育毛剤と発毛剤って同じもの?実は意外な違いが!

以下では、育毛剤と発毛剤の違いについて、できるだけ専門的かつわかりやすく解説します。

1. はじめに:薄毛対策の二大カテゴリー

近年、日本でも男性・女性を問わず薄毛に悩む人は増加しています。加齢や遺伝、ストレス、生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの変化など原因はさまざまです。薄毛対策の方法には医療機関での治療、生活習慣の改善、そして市販の育毛剤・発毛剤の使用があります。特にドラッグストアやインターネット通販などで多くの製品が販売されているため、どれを選べばよいのか迷う人も少なくありません。

このとき、多くの人が混同しやすいのが「育毛剤」と「発毛剤」の違いです。見た目やパッケージ、宣伝文句が似ているため同じようなものだと思われがちですが、法律上も、効果の仕組みもまったく異なる製品です。この違いを正しく理解することが、自分に合った薄毛対策を選ぶための重要な第一歩となります。

2. 法律上の分類による違い

日本では、医薬品・医薬部外品・化粧品などの分類が薬機法(旧・薬事法)によって定められています。

発毛剤:医薬品に分類される

育毛剤:医薬部外品に分類される

この分類の違いは、効果効能の「強さ」や「科学的根拠」、さらに「販売や広告の規制」にも影響します。

2-1. 発毛剤(医薬品)

医薬品は、厚生労働省による厳格な審査を受け、「効果が科学的に証明されている」成分を有効成分として含んでいます。発毛剤の広告では、「発毛効果がある」「髪が生える」という表現が認められています。

医薬品は副作用の可能性もあるため、添付文書や用法用量を守る必要があり、場合によっては医師の診察や薬剤師の説明を受ける必要があります。市販薬としては「第一類医薬品」として薬剤師の対面販売が必要なものもあります。

2-2. 育毛剤(医薬部外品)

一方、医薬部外品は、医薬品ほど強い効果を持つわけではありません。予防や進行抑制を目的とするものが多く、「発毛する」といった表現は法律上使えません。育毛剤の広告では「抜け毛を予防」「毛髪・頭皮を健やかに保つ」「発毛促進(休止期から成長期への移行を助ける)」といったやや穏やかな表現にとどまります。

医薬部外品のため、薬剤師による販売が不要であり、ドラッグストアや通販などで手軽に購入できます。

3. 作用機序(メカニズム)の違い

両者の最も大きな違いは、髪を「生やす」力があるかないかです。

3-1. 発毛剤の作用

発毛剤は、すでに休止期に入り毛が抜け落ちた「毛包(もうほう)」に直接働きかけ、再び新しい髪の毛を生やすことを目的としています。

日本で代表的な発毛成分は以下のとおりです:

ミノキシジル(Minoxidil)
世界的にももっともポピュラーな発毛成分です。血管拡張作用により頭皮の血流を促進し、毛根の細胞分裂を活性化。成長期の毛包を増やし、太くしっかりとした毛髪の発毛を促します。日本では大正製薬の「リアップ」などが有名です。

フィナステリド・デュタステリド(内服薬)
こちらは発毛剤というよりはAGA治療薬として医療機関で処方されるもので、5αリダクターゼという酵素を抑制し、男性ホルモンの影響による脱毛を防ぎます。厳密には外用薬ではなく内服薬ですが、「発毛治療」として併用されるケースも多いです。

ミノキシジル外用薬は、市販薬として販売されていますが、フィナステリドやデュタステリドは医師の処方が必要です。

3-2. 育毛剤の作用

育毛剤は、今ある髪や頭皮環境を健康に保ち、脱毛を予防することを主な目的としています。

代表的な効果には次のようなものがあります:

頭皮の血行促進(ビタミン誘導体、センブリエキスなど)

フケ・かゆみの防止(抗炎症成分や殺菌成分)

頭皮環境の改善(保湿成分、メントールによる清涼感)

毛母細胞の活動を助ける(アデノシン、ペンタデカン酸など)

つまり、すでに「毛包が死んでしまっている部分」には発毛効果を発揮しにくく、「まだ毛が残っている部分」に対して薄毛の進行を抑制するのがメインです。

4. 使用対象と効果の違い

4-1. 発毛剤が向いている人

すでに薄毛が進行している人

目に見えて毛量が減っている人

AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性型脱毛症)の症状がある人

「新しく毛を生やしたい」人

発毛剤は、特にAGAに対して科学的に効果が認められており、一定期間(通常は4〜6か月以上)継続することで明確な発毛効果が期待できます。ただし、効果の感じ方には個人差があり、使い続けることで初めて維持できるものでもあります。

また、医薬品であるため、副作用が出ることもあります。例えば、ミノキシジルでは頭皮のかゆみ・赤み、心拍数の上昇、むくみなどが報告されています。

4-2. 育毛剤が向いている人

抜け毛が増え始めた人

頭皮の乾燥やかゆみ、フケが気になる人

薄毛の進行を予防したい人

頭皮ケアの一環として始めたい人

育毛剤は、薄毛が進行する前の初期段階での使用が特に有効です。毛根が生きているうちに頭皮環境を整えることで、抜け毛の進行を食い止め、結果的に髪のボリューム感を維持しやすくなります。

ただし、「すでに生え際が後退している」「頭頂部が明らかに薄い」といった状態では、育毛剤だけで劇的な改善を得るのは難しい場合が多いです。

 


5. 使用期間と効果の現れ方

髪の毛の成長には「ヘアサイクル」という時間が関わっています。髪は成長期→退行期→休止期というサイクルを数年単位で繰り返しています。

そのため、発毛剤・育毛剤いずれも「すぐに効果が出る」わけではありません。

発毛剤:使用開始から3〜6か月で産毛のような毛が生え始めるケースが多く、1年以上継続すると明確な変化が期待できます。

育毛剤:頭皮環境が整い、抜け毛が減ったと実感できるまでに1〜3か月程度かかることが多いです。髪が太くなる、ハリ・コシが戻るなどの効果を実感する人もいます。

6. 副作用・安全性の違い

発毛剤の副作用

頭皮のかゆみ、炎症

むくみ、動悸(まれ)

多毛症(意図しない部分に毛が生える)

これらは有効成分が強力であるがゆえのものです。使用前に添付文書をよく読み、異常があれば医師や薬剤師に相談する必要があります。

育毛剤の副作用

基本的には穏やかで、刺激やかぶれ程度

配合されているアルコールやメントールで刺激を感じる場合あり

副作用のリスクは発毛剤に比べて低いですが、敏感肌の人は注意が必要です。

7. 医療機関との関わり

発毛剤(医薬品)を使用する場合、医師の診断を受けることでより適切な治療を受けられます。AGAクリニックでは、ミノキシジルの外用に加え、フィナステリドなどの内服薬を組み合わせる治療が主流です。

一方、育毛剤は医師の処方が不要で、セルフケアとして気軽に始められます。ただし、薄毛が進行している場合は育毛剤だけでは限界があるため、医療機関との併用が効果的なケースもあります。

8. 価格とコストパフォーマンス

発毛剤(ミノキシジル外用薬):月額5,000〜10,000円程度が一般的

育毛剤(医薬部外品):月額2,000〜6,000円程度

発毛剤の方が高価ですが、効果も強く、治療としての側面があるため費用対効果は高いといえます。育毛剤は長期的な頭皮ケアを目的とするため、コストを抑えたい人にも適しています。

9. 両者の併用について

実は、発毛剤と育毛剤は併用できる場合もあります。

例えば、ミノキシジル外用薬で発毛を促し、育毛剤で頭皮環境を整えることで、発毛効果を最大限に高めることが可能です。ただし、同時使用する際は成分の相性や刺激性に注意し、医師や薬剤師に相談することが望ましいです。

10. まとめ:違いを正しく理解して選択する



11. 最後に:自分に合った対策を

薄毛対策は、年齢・性別・進行度・生活習慣によって最適な方法が変わります。

「これから抜け毛を予防したい」→育毛剤が向いている

「すでに薄毛が進行している」→発毛剤や医療機関での治療が有効

また、育毛剤・発毛剤だけでなく、バランスの良い食生活、十分な睡眠、ストレス管理など生活習慣の改善も重要な要素です。

育毛剤と発毛剤の違いを理解したうえで、自分の頭皮の状態や目的に合った製品・治療法を選ぶことで、より効果的な薄毛対策が可能になります。

参考情報

厚生労働省「医薬品・医薬部外品の定義」

大正製薬『リアップ』製品情報

日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」