨は上肢の重みにより床方向に落ちようとする。この下方向への力が嚥下を行いにくくする。肩甲骨の位置を変えるのでなく、肩甲骨が落ちてこないようにする。

 

・無理にねじ込んだタオルは体幹、肩甲帯、骨盤帯の捻じれを招き、嚥下を難しくする。

 

 

・マットが柔らかい、頭頚部が硬い場合。首の下を押しすぎると頚部が伸展してしまう。乳様突起から外後頭隆起のラインを押すイメージで。十分な屈曲位がとれない場合、マットとフレームの間にタオルを入れたり。

・頚部の下に入れ過ぎると逆に伸展を促しやすい。

 

・良いリクライニング位は股関節が「くの字」に屈曲。悪いポジショニングは股関節~体幹が弧を描く(脊柱の屈曲が大きい)。

 

・悪いリクライニング位は呼吸状態を悪化させるとともに腹圧を上昇させる。

 

・手順は、

①対象者の位置合わせ ②足上げを先に行う(同時でもいい) ③浮いてくる大腿部の下にタオル等でかさ上げ、④目的の高さまで頭部を挙上、⑤背抜き・足抜き、⑥上肢の支持(肩甲骨・前腕)、⑦頭頚部軽度前屈位の調整(へそを覗き込むように頭部を挙上し、顎から胸骨まで4横指分程度)

 

 

・車椅子でも同じ方法。リクライニングとティルト両方ある方が望ましい。足上げに相当するのがティルト機能。ティルトがないものは足元にずり落ちやすい。殿部に滑り止めシートを敷いてずり落ちを防止すると、それが原因で褥瘡になることがある。ズレ力を無理矢理止めるのでなく、となくしていく方向で。

 

 

・リクライニング位での食事介助指導。大きな開口は顎関節だけでなく、環椎後頭関節による頭部伸展が起こる。リクライニング位はでは頭部が後ろから抑えられるため、頭部の運動は困難。リクライニング位で対象者は小さい開口しかできない。スプーンは介助用の浅いスプーンを使用し、一口量を多くしないように介助者へ指導。

 

 

・口腔内での食塊位置。口唇で捕食した場合の食塊位置→舌に乗せ直すプロセスでゼリーがばらける。口唇で取り込んだ食塊は口腔底(舌の裏)あたりに落ちる。その後臼歯や舌の方へ食塊を移動する。重度嚥下障害者ではその過程でゼリーがばらけて処理できないことがある。

 

 

・通常は補食時に口唇閉鎖を促すことが重要。重度嚥下障害でゼリーの口腔内処理ができない場合、舌上にゼリーを直接置く(中央あたりに)。これにより対象者はゼリーを咽頭に送るだけでいい。リクライニング位と組み合わせれば弱い力でゼリーがばらけずに送りこめる。Kスプーンの使用、2本のスプーンを使用など。

 

 

 

◇完全側臥位での食事

・声門や喉頭蓋閉鎖不全、嚥下反射の遅延や嚥下力の低下などによる誤嚥に広く対応。重度嚥下障害者の誤嚥を少なくできる、全身の筋緊張を落としやすいという利点がある。

 

・完全側臥位は、どちらかというと支えなくなると腹臥位になるような状態。側臥位には、嚥下機能が正常な側(下側)の咽頭からの嚥下が可能で、かつ気管に食物が流れ込みにくいという利点がある。

 

・完全側臥位でないと筋緊張が高くなり、頭頚部伸展や姿勢崩れを招く。食事介助はしづらい。口唇閉鎖をしない摂取パターンになりやすい。食事の最後には水やとろみ水でのフィニッシュ嚥下を必ず行わなければならない(2~3口くらいで)。家族や介助者に理解されにくいという注意点があり。

 

・手を離すと背臥位になるようでは不十分。骨盤回旋、肩甲帯の回旋を防止。抱き枕やクッションで対応。上の足は下の足を超えること。肩甲帯と骨盤帯は同一平面上に。

 

 

◇円背患者の食事姿勢について

・強い円背では顎下スペースがないため十分な喉頭挙上が行えない。顔が下を向くため、食塊や唾液は山を登るように咽頭に移送されなければならない。

→送り込みが行えず、残渣や流涎が増え、嚥下も十分できないため誤嚥が増える。

 

・体幹を起こさずに顔だけ前を向けると顎が上がって、顎下のスペースが広がり誤嚥が増える。顔は前に向け、顎が上がらない両方を満たす姿勢をとる。

 

・背もたれを十分活用することが鍵。お尻を引きすぎない、背もたれに寄りかかれるようにする。背中を包み込むように柔らかめクッションを入れて姿勢を安定させる。

 

・円背が強すぎるときは、リクライニング車椅子を使用。舌尖と奥舌が平行、もしくは奥舌が少し下がるようにするのがポイント。耳と鼻のラインがまっすぐ目安。食事の問題があるときは、普段使用しなくても食事の時だけリクライニング使用もあり。ティルト、バックサポートの張り調整も検討。

 

・体が入るテーブルは有効(カットテーブル)。体の横で肘をテーブルにつくことができれば、姿勢は安定しやすい。肘を前につこうとするとかえって円背が助長される(長方形のテーブルは×)。カットアウトテーブルが有効。

 

 

・座位での食事でリスクが高い場合は、姿勢代償法が有効な場合がある。リクライニング位を正しく撮ることが大切。呼吸のしにくさや嚥下状態がかえって悪くなることもあるため注意。ベッドの背上げ軸を合わせてからのベッドアップを確認。リクライニング位では誤嚥が減るが、飲み込みやすいわけではない。

 

 

 

〇ノーリフティングケアについて

・重度化を予防するために、力任せしない、抱え上げない、安楽に寝る・座る、苦痛や不安を与えない、福祉用具の適切な使用。寝るポジショニング、シーティング、ノーリフティング、良い姿勢で歩く

 

・24時間のコーディネート。寝ている姿勢からみていく。移乗の方法で緊張高めている可能性も。リハの効果は一時的にすぎない。ベースを整えていくことが必要。

 

・座位での移乗方法、リフトの使用を検討。リハ的効果は。。①苦痛や不安の軽減、②拘縮・筋緊張の緩和、③座位姿勢の改善、④コミュニケーションをとりながらの移乗が可能、⑤スキル・経験に関係なく一定の移乗が可能、⑥介助者の負担軽減

 

・在宅では家族でも可能な方法を。支援者がいない時間のコーディネート。施設はケアスタッフが主役。病院は次の生活へつなぐ。

 

・生活を組み立てるポイント。動く、活動、寝る、座る、移乗、離床。筋緊張、関節可動域、座位姿勢、摂食嚥下や呼吸、排泄、離床機会と社会参加を目指す。