(画像引用元:tsuminokoe.jp)

 

Amazon Prime、ビデオマーケット、楽天TV、U-NEXT他で視聴可。

 

評価: 星星 星星(4.0)

 

ストーリーをざっくり言うと、

昭和の未解決事件を追う新聞記者が、取材の過程で京都のテーラーと出会い、はからずも事件の糸口をつかんで解明に動き出す話。 (ざっくりすぎか?)

 

原作は、塩田武士のミステリー小説『罪の声』。

例によって私は未読。

 

作中で中心となる「ギンガ・萬堂事件」の元ネタは、

1984年(昭和59年)から1985年(昭和60年)にかけて発生した

グリコ・森永事件である。

森永は全国区だから言うに及ばずだが、

グリコは、昭和30年代~40年代に

阪神地区で生まれ育った世代には

馴染みがありすぎるほどある食品メーカー。

グリコの社長が誘拐されて身代金を要求する脅迫状が届いたと

新聞の一面を飾った日の朝、大げさでなしに私は

自分の知り合いのおじさんが誘拐された、くらいの

衝撃を受けたものだった。

 

ま、そんな私事はともかく。

 

ストーリーは、各方面に取材を重ねる新聞記者(小栗旬)と、

カセットテープに録音されていた幼い頃の自分の声が

「ギンガ・萬堂事件」に使われたものと同じと知って

ひそかに真相を調べ始めた2代目テーラー(星野源)、

この二人の動線をなぞりながら進んでいく。

しかし事件発生から35年も経っていて、

事件のカギを知りうる人物が

殺されたり行方不明になっていたり

国外逃亡していたりで調査は難航、

映画でも結論として明確な解明には至っていない。

 

けれど、その過程で、

‘存在してはいけない’と

思い込まされてきた一人の男が救われ、

同時に、

‘知らぬ間に重大犯罪に加担させられていた’恐怖と

‘加担させたのは自分の父親ではないか’という疑念に

押しつぶされそうになっていた2代目テーラーが救われる。

 

チョイ役?的な登場人物がめちゃくちゃ多くて、

学生運動の過激派内紛やら

右翼大物の犯罪入れ知恵やら

人間関係の特殊事情が複雑に絡んでいるから、

映画館で1回観ただけの私は

何がどうなってこうなって……という

きちんとした筋立てを覚えていない。

それでも、子ども時代に「声」として

強制的に事件に関与させられた3人のうち

最も苛烈な人生を歩まされた男が

自分自身として生きる権利(存在権)を取り戻していくプロセスが

この物語の主眼であることは了解できた。

たぶん、その男を演じた宇野祥平という俳優さんのおかげだ。

知らない俳優さんだったが、

初見、‘地獄を知ってる狂気の目’をしていて怖かった。

 

あと、京都の二代目テーラーを演じた星野源、

私はこの人に特に関心はなかったが

(過去の出演作を観たことが無いし、歌もよく知らない)、

事件の全容が見え始めたときに母親に詰問するシーン、

そこがとても上手いと思った。

静かな、しかししっかりとした怒り。くやしさ。

それが口調ににじみでていた。

 

2021年の日本アカデミー賞助演男優賞の最優秀賞は

宇野祥平か星野源に与えられてほしかった。

とても残念だ。