2人で席に戻った
さっきまでいた場所は、空気が重苦しく、他人の食事をする音がやけに耳について、不快だった

石田さんは、私の電話の事に一切触れなかった
ただ、私をあまり見てくれなかった

聞いてくれたら
私はごまかせただろうか
ユノからの電話が、私を満足させたけど、何か違った

何度も言いそうになり、何度も言葉を飲み込んで、グッとこらえた喉の奥が、苦しかった

石田さんはその日、私を抱いてくれたけど、シャワーを浴びせてくれなかった、すごく嫌だったのに、きちんと気持ちの切り替えが出来ないのに
きっと、その事も石田さんは気づいているのだと思う
ありのままの私を見せるのが怖かった、そして、石田さんのしぐさが、いつもより、少し乱暴に感じたけれど、私は、その事に気付かなかった様に、振る舞った
いっそのこと、殴られたいと思った
こんなに愛してるのにと
ぶつかってくれた方が、どんなに楽だっただろう

石田さんの気持ちが、離れてしまうのが怖くて、必死に甘えたけれど、きっと、全部、石田さんは分かっている

でも、分かって欲しい
あんなに憧れた人が私とつながって、電話をしてくれて、会いに来てくれる

私には、それを断るなんて、絶対に出来ない

むしろ、終わりがくるまで、続けれるまで、私は自ら切れない

こんな私はバカだと、だらしがないと思われても構わない

私は今、石田さんに抱かれながら、ユノを待ってしまうんだ
じゃあ…
私は石田さんと別れた方が良いんだろうか

帰り、いつも通りに石田さんが車のエンジンを止めて、前を真っ直ぐ向いたまま、普通のトーンで話した「麻里さん、さっきの電話の相手って、前に聞いた、お店の男なの?」
決して私を見ない
だから、私も前を向いたまま答えた
「…違う」

石田さんは、少し黙って私を見て言った「…そう、誰なのか、僕は知らなくていい、知りたくないから、…麻里さんを信じているから、もうこの事は聞かないよ…」
私は返事が出来なかった
それは石田さんの諦めにも感じたし

私を許した事にも感じて

どちらかわからなくて、でも、私はこれ以上石田さんを傷つけてはいけないと言うことは、はっきりと分かった

車から降りる直前引き止められて、キスをしてくれた
いつもと変わらないキスで、私は安心した

また同じ事を繰り返した時、私はこの人を失うんだ

そう思うと、悲しくなって
石田さんの前で、初めて泣いた