『俺とムコ殿』~⑤ここはどこだ!

 

「なっ、何だここは、真っ暗で何も見えない」

 

ハワイのショッピングモールでアスカが何者かに狙撃されたが、辛うじて志朗が盾になってアスカは助かった。だが、志朗は背中に弾丸を受けて死んだ。

 

何故か志朗は目覚めた。そこは、暗闇で周りが何も見えない。臭い、周りに獣の死骸が沢山あるような、とても耐えがたい臭いだ。そして、湿度が高く、ジメジメした重い空気、絶えず苦しそうなうめき声が聞こえている。一人ではない、大勢の人間が嘆き、苦しんでる、志朗は、精神が破壊さそうな気持ちになっていた。

 

どれくらいの時間が過ぎたのか分からない。段々目が暗闇に慣れてきた。そこは正に地獄だった。地面には、沢山の人の顔が埋め込まれていた。その人面は生きていて、うめき声をあげていた。

 

小さな光が、ひらひらと志朗に向かって飛んできた。それは、金色に光るコウモリだ。コウモリがついてこいと言っているように志朗の周りを飛んでは、どこかへ飛んでいく。志朗はコウモリについて行った。歩く度に人面を踏まなければならなかった。女性も子供いた。踏むたびに悲鳴を上げ泣き叫んだ。志朗は心の中で謝った。

 

しばらく歩いた。コウモリが旋回している下に一人の男が座禅をしていた。その男は、光を放っていた。志朗は男に近づいた。

 

 

「父さん!」「君は、誰だ? もしかして、志朗か?」

志朗の父、レオナルドは、志朗が記憶している姿のままだった。

 

「そうだよ、父さん!」「どうして、こんなところに来た」

 

「分からないんだ。ただ、アスカが銃で撃たれそうだったから守ったんだ」

「その時、俺が撃たれて死んだ、と思う」

 

「そうか、天は君を自殺と見なしたんだ、俺と同じだ」

 

「ここは、地獄なの?」「そうだ、自分を殺した罪で地獄行きだ」

 

「ここは危ない、鬼が来る」「避けろ!」

レオナルドが志朗を突き飛ばした。志朗の倍はある巨体で、背中からコウモリのような羽が生えている鬼が剣を構えていた。

 

「待ってたぜ、デーモン」

レオナルドが、鬼の手の甲を蹴り、剣を払い除けた。

 

鬼が瞬時にレオナルドの直ぐ側からパンチで顔面を殴った。

しかし、レオナルドには全く効かなかった。鬼より早いスピードで、パンチを避けていた。鬼には、感情がなかった。ただ相手を殺すだけだった。そして、この鬼は100匹目のラスボスだった。

 

レオナルドは、鬼のパンチを避けた後、すかさず、鬼の角を掴んで、腹に膝蹴りを1秒間で10発はぶち込んだ、鬼がよろめいた隙に、レオナルドが鬼の剣を拾い、鬼の背中に剣を突き立てた。鬼はパタリと倒れ、シューっと音を立てて消えた。

 

「父さん!大丈夫?」「ふぅー、終わった」

 

「終わったってどうゆうこと?」

 

「ふむ、鬼を100人倒せば、天国へ行かせてくれると神様が約束してくれたんだ」

「今のが、丁度100人目だったのだ」

 

「それじゃ、俺は父さんとまた別れるのか」

 

その時、突然地獄が昼のように明るくなった。でも、地獄にしては、臭いや湿気が無い。周りの景色は、山や湖、森、など美しい自然に囲まれ、空気が爽やかな場所だった。真っ白い人影が志朗とレオナルドの前に現れた。

 

「レオナルドさん、お疲れ様、鬼たちの暴走を阻止してくれてありがとう」

「貴方は、これからも私の側で私を手伝って下さい」

「そして、志朗さん、君は勇敢でした、もし、希望するならば今から別の人間に生まれ変わりませんか? 記憶付きで」

 

「はい、ありがとうございます」「父は生まれ変われないのでしょうか?」

 

「レオナルドさんも、輪廻するべきでしたが、地獄の鬼達が騒がしかったので、ついレオナルドさんに頼ってしまいました。そのお礼も兼ねて、貴方を輪廻させることとしました」「あくまでも例外ですけどね」

 

「神様、ご配慮ありがとうございます」

「私のようなものでよければ、喜んでお手伝いさせて頂きます」

 

「それでは、志朗君に輪廻してもらいます」

 

「あっ、ちょっとだけ良いですか、父と別れがしたいのですが」

 

「そうでした、そうでした、では、心置きなくどうぞ」

 

「父さん、さっきはありがとう、ずっと行方不明だと思ってたけど死んでたんだね、母さんは元気だから安心してね」

 

「いつもお前たちのことは感じていた」

「志朗、生まれ変わりは、赤ん坊からだ、現世はお前が死んでから30年経っている、そこから今の年齢まで22年に経ったら、タイムマシンが完成しているはずだ、タイムマシンでお前が死んだ日に戻るのだ、よいか」

 

「はい、わかりました、別人になるけど、また一文字家と関わっていきます」

「そして、母さんを守ります」

 

「頼んだぞ、志朗、元気でな」「父さんもお元気で」

 

二人は固く握手をした。

 

「それでは、よろしいですか?」

 

「はい、神様お願い致します」

 

強い光が志朗を包んだ、そして、光は闇のトンネルを抜け出した。

 

つづく

 

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