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山内令南公式ブログ

山内令南(本名:種田千里)
1958年12月19日生まれ
岐阜県出身
岐阜大学医療技術短期大学看護学科卒業
第112回文學界新人賞受賞(受賞作「癌だましい」)
2011年5月19日食道癌により他界

 春夫は昼食を済ませたあと、近くの本屋へ行った。本屋といっても、ショッピングセンターの中にある小さな店だ。まさかないだろう、いや、あって欲しくない、という思いで家を出た。だが、あった。本棚には「ニート」の付く本が置いてあった。白い背表紙に、文字が浮き上がって見えるほどだ。
 本屋には、主婦らしい女性か、定年退職したような男性しかいない。そんな中、春夫はじっと「ニート」の文字を見つめながら立ち尽くす。手を伸ばせば届く位置にある本が、魔物のように思えてくる。見れば見るほど、「ニート」の文字は春夫を捕えて放さない。もはや身動きならないほどだ。やっとの思いで唾を飲み込む。喉元を通過する音が大音響にも思え、春夫はますます身を固くする。
 と、その時。
「あれ? 神ちゃんじゃない、どうしたの」
 ポン、と肩を叩かれた。
「うわあああー」
 思わず仰け反り、固まっていた足がもつれて転びそうになる。そんな春夫の腕を、声の主はガッシと捕まえた。
「ちょっと、ヘンな声出さないでよ、恥ずかしい。やだわ、神ちゃんたら」
「あ、す、すいません」
 腕の主は日出野冴子だと、春夫はやっと認識した。逞しい手で支えられた腕は、力が入らないまま、肘から先をたらりと垂らしている。冴子は苦笑したが、春夫の腕を放そうとはしない。ほっと息をつき、春夫は体勢を建て直した。