~大腿骨転子部骨折の評価、運動療法~

 

・脱臼を考慮する必要はないが・・・生命予後を悪化させる因子は、、高齢。術前の移動能力が低い、寝たきりになったなど。基本動作、歩行可能であれば死亡率は低く

 

・75歳以上で多いとされる。認知機能、意欲、筋力低下など。

 

・安定した歩行のためには骨癒合を促したい。骨梁とcalcar femoralの荷重かかる部分の回復がどうなるか。

 

・骨癒合を妨げない。筋力が弱くても、動きやすい股関節を提供する。可能な限り転位を防ぐ。

 

・できるだけ痛くなく、自動運動と他動運動を行う。→骨形態と軟部組織と治癒過程がどうか知る。

 

・拘縮には起こる順番があり、その逆から考える。

 

・組織修復に伴う拘縮と組織間の滑走障害による拘縮。皮膚の方から徐々に深い部分へ治療していく。

 

・Fasiaの病態。組織修復に伴う拘縮(大腿直筋や中間広筋)。組織間の滑走障害とは?

 

・Fasiaとは、線維性結合組織の総称。Fasia systemとは、身体に浸透している軟らかくコラーゲンを含む疎で密な線維性結合組織の3次元的連続体である。脂肪組織、外膜、神経血管鞘、腱膜、表層筋膜、真皮、神経上膜、関節包、靭帯、膜組織、髄膜、骨膜、、、、、ネットワーク機能を有する目視できる線維構成体

 

・皮下組織、深筋膜、筋間・筋と骨と間に存在する疎性結合組織と脂肪組織、血管周囲の疎性結合組織と脂肪組織、筋上膜・筋周膜、筋内膜、神経外膜・上膜・周膜・内膜

 

・膜用構造とテンセグリティ構造

 

・テンセグリティー構造。張力と結合。リチャード・バックミンスター・フラー。引っ張り応力と圧縮力の均衡がとれた立体構造と理解。

 

・適度な柔軟性、伸張性、滑走性、支持性が同時に必要な構造。ときに柔らかく筋・腱の滑走性を維持する。あるときは血管や神経の位置関係を一定に保ち、第二の骨格の役割を担うと考えられる。

 

・潤滑性脂肪筋膜系(LAFS)の存在。関節運動や各筋肉固有の伸縮運動を円滑にしている。

 

・Fasia中にも、感覚受容器、侵害受容器(自由神経終末、ポリモーダル受容器など)が存在するとされる。痛みを感受する可能性があれば、走行する神経にも影響を与える可能性もある。

 

・炎症に伴う腫脹などにより安定性低下、痛みを助長する可能性ある。同部を走行する神経や血管、侵害受容器に影響を与える可能性あり。

 

・時間の経過とともに、拘縮の原因となる可能性があり、滑走性の低下、癒着などにより、神経や脈管系の圧迫や滑走障害、虚血、侵害受容器への刺激などをもたらす可能性がある。

 

・修復過程。。表皮は48時間、真皮は4週程度、皮下組織は6週程度必要とされる。

 

〇評価

・分類でみるとどうか?Evansの分類。髄内型か髄外型か?骨性コンタクト得られるか。

・骨頭壊死の可能性は?転子部は比較的血行がいい。

・バナナ骨片のとき、、髄内釘でも転位の可能性あり。

・大腿骨距の再建。整復位の保持できなければ、免荷期間もありえる。

安定型はSHS、不安定型にはSFNとされる。内側皮質の連続性がどうか?

 

・大腿骨への側方アプローチ。皮膚切開→大腿筋膜の切開

・SFNの挿入(大腿骨の長軸、大転子より近位へ皮膚切開)

・大腿筋膜を切開、中殿筋らを鈍的にわけ、大転子の先端へ。フレキシブルリーマーによる近位のリーミング

・遠位横止めスクリュー挿入

 

 

・術後画像。整復状態を確認。良好であれば全荷重が可能。

 

・テレスコーピング機能で圧迫力が加わる。SHSは抵抗はあまりない。SFNは点で。10mm以上のテレスコーピングを過度としている。

 

・髄外型では過度なテレスコーピングが起こるのはSHSで8.3%、SFNでは0%。髄内型ではSHSで50%、SFN16.7%とされる。

 

・SFNではラグスクリューはのsliding機構はさほど重要でなく、slidingを許容するよりも強固な固定が近位骨片の安定性には重要とする報告がある。

 

・SHSはロックがかからない。SFNはロックがかかる。内側の皮質骨の連続性が破綻している場合、、曲げモーメントが大きくなるためSFNが推奨。

 

・SHSとSFN(γネイル)の予後に大きな差はないという報告もある。

 

・脚長差(Leg Length Discrepancy)

・骨頭の先端と大転子の先端間の距離①、骨頭の先端と小転子の最内側高さ②を計測し、左右差にて脚長差を経時的に確認。

 

・荷重に伴うCut outの予測。Singhの分類。ラグスクリューの位置を確認。正面像だと、骨頭中心かそれより遠位がいい位置。ラウエンシュタイン像では骨頭幅の中1/3軟骨下骨まで十分に挿入。

 

・近位骨片の回旋転位。髄外型で解剖学的な整復が得られても回旋の可能性がある。回旋すると髄内型となりスライディング。後外側骨片(バナナ骨片)があるとさらに大きなスライディングとなる可能性がある。U lag screwの使用。

 

・Drへ骨折部の整復状態(髄外・髄内)を確認。インプラントの固定性は?SFNの場合はセットスクリューの使用有無は?ラグスクリューの位置とテレスコーピング、カットアウトの可能性。脚長差、前捻角、頚体角、アプローチの確認と軟部組織の損傷、とめられていない骨片転位の可能性は?

 

・前捻角の増加・減少でどうなるか?増加で内股に。減少でがに股に。過度な前捻角ないか?

 

・受傷時とSFN挿入時に損傷を受ける軟部組織は?

 

・受傷時は梨状筋、共同腱に付着する筋、外閉鎖筋、大腿方形筋、恥骨筋、周辺のFasia。手術侵襲では、中殿筋、小殿筋、梨状筋、共同腱、外側広筋、皮膚、皮下組織、大腿筋膜。。

 

・小転子の骨片が分かれることがある。

 

 

・4週間程度は、何らかの工夫が必要かもしれない。免荷など。。

 

 

〇運動療法 起き上がり、移乗

・関節包・関節包靭帯は伸展位で緊張、屈曲位で緩む。FABER positionは関節包・靭帯緩む。

 

・短回旋筋群の屈曲・外転・外旋運動と屈曲運動。大腿方形筋は屈曲・外転・外旋、屈曲のみでも伸張される可能性がある。骨癒合が得られるまでは、可能であれば、頚部軸を用いた股関節屈曲・外転・外旋運動によるADL獲得できればいい。

 

・大腿方形筋や内転筋などのアウターマッスル短縮やその他の軟部組織の影響がある。動かしやすい方向でいいのでは?

 

・股関節の可動域評価→筋収縮Ex、ストレッチング、Ib抑制(内転筋など)、皮膚の滑走練習(殿筋群など外側、横縦、時間は短めで負荷かけすぎずに)→梨状筋、閉鎖筋、殿筋群をみたり、可動域Ex(過度にならず)→基本動作Ex(起居、座位Ex)。

 

・股関節周囲筋のリラクセーション

・大腿方形筋、内外閉鎖筋、上下双子筋、梨状筋。MMT2レベルの筋収縮練習と軽度のストレッチングにより腫脹・浮腫の改善、Fasiaの滑走性、Ib抑制

 

・長内転筋のストレッチング、滑走練習など。短内転筋は長内転筋を裏打ち。縦方向のストレッチング、I b抑制。恥骨筋は短内転筋の上。恥骨筋のさらに奥に外閉鎖筋。痛くなりやすいので注意。

 

・腸腰筋内側が大腰筋、外側が腸骨筋。大腿動脈の外側。骨頭の中心よりも手前側から引っ張るように。

 

・中殿筋、TFL、小殿筋の筋収縮練習。股関節中間位or30屈曲位or45°屈曲位と外転+内旋の複合運動。ストレッチングも。

 

・大殿筋の筋収縮練習、ストレッチング。外転位での踵落とし、中間位~内転位からの踵落としなど。表層は腸脛靭帯、深層は殿筋粗面へ付着。

 

・大・小内転筋の筋収縮練習。屈曲・外転、内旋位から反対側踵への内転方向へ。

 

・皮膚・皮下組織の滑走練習。術創部に対する運動療法の是非。創部周囲の伸張性と滑走性は術後1か月で低下し、1年後に改善傾向を認めるが術前状態まで至らず。皮膚に由来するROM制限を考慮したリハビリが必要。

 

・膝関節周囲筋のEx。遠位横止めスクリュー挿入。外側ハムを座位で、上に持ち上げるような動き。VLとVIの間を柔らかくしていきたい。表層から深層へ。大腿二頭筋の間から中間広筋・VLのモビライゼーション、Fasciaの滑走練習。

 

 

〇基本動作、ADLEx

・起き上がりは、多少は腸腰筋や恥骨筋に力入ってしまうが、なるべく足上がらないように。

 

・移乗は、免荷なのか?フットタッチ程度か?確認

 

・歩行は自由な関節可動域、タイミングや強度を選択的に調節された筋活動により、もっとも効率的に働かせることにより発揮される。

 

・立脚中期はタテ、ヨコ方向で最も凸部。安定した立脚中期の獲得が必要。

 

・股関節の過伸展位(トレイリング姿勢)が立脚中期で必要。歩行制御は大脳を使わずに自立化されている。そのパターン化には第6頸髄を中心とした頚膨大と第4腰髄を中心とした腰膨大に存在するCPGが重要とされている。

 

・足関節背屈可動域と下腿三頭筋の遠心性コントロールがないと股関節過伸展位がとれず、能動的(努力的)な歩行となる。平地歩行が山登りみたいな感覚。

 

・荷重開始後のリハビリ。骨盤の垂直化(股関節やや伸展位が理想)。股関節中間位、軽度内転の獲得。

 

・初の起立・歩行訓練時は。。。整復位がよければ仮骨形成がなくても歩行できる。

             

 

 

 

〇異常歩行

・股関節屈曲位歩行。原因として可動域制限、手術による炎症でFascia性拘縮、筋性拘縮、攣縮、相対的な短縮(腸腰筋、恥骨筋、中殿筋前部、小殿筋、TFL、内転筋群の前部線維など)、関節包・靭帯性拘縮、筋収縮タイミングの不適切、腰椎の過度な前弯、恐怖感

 

・治療対象としては、股関節前面筋が全体的に。内転筋、腸腰筋、殿筋。

 

・腸腰筋、恥骨筋(起始、停止を近づけるイメージ)。等張性収縮収縮+等尺性収縮組み合わせ。筋収縮Exとストレッチング。骨癒合が得られてからの訓練。前段階でリラクセーションも

 

・MMT2~3レベルでの等張性収縮後に、終末域で抗重力または軽い抵抗に対し等尺性収縮を5秒程度行わせる。これらは筋収縮距離の再獲得を目的としている。その後筋伸張距離の再獲得を目的にストレッチング、可動域Exを行う。

 

・中殿筋、TFL、小殿筋も。同じように。TFL→中殿筋→小殿筋といったように。表層緩めてから深層へ

 

・大腿直筋と小殿筋、周辺Fascia。股関節屈曲位で大腿直筋へアプローチ。

 

・腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯のストレッチングは筋肉が柔らかくなってきてから。股関節伸展、内旋方向へ。

伸展、外旋方向も(腸骨大腿靭帯)。

 

・これらは骨癒合が得られてからの治療。6~8週で杖で歩けるようになるくらいのレベルになってから。。

 

・トレンデレンブルグ、デュシャンヌ歩行。原因としてはTFL、中殿筋・小殿筋、梨状筋、大殿筋等の筋力低下がある。術後の炎症の波及→股関節内転制限。臼蓋・骨頭の変形、ボディイメージの障害、収縮タイミング不良。全部同時に起こる人も多い。

 

・トレンデレンブルグは外転筋の機能不全から、骨盤が反対側に沈下した歩行(内転制限の可能性は少ない)。

→可能であれば殿筋群、TFL、腸腰筋等の筋力強化など

 

・デュシャンヌは体幹を立脚側へ傾けることで、重心を骨頭へ近づけ第一のてこを成立させようとするもの。熊谷らは股関節内転制限が5°以下の症例では100%呈していたと報告。 

→内転制限の改善、外転筋の筋力強化など

 

・TFLは股関節屈曲30°くらいで外転・内旋。踵を外に出すイメージ。45°では小殿筋。筋収縮Ex。側臥位の場合は、中間位、屈曲位、伸展位で踵あげて5秒くらい止められるとある程度安定。骨癒合が得られてからの治療。

 

・THA後の弾発股。歩いているとパチンパチンと鳴るような症例。大腿外側部の疼痛や股関節外側部での弾発音など。

 

 

・外側型弾発股(SH)は大殿筋やITTの筋腱移行部と大転子とで弾発現象が生じる疾患の総称。Femoral offsetの増大による影響が示唆。

 

・皮膚、皮下組織、大殿筋、TFL、腸脛靭帯の柔軟性と伸張性、滑走性改善、可動域改善へ。大転子部付近の圧上昇の軽減と筋力増強にて疼痛軽減、弾発症状の改善、歩容改善を期待する。

 

・骨頭中心から大腿長軸までの線と大腿長軸垂直線(Femoral offset)の変化をみる。術後に増加しているか?脚長差も確認。術前後の変化は?前捻角の確認。レントゲンと、下肢長をみたり。

 

 

 

 

 

 

 

なんだかんだ急性期、回復期が一番機能回復得られるからやっていて楽しいのかもしれない。