保健室の前を通り過ぎた時…。ふと、自然とそちらに視線を向けた自分がいた。
そこには、大好きなあなたの姿があった。車椅子に座り、頭から血を流しているあなたの姿が…。
その日は朝からなぜか、あなたによく会う日だった。長い髪を下ろしてまだオフモードのあなたに会い、授業があったから授業中のあなたにも会い、シャトルランの補講があったからそこでもあなたに会い、そして最後は保健室にいるあなたを…。
授業中、いつもの頭痛がして少ししんどかったけどなるべくそのそぶりを見せないように必死になっていたが…。シャトルランの補講の時に、「麻瞳花、あなたなんでいるの?体調大丈夫?」って言われて、やっぱり気がつかれてたか…と、あなたの観察力に少し驚いた。けど、そのあなたが今は怪我をしてそこにいる。
その姿が目に止まった途端、思わずあなたの名前を声に出してしまった。すぐに保健室のドアが閉められ、間も無くして警察と救急車が到着。事態は思ったよりも大事なのかと察してさらに不安がつのる。
どうやら、ソフトボールの授業で生徒が振った金属バットが頭に直撃したそうだ。
私は普段何があってもあまり驚かないたちだ。だが、そこに一緒にいた友達の手を握り、もう1人の体育の先生に抱きついて震えながら涙を流していた。あなたのことが心配…。
幸い、怪我はたいそうなものではないと次の日に聞いた。だが、もし今あなたを失ったらと考えたら私は本当に震えが止まらかった。
私のことを救ってくれた、大切で大好きなあなたがいなくなるなんて…。私、生きる希望を失う。だから、良かった。本当に。あなたが、生きててくれるだけで嬉しい。