避難想定の策定 | 風の御意見番日誌

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まだ検討過程のようだが、かなり詳しい報道をしている。

本当にこんな事態に至ってしまうのか、非常に不安になってしまう。

政府の目的は、憲法改正と非常事態条項の追加なのであろうか。

こういう恐ろしくなるような記事は、不安を煽っておく下地を作る第1歩になるのであろうか。

 

 

 

<引用>

クローズアップ

前例なき有事12万人避難 先島諸島から九州・山口

屋久島などからの住民避難を想定し、鹿児島、熊本両県と国が共同で実施した図上訓練=鹿児島市の鹿児島県庁で2024年1月18日午後2時2分、宝満志郎撮影拡大

屋久島などからの住民避難を想定し、鹿児島、熊本両県と国が共同で実施した図上訓練=鹿児島市の鹿児島県庁で2024年1月18日午後2時2分、宝満志郎撮影

 台湾有事などで、日本への武力攻撃が予測される事態に備え、政府が、沖縄県の先島諸島(石垣島や宮古島など)の住民ら約12万人を島外に避難させる想定の具体化に乗り出した。避難先とするのは九州・山口各県で、政府は受け入れに向けた検討を進めるよう求めている。南西諸島の防衛力強化とも連動した動きだが、前例のない避難想定に課題は山積している。

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輸送手段は?収容先は?生活保障は?

 「武力攻撃予測事態の認定などを受け、避難の指示を発出する」。1月18日と21日、鹿児島、熊本両県と国が共同で、国民保護の図上・実動訓練を実施した。鹿児島県の屋久島と口永良部(くちのえらぶ)島が他国からの攻撃目標になる可能性があるとして、両島の全住民約1万1700人を船や航空機で鹿児島市や熊本県八代市などに避難させる想定。鹿児島県庁で避難指示を出した塩田康一知事は18日の訓練後、「こういう事態が起きないように努力することが大事。ただ、最悪の事態を想定し備えておくのは大事だ」と話した。

 訓練は鹿児島県の離島からの住民避難を想定したものだが、九州・山口の8県には有事の際、沖縄県からも大勢の住民が避難してくる可能性がある。

 政府の現在の想定では、他国からの武力攻撃が予測される事態となった場合、沖縄本島などの住民約130万人を屋内避難させ、台湾に近い先島諸島の全住民約11万人と観光客約1万人を沖縄県外に避難させる。石垣市と宮古島市から民間の航空機と船舶で、福岡空港や鹿児島空港、鹿児島港に運ぶ想定で、県の試算では1日当たり最大で約2万2000人を輸送できれば、6日で島から避難できる。九州の空港や港からはバスや新幹線で各県の避難先へ移動する。

 「万一の際の避難先として九州各県の役割は非常に大きい。受け入れの検討を前に進めていただきたい」。2023年10月、当時の松野博一官房長官は熊本、鹿児島両県を相次いで訪れ、知事に協力を求めた。11月までに山口を含む他の6県にも内閣官房の担当参事官が足を運んで沖縄からの避難想定を説明。その後、8県には、避難者を受け入れることができる宿泊施設や公営住宅の数とその収容人数、食糧の備蓄状況などを調査するよう文書で依頼した。

 ただ、有事が発生し、12万人が一斉に避難するという事態になれば、相当な混乱が予想され、検討すべきことは多岐にわたる。

  熊本県では、避難が長期化した場合の仮設住宅の確保も含めて、受け入れ可能人数などを調査しているが、担当者は「長期になると、避難者のコミュニティーの維持や、学校、仕事の確保も課題となる」と指摘する。県は1月に実施した屋久島などからの避難訓練の結果を、沖縄からの避難受け入れの検討にも生かしたい考えだが、橋本誠也危機管理監は「有事となればインフラの寸断なども想定され、考えるべき事柄は膨大だ」と語る。

 福岡県の担当者は「(現状では)県内に最大で何万人が避難してくるか分からない」と検討の難しさを口にする。災害時に県内の市町村が開設する避難所では計約85万人を収容できるが、有事での沖縄からの避難は長期に及ぶ可能性があり、「85万という数字は当てはめづらい」と語る。

  福岡空港に着いた避難者を運ぶ交通手段についても福岡県が検討することになるとみられるが、担当者は「人数が分からないと、鉄道・バス会社と具体的な協議に入れない」と話す。そもそも福岡空港の滑走路は日常的に過密状態で、有事とはいえ、航空機をどの程度受け入れることができるのかも未知数だ。

 一方、避難者を送り出す沖縄県側でも検討課題は山積している。県は1月30日に国や自治体と共同で先島諸島の住民避難を想定した図上訓練を実施した。23年3月に続き、2回目の訓練。県の担当者は「輸送手段となる航空機や船舶をどう確保するか。高齢者や病院・福祉施設などに入っている『要配慮者』がどの程度いて、どう避難させるかが大きな課題だ」と話す。

 「避難後の生活の保障もない。畑や家畜を持っている地域住民の中には『有事でも避難したくない』という声を聞く」。沖縄県・与那国島の売店で働く植埜(うえの)貴子さん(40)はそう明かす。島は先島諸島の中で最も台湾に近く、約1700人が暮らす。与那国町は島の各地区で避難想定についての住民説明会を開くが、植埜さんの不安は尽きない。「避難の判断が遅れれば、飛行機も船も島に来ることができないのではないか」

 政府は24年度、沖縄からの避難や受け入れについての初期的な計画を策定することを目指す。有事避難に詳しい国士舘大学の中林啓修(ひろのぶ)准教授(危機管理学)は「武力攻撃の場合、その場にとどまって安全を確保するという方法は有効な選択肢にならない。入院患者らの中には、移動すること自体が命を失うリスクにつながる人もおり、災害時の避難よりも難しいものになる。避難が短期間で済む保証もなく、就労支援や役場の移転なども含めて考える必要がある」と話す。

 その上で「九州・山口が安全な避難先になるとは限らず、全国の国民が当事者意識を持つ必要がある。政府がどのタイミングで武力攻撃予測事態を認定し、それが逆に武力衝突の引き金にならないよう、どう他国に伝えていくかも研究しなければいけない。国民保護計画の具体化とともに、有事に至らないようにするための外交的対応も具体化していくべきだ」と訴えた。【野間口陽、山口桂子、宝満志郎、宗岡敬介】

政府、国民保護強化へ 自衛隊活用、不透明

 政府は日本を取り巻く国際情勢を「戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境」ととらえ、台湾有事も念頭に防衛力の抜本的強化を進めている。有事での住民避難を含む国民保護は防衛力強化と不可分の関係にあることから、政府は国民保護の体制強化を本格化させたが、実効性をどう持たせるかなど課題も多い。

 「住民避難など沖縄県南西地域の国民保護に関しては、離島からの避難という困難性もあり、国としても地方自治体をしっかりと支援しつつ、各種施策に取り組んでいく」。林芳正官房長官は1月29日の記者会見で、南西諸島での国民保護の必要性について強調した。

 2022年12月に改定された安全保障関連3文書は、防衛力の抜本的強化に向けて重視する取り組みの一つとして国民保護を挙げた。「武力攻撃より十分に先立って、南西地域を含む住民の迅速な避難を実現する」ため、避難計画の速やかな策定のほか、官民の輸送手段やさまざまな種類の避難施設の確保などを求めた。

 23年7月と8月には、国民保護を所管する松野博一官房長官(当時)が沖縄県・先島諸島の石垣市や宮古島市などを訪れ、地元首長から避難施設の整備や住民避難に関する要望を受けた。松野氏は同10月に鹿児島・熊本両県も訪問し、有事の際の離島住民の受け入れを要請した。政府は同11月に成立した補正予算に、南西諸島を念頭に置いたシェルター整備の調査・設計費1億8000万円も盛り込んだ。

 さらに政府は今年1月、先島諸島の住民を九州各県と山口県に避難させる計画の策定に向けて、内閣官房の事態対処・危機管理担当(事態室)に検討班を設置した。23年度内にも策定予定の沖縄県多良間村(先島諸島)から熊本県八代市への避難計画をモデルケースとして、自治体の計画策定を支援する。

 ただ、実現までの道のりは長い。先島諸島の5市町村で、安全性が比較的高いとされる地下施設は石垣市役所の1カ所しかない。政府は離島の住民が、民間の船舶や航空機を使って九州に避難することを想定しているが、具体的な受け入れ先や輸送方法などのめども立っていないのが実情だ。

 3文書には「自衛隊の強化された機動展開能力を住民避難に活用するなど国民保護の任務を実施する」とも記されており、1月21日に鹿児島県・屋久島などであった国と鹿児島・熊本両県の共同訓練では、航空自衛隊のヘリコプターが住民の輸送に当たった。ただ、有事にあたっての自衛隊の主たる任務は武力攻撃の排除にあり、官邸幹部は「自衛隊がどれだけ住民避難に当たることができるかは、有事の規模にもよる」と明かした。南西諸島での備えが部隊や装備品の増強に偏重し、安全確保策が示せなければ、住民の不安や懸念が高まる可能性もある。【岡村崇、古川宗】