『俺とムコ殿』~①君には娘はやらない!

 

お父さんの携帯の着信バイブの音、ブーブーブー「おう、アスカか? 久しぶりだな」

 

「お父さん元気?、、、、あのね、お父さんに会って欲しい人がいるの」

 

なにっ!アスカにそんな男がおるんかぁー 言葉に出そうになったが、かろうじて押し殺した。そして「おーっ、連れてきなさい」と言えた。

 

「うん、じゃぁ、今度の土曜日の12時でいい、ご飯食べながら」

 

「おー、いいよ。楽しみに待ってるよ」

 

「じゃぁね、ママには後で電話するよ、おやすみなさい」通話が切れた。

 

「アスカから?」と勘のいいママ

 

「あー、今度の土曜日12時に彼氏を連れて来るって、、、、」元気が無い

 

「え~っ、どうしよー、どうしよー」

「ねぇー、お昼ごはん何にしよー、お父さ~んっ」

 

「アスカが後でママに電話するってよ」

「昼飯なんて何でもいいよ、カップラーメンでも出しとけば」

ちょっと切れ気味である。

 

それにしてもいつの間にアスカのヤツ、、、、、

「なぁママ、アスカから彼氏のこと何か聞いてたか?」

 

「ぜんぜん聞いてなかったわょー、私もビックリしたわよぉ」

 

あっという間にアスカが彼氏を連れて来る日になった。

ピンポーン  ベルが鳴った。

 

「わぁっ!」 バサッ

ソファーに座って新聞を読むふりをしていた俺は焦って新聞を落とした。

 

和服のママが玄関に向かった。ママは本番に強い。料亭の女将のオーラが出ている。

アスカがドアの鍵を開けて彼氏と玄関で待っていた。

 

「いらっしゃい」

「ただいまぁーママ」

 

「初めまして、風見志朗(カザミシロウ)と申します」

「本日は宜しくお願い致します」

 

「まぁーっ、何てイケメン!」

ついうっかり、心の声が出てしまったわぁ。

「あっ、どうぞ遠慮しないで上がって、志朗くん」

 

「はい、お邪魔します」

 

「お父さん、お待ちかねのアスカと志朗さんが来ましたよ」

 

「おーっ、君が」

 

「初めまして、風見志朗と申します」

「本日は、宜しくお願い致します」

 

「そうかそうか、これがママの映見(エミ)で、私が一文字猛(イチモンジタケシ)だ!よろしく」

「この家には、あと私の弟の隼太(ハヤタ)と家政婦の美田(ミタ)さんがおる」

『あーごめん、疲れたろう和室で落ち着こう」

 

4人は和室へ向かった。

 

「いらっしゃいませ」和服の美田が三つ指をついて挨拶をする。

 

「初めまして、風見志朗と申します」「宜しくお願い致します」

 

料亭のような和室のテーブルにお父さんの向いは志朗くん、隣はママ、ママの向いはアスカが座った。

全員が落ち着いたところに美田がビールを運んでお父さんの前に置いた。コップは既に配られていた。

 

「それでは風見君、今日はよく来てくれた」と言ってビール瓶を差し出した。

 

「恐縮です、いただきます」

 

「それでは、風見君との新たな出会いに乾杯!」

お父さんは、ビールを一気に飲み干した。

「あぁー美味い」「どうだ風見君もう一杯」

 

「はぁ、でも僕はもう少しゆっくりとしたいと思いまして」

「あっそうだ、これお土産です」「お口に会えばよいのですが、、、、」

と言って袋から羊羹の箱を出してお父さんに差し出した。

 

「おお、わざわざすまないねぇ、とら屋の羊羹かぁ、頂くよありがとう」

 

刺身、天ぷら、一人用鍋、ステーキ、お吸い物など次々と運ばれてテーブルが賑やかになった。

 

「さぁ風見君、遠慮しないで食べ給え」

「ところで風見君、君はハーフなのかな?」

 

「はい、母は日本人で、父がイタリア人です」

「父は僕が幼いころ何者かに誘拐されて、それっきり行方が分からないのです」

「なので、僕は母に育ててもらいました」

 

「そうか、色々ご苦労があったのだね」

「お父さんの仕事は何だったのかな?」

 

「実はよくわからないのですが、どうもイタリア政府からの仕事を請けていたことだけしか、詳しくは分かりませんでした」

 

「なるほど、何か組織がらみのようだね」

「君自身は、金髪イケメンで細いようだが筋肉質の体で、格闘技をやってそうだな」

 

すかさずアスカが説明する「お父さん、彼は仮面ライダー俳優なのよ」

「今放送中の仮面ライダー、えーと、何て名前だっけ?」

 

「Z、仮面ライダーゼットだよ」志朗が答えた。

 

「ほぉー、これから人気者間違いなしだな」

「格闘技は何をしてるんだい?」

 

「幼いころから柔道、空手、剣道、カンフー、軍隊直伝の護身術を少しずつかじっただけです」志朗の目から少しだけ警戒心が放出された。

 

「ほぉー、面白い」猛の目から少しだけ殺気が放出された。

 

「こちらから、よろしいでしょうか?」志朗が猛への質問の突破口を開いた。

「このタワーマンション最上階の部屋は、賃貸ですか?」

 

「いや、オーナーだ」「ここ東京港区だけではない他にも東京に3件、大阪3件、名古屋2件、広島、福岡、沖縄、北海道に合計20件のタワーマンションを持っている」

「資産運用は、弟隼太の担当で色々事業もしているんだ」

 

「正直驚きました」「アスカさんは、何も教えてくれなかったので、、、、」

志朗がしばらく困った様子で下を向いていた。だが、突然覚悟決め、

「お嬢さんとの結婚をお許し下さい」

「お嬢さんを必ず幸せにします、どうか、お願いします」

 

「君には娘はやらない、今の気持ちは、だが、、、、」

「ただし、俺と戦って勝てたら考えてもいい」

「考えてみてくれ、風見君はアスカと付き合いがあるようだが、私と風見君は今日会ったばかりだ、何もわからないからなぁ」

「どうだろう、来週の土曜日10時このマンションの2階ジムに道場があるからそこで戦おう」「柔道、空手、剣道、カンフー、護身術全部だ!簡単に言えば格闘だ、気絶した方が負けだ」

 

「お父さん、無茶だよぉ~」「志朗くんがかわいそぉ~だよぉ~」

 

「風見君には、戦いに集中してもらうために、ここに住んでもらう」

 

「えっ!」志朗は驚きを隠し切れなかった。

 

「えぇぇぇお父さん、無茶だよぉ~」

 

「ここには部屋がいっぱいあるし、1日3食の食事、洗濯、掃除は任せてもらおう」

「何なら時給も支払うぞ」

 

「どーうする~志朗くーん」

 

「お父さん!ぜひ、お願いします。お世話になります」志朗が少し興奮気味で言った

 

「よしっ!決まった、面白く鳴ってきた~、なぁママ」

 

「はい~、とっても楽しみですわぁ~」本気で嬉しそうだ。

 

「それじゃぁ、私もここに住むわ」きっぱりと宣言した。

 

「よぉ~しっ!明日からトレーニング開始だぁ~」

「今日はたっぷり食ってくれよー」

 

「はい」

 

アスカと志朗は一旦それぞれのアパートへ帰る。

 

「ごめんねぇ、志朗くん、大変なことになっちゃったねぇー

 

「うんん、良かったよ、君のご家族と会えて」

「でも、めっちゃ緊張したでぇ~、もうぉ脇汗びしょびしゃやぁ~」

 

志朗は、アスカと2人だと関西弁になる。

 

「でも志朗くん、本当に大変なのはこれからよ

「お父さんって、ああ見えて格闘技とか強いの

「若いころチベットのお寺で修業をしたことがあると自慢してたわ

「今でも毎日トレーニングを欠かさないらしいよ

 

アスカのアパートの前。

 

「じゃぁ、また明日、ここに8時でいい?

 

「うん、分かった、おやすみ」

 

「おやすみなさい」

 

アスカが自分の部屋に向かうのを見届け、志朗が自分のアパート

へ帰った。そして翌日、志朗とアスカは、アスカの父親と再び会った。

 

「おはよう、風見君、アスカ待ってたよ、よく眠れたかい?」

 

次回へ続く