つづき・・・・

 

⑭⑮ 理解・表出の内容

 

 

●理解の内容

言葉を聞き分けるところまでを評価する。その後、物事を正しく判断するかどうかは関係ない。

 

患者が、相手の指示や会話がわかるかどうか、患者に話しかける時にどれくらいの手間がかかるかを評価します。

難しい方程式を理解するというような時に使う“理解”ではなく、他人のしゃべった内容をとりあえず聞き取ればよいのであって、そのあとの判断力はここでは採点の範囲外となります。

 

FIMは日常の生活の中で実際に行っている事を評価します。

 

 

●表出の内容

言おうとする内容の善し悪しは問わない

言おうとする内容が、相手に伝わるかどうかを評価する

欲求や考えなど患者の言葉を聞き取るために、どのくらい努力するかを評価します。

 

質問した事と違う答えが返ってきても、その言葉がすぐに聞き取れるような流暢な言葉なら、ここでの評価は下がりません。

*よく晴れたある日、患者と看護婦が外を散歩していました。

看護婦:「今日はお天気ですね?」

患 者:「いや雨ですよ、嫌な天気ですね。」

と間違った事を言ったとします。

この場合の評価は、“理解”は天気の事を聞かれた、という理解は出来ていますが、“表出”は患者の言った言葉を何のストレスもなく聞き取れた。

この例では、とりあえずは“理解”も、“表出”も出来ているという事になります。

 

理解・表出のキーポイント

 
   

 

患者の日常生活を見て、順序として、まず複雑な内容、抽象的な内容の理解/表出に手助けが必要でないかを検討します。なんらかの形で手助けが必要な時には、5点以下になり、基本的欲求を理解/表出しているかの評価に移ります。

 

ある程度複雑な内容を理解・表出するけれど、基本的な内容で一部手助けが必要という患者もいるかもしれません。この場合は、少なくても手助けが必要なので5点以下になります。

 

 

【5点以下のチェックポイント】

基本的欲求に関する話題で採点する

■会話の何割がスムーズか?

10回同じような基本的欲求に関する会話をした時、その内の何回はスムーズに会話ができか。10回中5回であれば50%なので、3点になります。

 

介助者が聞き返したり/言い直したりしなければならないのは会話の何割か?

 

2点…1語またはジェスチャーによる意志の疎通のみが可能と覚えるとよい です。足が痛い患者さんに足を指して「痛い?」や、コップで水を飲むまねをするとわかる。

 

3点…「眠いですか、眠い?」などという強調するような言葉を用いた短い句で話す必要がある。

 

4点…「投薬を望まれますか?」では返事がなく、「薬が欲しいですか?」と言いかえると患者が反応するというような、介助者は短いながらも文章として話せる。理解させるために強調したり、繰り返したりが必要。

 

 

 

⑯ 社会的交流の内容

 

・社会的交流の意味するところは、相手に迷惑をかけているかどうか、自分の言動が人にどう思われているかがわかるという事です。

 

・病室や訓練室、自宅、地域のなかで他人と折り合い、集団に参加して行く能力が含まれます。これは自分の要求とともに、他人の要求をどう処理するかも評価の対象になるという事です。

 

・社会的交流における“迷惑”とは?

暴力、車椅子での暴走、過剰な泣き笑い、挨拶を無視する、癇癪を起こす、過度に引きこもる、ののしる、悪態をつく、集団ゲームに参加しない、訓練を拒むなどです。

 

・病気になる前から「おこりっぽい」「人が迷惑するほどにおしゃべり」など、本人の性格と思われるものであっても、現在、迷惑と評価される場合には、点数が下がる。

 

 

 

⑰ 問題解決の内容

 

 

問題解決の内容は、日常生活の中で起こる問題にどう対応するかという事です。日常生活に関連した解決の技能が含まれます。私たちがなにげなく過ごしている生活の中でも、いつも問題を解決しながら行動をしています。

 

 たとえば、水を飲みたくなったらどうするか、買い物に行ったらお金を払って品物を受け取る、仕事中にむだ話をしてはいけない?!などです。すなわち、日常生活の中では金銭的、社会的、個人的な出来事にたいして合理的で安全で、タイミングよく決断する事が必要です。また、難しくなってきたとお考えですか?

 

「問題解決」は、

*勉強や、専門知識のいる「問題解決」ではありません

*日常生活に即した問題にどう対応しているか

問題解決にも、ほかの項目と同じように、見るべきポイントというのがあります。複雑な問題と日常的な問題について、手助けが必要であるか、必要であるならばどれくらいの割合を必要とするかという事を評価します。  

 

 

【採点のキーポイント】

まず複雑な問題を解決するのに手助けが必要かどうかということを考えます。必要がなく完全にできていれば7点、だいたいできている、慣れていない状況では決断をするのに多少の困難を生じるが一人でできる場合には6点になります。

 

手助けが必要な場合には日常の問題を解決できるかということをみます。患者と接していてこれらの問題の10や20はぶつかるでしょう。それに対し普通ではない行動「一人で立ってはいけないと何回行っても立ち上がって転倒する」をとる場合、患者が何割は解決し、何割はおかしな行動をするかで5点~1点をつけます。

 

問題解決は頭で解決できれば良い。

必ずしも自分の力で行う必要はない。両片麻痺の患者で、身体的には出来ないが、人に頼む事で通常の問題を解決し、金銭管理を自分で行い、退院計画に参加出来ていれば7点となります。

 

左無視のための衝突は問題解決の点数を下げます。

理解・表出での会話のように、こちらが聞いている事と患者が答えている内容が、ちぐはぐな場合問題解決が下がります。

 

 

⑱ 記憶の内容

 

 

【記憶の定義】

日常生活を行う上で必要な内容を覚えていられるかという事です。子供の頃に記憶や、歴史の年号、3日後の約束などではありません。FIMの項目はどれも日常生活を行う上で必要になる内容をという事を基本にしています。

 

記憶の評価の内容は「思い出」ではありません。現在覚えておく必要のあることを覚えていられるかという事です。このことを間違えなければ採点上で大きな間違いはおこらない。

 

 

 

【記憶で採点するのは3つ】

●よく会う人を認識している

…認識できていれば名前を言えなくてもよい。失語症の人で訓練室にいくと担当者のところへ寄って行くなら認識できているとみなします。

 

●日課を覚えている…言えなくてもよい

 

●他人の依頼を実行する…言われた事をやり終えるまで覚えていられるか