ひょんな事から「真名野長者伝説」を知りましたのでご紹介致します。
 
「真名野長者伝説」


玉津姫  

奈良の都の久我大臣に玉津姫という娘がいました。姫は、顔形は整っていたが、顔一面にアザが出来ており、縁遠かった。

 

姫は、アザを治したいと、「三輪明神」のお告げがある事を信じて、「丑の刻参り」をはじめた。

お告げ
ある大雨が降る日の夜、社殿で雨宿りをしていると「豊後の国に、炭焼き小五郎という者がいる。この者と夫婦になれば、末は長者になるであろう」とお告げがあった。

翌年2月、16歳になった姫は、密かに都を抜け出し、豊後の国へと下った。

白髪の老人  
ようやく豊後の国に辿り着いたが、日が暮れていた。


途方に暮れていると、白髪の老人が現れて「そなたが探している小五郎は、よく知っておる。今夜は、わしの家に泊まりなさい。明日会わせてあげよう」とのことで、姫は老人の家に泊まる事になった。


その夜、姫は夢を見た。
豪壮な屋敷に沢山の待女がいて、皆んなで姫を労わった。そして、アザがとれる水があることも教えてくれた。
 

炭焼き小五郎
玉津姫が目覚める。老人に案内された場所は、みすぼらしい小屋だった。


老人が「小五郎はすぐに帰って来るだろう。ここで待っていなさい」と言った途端、どこかに消えてしまった。


しばらくすると、手足が汚れ、ボロボロの着物を着た若者がやって来た。


姫は、「小五郎さん?」と尋ねると、若者は「うん、そうだ」と応えた。


姫は、三輪明神のお告げによって会いに来たこと、老人のことを話した。


小五郎は、「俺は、見かけ通り、貧しい生活だ、とてもあなたを幸せには出来ない」と言った。姫は、必死に小五郎を説得して、一緒に住む事になった。

姫は、家から持って来た、黄金を取り出した。「これで何か買い物をしてきて下さい」と小五郎に手渡した。


小五郎は、不思議に思いながらも食べ物を求め出かけた。しばらくすると、小五郎は手ぶらで帰って来た。


姫が、「何か食べる物は?」と尋ねると小五郎は、「この下の渕に鴨がいたので、あなたにもらった石を投げたけど、ハズレてしまい、鴨に逃げられたんだ」と言った。

姫は呆れて、「これは、ただの石ではなく、黄金という宝なのですよ」というと、
小五郎は笑いながら、「その石なら、炭焼き小屋や窯下の渕に沢山あって、困ってる位だよ」という。


姫は驚き、その渕に連れて行ってもらった。そこには、小五郎の言う通り、黄金がゴロゴロと転がっていた。

姫が、呆気にとられていると、渕の水が渦巻いて、水の底から黄金の亀が浮き上がって来た。


姫は、昨夜夢で見た渕はここでは?と思い、顔を洗ってみた。
すると、醜いアザは、みるみるなくなり、とても美しい顔になった。

小五郎も勧められ、体を洗うと、素晴らしい美男子となった。

その渕の写真です。渕の名は、「金亀ヶ渕」(きんきがふち)



蓮城法師
二人は毎日黄金を拾い集めた。
あっという間に長者になった。
「真名野長者」と呼ばれ、その名は遠方にまで知れ渡った。


当然、沢山の人々が黄金を手に入れようと集まって来た。しかし、その人々が見つけるものはただの石ころばかりだった。
小五郎が行く場所には黄金があった。

小五郎は、真名野長者となってから、信仰を深め、唐の天台山に黄金三万両もの大金を贈った。


欽明天皇の世、天台山より返礼として、百済の僧の蓮城法師に薬師、観音の尊像を持たせて小五郎のもとに派遣した。


小五郎は蓮城法師を迎え、尊像を安置するための寺を建立した。
それが、蓮城寺、内山観音である。

また、小五郎が商いのため津の国、浪速に行った時、伊予松山の高浜沖で遭難し、観音の霊験によって救われた。

小五郎は、お礼に、一夜のうちに御堂を建てた。これが今の四国霊場八十八ヶ所五十二番札所「太山寺」である。
 
内山観音には、千体薬師像なる、見たことがない貴重なものがあります。
 
まだまだ、つづきます。