第4回 2023年10月20日投稿
【天国と地獄編】
勇作が目を覚ました。
勇作「こ、ここはどこだ? ち、千夏とゆうかは?」
勇作はあたりを見まわたした。視界は霧で何も見えなかった。
突然勇作の前方上空が輝いた。
勇作「て、天使?」
女神「ここは天国よ、勇作くん」
「私は女神アクア」
勇作「俺は死んだのですか?」
女神「そうよ、君は未来人の銃で撃たれて死んだの」
勇作「千夏とゆうかは?」
霧が薄くなり、あたりの景色が見えてきた。
ここから見える景色は、緑の豊かな山に囲まれた湖のほとりだった。
後ろには、丸太小屋があり、湖の船着き場には豪華なクルーザーが停泊していた。
気温は暑くもなく、寒くもなく丁度いい
ここはまるで絵画のような素晴らしい景色だった。
勇作は、もう一度二人を見まわたした。
女神アクアと二人きりだった。
アクア「この風景は貴方のイメージなのです」 「貴方の天国のイメージよ」
勇作「なんだか懐かしくて落ち着く、何でも出来そうな気がする」
アクアが翼を広げた。
バサッと翼を動かすと、スーっと空に飛びたった。
鳥のように空を飛んでいた。
勇作もジャンプする姿勢で空に飛び上がってみた。
勇作「ウワぁー!」
まるでロケットのようなスピードで飛び上がった。
あっという間に 3,000km 上空だった。
心臓がドキドキしてる、お、落ち着け俺!!
勇作は深呼吸して体制を立て直した。
前方の山頂を目指して、飛べ、と念じた。
体は思い通りに空中を飛んだ。
山頂を旋回して元の位置にもどる。
勇作はうまく地上に着陸出来るか心配した。
ゆっくり着陸しろと念じたら、ふわっと着陸できた。
アクア「この世界は、あなたが望むことは何でも出来るわ」
勇作「喉がカラカラだ」
アクア「器に入った飲み物をイメージして」
勇作の手に缶コーラが現れた。
キャップを開けて一口飲んだ。
勇作「冷えててうまい」
アクア「今日は暗くなってきたわ、また明日来ます、ではゆっくり休んでください」
アクアは消えた。
勇作は丸太小屋に入った。ただ広い空間があった。
暖炉を見て、火が付いた薪をイメージした。
次に四角いテーブルとイス、ベットに布団、トイレにバスルーム、台所、冷蔵庫、テレビすべて現実化した。
勇作「お腹がすいた、カレーライス」
テーブルにカレーライスが現れた。
勇作は食事をとり、風呂に入り、布団に入るとスッと眠ってしまった。
朝、太陽の光で目が覚めた。
誰もいない。
急に寂しさが込み上げてきた。
千夏とゆうかはどうしてるのかな・・・・
アクア「勇作さん、おはようございます」
勇作「アクアさん、おはようございます」
「あのー、千夏とゆうかはどこですか」
アクアの顔が曇った。
アクア「ゆうかちゃんは無事です。貴方のご両親が引き取られています」
勇作「千夏は?」
アクア「実は奥様は、ゆうかちゃんを守るため、未来人とともに 3階から飛び降りて自殺されました」
「未来人は、瞬間移動しましたが、奥様は亡くなりました」
勇作「じゃあ、千夏はこの世界のどこかに・・・」
アクア「いえ、残念だけどいないわ」
「自殺した人は地獄なの」
勇作「えーっ! それじゃ、千夏は地獄に・・・・」
アクア「掟なの」
勇作「ここからどうすれば地獄に行けるの?」
アクア「ここから地獄に行った人はいません」
勇作「俺はいかなきゃ、お願いです地獄の行き方を教えて下さい」
アクア「実は私もよく知らないの、でもあの方なら」
勇作「あの方って?」
アクア「ゼウス様です」
勇作「えっ、あの神々の神ゼウス・・・さま」
アクア「そう」
「地獄って、聞いた話だけど、とても恐ろしい場所なの・・・暗黒の世界」
「地獄には、人を殺した人の魂、死刑になった人の魂、そして自殺した人の魂が、後悔、恨み、怒りなどの思念が声を上げて飛び回っているらしいの、更に肉がが腐敗した匂い、じめじめした地面でとても長い時間は居られないそうよ、貴方だってまともには居られないわ」
「もう一つ、そこには魔人がいるの魔王の手下よ、定期的に魂を食べに来るの、魔人は獣の姿で鋭い牙と爪で何十匹が群れで襲ってくるの」 「とても敵わないわ、それでも行くの、お願いやめて」
勇作「千夏がいない世界なんて俺には価値がないんだ、絶対に千夏を助け出す」
アクア「わかったわ、私も行くわ」
ゼウス「話は聞いた」
「どうしても行くのだな」
「地獄の門は、湖の中心の底だ」
「アクアは残れ、これは勇作の試練だからの」
勇作「ありがとうございます、行きます」
「もし戻れなくても俺は後悔しません」
ゼウス「うむ、行くがよい」
アクアは地獄の門の前まで勇作を見送った。
アクア「勇作くん頑張って、必ず奥様と戻ってきてね」
勇作「うん、ありがとう、絶対に戻ってくるよ」
勇作は、背中と腰に刀を装備した。
地獄の門がゆっくり開いた。
勇作が中に入ると門が閉じた。
魔人「ほぉー、ここに 3,000 年いたが、この門が開くの初めて見たぜ、オメェー名前何てんだ?」
勇作「勇作だ!」
魔人「ここに何しに来た」
勇作「妻を助けに来た」
魔人「妻? 名前は?」
勇作「千夏だ、どこにいる?」
魔人「あの女かな? ここに珍しく少し光ってたからな」
勇作「それだ、きっとそーだ、どこか教えてくれ」
魔人「お前、ここがどこかわかってるよな?」 「ここにはなぁ、いいやつなんざいねんだよ」
魔人が素早い動きで、勇作の頭めがけて爪を振りかざした。
勇作はとっさに避けたが、爪が肩を掠った。
魔人「ほー、なかなかやるな」
勇作は、2本の刀を抜いた。
勇作「千夏の居場所を教えてくれ」
魔人「俺様に勝ったら教えてやるよ」
勇作「俺はぐずぐずしてられないんだぁー」
魔人が右から爪で襲い掛かってきた。
勇作は、刀で爪を受け止め、もう一本の刀で魔人の心臓を貫いた。
魔人「いてーなオメェー」
「俺たちの心臓は6個あるんだ、なんて教えねぇよ」
勇作「なるほどあと5つだな」
勇作は目を閉じた。
5つの心臓の場所がイメージできた。
勇作が5人になった。
5人の勇作が一斉に魔人の心臓に刀を差し込んだ。
魔人は、ウォーと叫びながら、ドロドロとしたヘドロになった。
勇作「しまったー! 死んじまったー」
「くっそー、千夏っーどこだー!」
一匹の蝙蝠が飛んできた。まるで付いてこいと言ってるように右のほうへ飛んで行った。
勇作は蝙蝠を追った。
地獄の中は、暗闇で何も見えない、あっちこっちで、泣き声、恨み言、後悔、怒りの声が弱々しく聞こえてくる。
人の魂が薄青い炎となって浮遊していた。
地面は、泥濘で歩きにくい、吐き気がしそうな獣の腐敗臭がする。
蝙蝠がここだと言うように旋回している。
下には、弱々しく白く光る人がいた。
勇作「千夏ーっ! 」走った。
勇作は、千夏を抱き起した。
千夏は下を向いたまま「私のせい・・・」と繰り返し泣いていた。
勇作「千夏、俺だ勇作だよ」
その時、後ろから唸り声をあげて走ってくる数体の魔人が見えてきた。
さっきのとは違う、頭の左右に丸まった角、胸に大きな口に長い牙、まるで悪魔だ。
魔人「貴様死ねぇー」爪が空を切り裂く音がした。
勇作は千夏と共に瞬間移動した。
魔人「くっ!」
勇作「エクスプローション!」と叫んだ。
闇の天空から強烈な電撃が、魔人たちを貫いた。
半径 5 キロ程度爆風で吹き飛んだ。
勇作たちは AT フィールドで守られていた。
勇作「千夏」
千夏「あなた誰?」
勇作「勇作だよ、記憶がないのか?」
「俺と一緒にここを出よう」
千夏「駄目よ、私は勇作とゆうかを守れなかったの、だから私はここにいないといけないの」
勇作「そんなことはない!」
「相手が強すぎたんだ、君のせいじゃないんだぁー!」 「ゆうかは生きてるんだぁー」
千夏「でも、私・・・」
勇作は千夏を抱きしめて、キスをした。
勇作「大丈夫だよ、俺がずっと一緒にいるよ」
二人は気を失った。
【天国】
千夏「勇作起きて」
勇作「うっ、うーん」
二人は、勇作がイメージした天国にいた。
勇作「どうして、ここにいるんだろう?」
千夏「うわー、綺麗ーっ」
アクア「お帰りなさい勇作さん」
「初めまして千夏さん」
「私は、女神のアクアです」
「無事に戻られて本当によかったです」
勇作「ありがとうございます、アクア様」
「どうしてここにいるんでしょう」
アクア「あなた方の魂は、清らかで清々しくて、地獄には相応しくないと判断されて、ここに戻されたそうですよ」
勇作「いったい誰の判断なのかな?」
アクア「地獄の魔王からゼウス様に連絡があったようです」
「しかし、間一髪でした、あと少し遅かったら奥様は、魂になって魔人の餌になるところでした」
千夏が勇作に寄り添って手を握った。
ゼウス「勇作よ見事であった」
「汝の魔力スキルはハイレベルに到達した、魔力を思うがままに操ることが出来るはずじゃ」
アクア「千夏さんもよく頑張りましたね」
「私から回復魔法と爆裂魔法のスキルをプレゼントします、えいっ」
「爆裂魔法は、1回で 3/4 の体力を消耗するので、いざという時だけ使ってね、大抵の敵は倒せるわ」
千夏「ありがとうございます!」
ゼウス「君らは、理由はともかくとして、掟を破った」「そこで、とても辛い試練を与えねばならないのじゃ」
勇作「ハイ」
ゼウス「で、君らの試練じゃが」
「今から異世界に転生してもらう」
「そこで、魔王も扱いに手古摺ってる、5人の大罪魔人がおってやりたい放題やっておる」
「その者らを処分して 欲しいのじゃ」
勇作「はい、分かりました」
ゼウス「やつらは手強い、油断するでないぞ」
「それが出来たら、罪は許そう、約束だ」
「恐らく長い年月がかかるであろう」
「その間は二人で幸せを見つけて仲良く暮らすんじゃ」
「でも、あくまで目的は異世界の平和だ、よいか」
勇作「はい、ゼウス様」
ゼウス「頼んだぞ、勇作、千夏」
アクア「お気をつけて」
二人の姿が光と共に消えた。
つづく