昨秋から今年3月まで、
キンタマ猫に睡眠時間と体力を削られた5ヶ月。
それでも、
‘月に1本は映画を観る’自主課題、なんとかこなしておりました。
ずいぶん時間が空いたからいろいろ忘れかけてはおりますが
その期間に観た映画の感想を
駆け足ながら順次記事にしていきます。
まずは、ジャケットが気に入ってDVD買ったこの映画から
(画像引用元:amazon.co.jp)
(画像引用元:eiga.com)
Amazon Prime、楽天TVで有料視聴可。
評価: (4.7)
<あらすじ>
1945年4月、第⼆次世界⼤戦末期の敗⾊濃厚なドイツ。
連合軍の総攻撃の前にペルリンは陥落寸前。前線後退による戦局の混乱の中で、ドイツ軍では兵⼠の脱走や食糧窃盗などの軍規違反が相次いでいた。
主人公のヘロルトも脱走兵の一人。憲兵隊に捕まると、形だけの裁判にかけられて前線に送られてしまう。命からがら追跡をしのぎきったヘロルトは、逃げた先で、打ち捨てられた⾞両の中にナチス空軍将校の軍服一式があるのを見つける。解放感から、ほんの出来心でそれらを身にまとったヘロルト。しかし、そこに偶然現われ、彼を本物の将校と誤解した兵士の出現によって、ヘロルトの運命は大きく転回していく――。
その場しのぎの嘘からどんどん嘘をつかざるをえなくなり、
ついには、「自分はヒトラー総統の特使で全権を委任されている」と大ウソをかまして
同胞であるはずの脱走兵たちの⼤量殺戮を始めた男の話。
は遠慮して(何に?)4個にとどめたが、
気持ちの上では5個満点が正直なところ。
映像・演出がクールで、たいそう私好みであった。
戦争映画っちゃあ戦争映画で、人もたくさん殺される。
しかし血しぶきとか死に顔とかがほとんど出てこない。
殺すのも殺されるのもドイツ人で、
台詞は少なく、役者たちは主に目と表情筋で語る。
モノクロに近い画面の色合いも手伝って、
全編にわたって抑制が利いている。
冒頭で、軍用車に乗ってヘロルトを追っていた憲兵隊の隊長。
かなり近い距離でバンバン弾を撃ってるのにちっとも当たらない。
キツネ狩りに見立てた脅し撃ちなのか、
それとも単に演出が下手なのか――と気になってたら、
映画中盤で、
ナチス大尉になりすましたヘロルトに
「ここに来る前はポーランドにいた。
ポーランドは楽しかったぜ」
と、ニヤリと笑いながら言っていた。
多民族国家ポーランドは、第二次世界大戦前夜に
ソヴィエトとナチスドイツによって国家を消滅させられ、
ユダヤ人に限らず多くの国民が殺された国である。
憲兵隊の隊長は、自分がポーランドでしてきたことを
短い言葉で端的にヘロルトに自慢したのだ。
きっとキツネ狩りと同じ感覚で
‘なぶり殺し’や‘遊び殺し’をしてきたのだろう。
ただ自国の脱走兵については、軍の規律があるために
銃弾を命中させるわけにいかなかった。
このように、『ちいさな独裁者』では
ちょっとしたセリフや身振り、目配りで
その行動主体の価値観や性格がわかるようになっている。
構成は、「承」から始まってずっと「転」が続き、
「結」は字幕のみで表現される。
全119分のうち、100分近く緊張が続くから
真剣に観るとしんどいし、中弛みも無いことはないが、
途中で野生爆弾のクッキーにそっくりな将官が出てくるので、
ブラックコメディかなと思って観ることも可能だ。
私はどんな映画も結構真剣に観てしまう。
だから必ず感情移入したり肩入れしたくなるキャラが出てくる。
この映画の場合はフライターク。
がっちりとギルド制で固められた当時のドイツであれば、
さしづめ、真面目だが小心者の煉瓦工といった風の
小柄でちょび髭のおどおどしたおっさんだ。
ああ、フライターク
フライターク、可哀想に、壊れちゃった
と、私が心の中で思わず叫んだカットは必見……かもしれない。