今回のブログは、先日観てまいりました

歌舞伎座夜の部の感想です!

 

 

 

 

 

 

六月大歌舞伎 夜の部

 

一、華舞於河賑(はながまうおがわのにぎわい)

  俄獅子(にわかじし)

 

 

 

 

 

 

幕が開くと、

江戸の吉原仲之町に

賑やかな祭囃子が聞こえてきます。

鳶頭の梅吉(梅玉)と鳶頭の松吉(松緑)が

芸者(辰之助)を伴って吉原へ繰り出してきます。

そこへやって来たのが、

鳶頭(歌六、又五郎、錦之助、獅童)、

芸者(萬壽、時蔵、米吉)、

鳶の者(歌昇、萬太郎、種之助、隼人)、

手古舞(梅枝、種太郎、秀乃介、陽喜、夏幹、小川加奈絵)。

一同は華やかに賑やかに踊ってみせるのでした。

 

 

 

今月の歌舞伎座は、いわば“小川家祭り”。

歌舞伎界で最も多い本名といえば「小川」、

ということは、歌舞伎ファンなら

ご存じの方も多いかもしれません。

その、三世中村時蔵丈の血を継いだ小川さんが、

今月の歌舞伎座の舞台を盛り上げているのです。

なかでも、この一幕には

小川家の皆さんが勢ぞろい!

題名さながらに

小川家の面々が顔をそろえ、

花が舞うように賑やかに踊るのです。

大人たちは粋でカッコよく、

子供たちはひたすら愛らしく、

なんともいえぬ幸福感。

23分じゃあ足りません。

最後には「おがわ」と書かれた傘が

舞台いっぱいにいくつも開いて、

小川家の皆さん、おめでとうございます!

という気持ちになりました。

 

 

 

ちなみに「俄(にわか)(仁和賀)」とは、

吉原の三大行事の一つ。

旧暦の8月に芸者や太鼓持ちが仮装をし、

評判の歌舞伎舞踊などを真似ながら練り歩きました。

たしか、大河ドラマ「べらぼう」でも

描かれていましたよね!

歌舞伎の舞台では、

その「俄」の華やかな空気と、

獅子舞を融合させた舞踊となっていて、

ストーリーはほとんどないようなものなのですが、

江戸吉原の賑わいや風情をたっぷりと味わえるのです。

 

 

 

二、通し狂言 盟三五大切

  (かみかけてさんごたいせつ)

 

 

 

 

 

 

夫婦であることを隠す船頭の笹野三五郎

(Aプロ:松也/Bプロ:勘九郎)と

芸者の小万(七之助)は、

三五郎の父が旧主のために必要とする

100両の金を用立てようと画策、

小万の客の浪人・薩摩源五兵衛

(Aプロ:勘九郎/松也)を騙して

金を巻き上げます。

ところが、実は源五兵衛は塩冶家の浪士で、

巻き上げられた100両は、

伯父・富森助右衛門が討入りのために調達した金。

源五兵衛は主君の仇討ちの徒党に加わる大望をもちながらも、

小万に惚れるがゆえに、三五郎の甘言につられて

ついに金を渡してしまいます。

やがて、三五郎と小万に騙されたと知る源五兵衛は、

三五郎・小万の居場所を突き止め、その仲間5人を惨殺。

三五郎・小万はなんとかその場を逃れるのですが、

さて、二人の運命は?

そして、三五郎夫婦が源五兵衛から巻き上げた100両も

実はいわくつきの金で…。

 

 

 

四世鶴屋南北によって

『東海道四谷怪談』の続編として書かれ、

「忠臣蔵」と「五大力(ごだいりき)」の世界が

「綯い交ぜ(ないまぜ)」という手法で結びつけられています。

凄惨な殺しの場を歌舞伎独特の様式美で見せるという、

南北ワールド全開の生世話物です。

ちなみに、「五大力」とは何かというと、

享保・元文年間(1716~40)に流行した

五大力菩薩の信仰。

書状の封じ目に「五大力」と書くと

他人に開封されず無事に届くと、

特に女性たちの間で信じられてきました。

それが転じて、

女性たちが身のまわりの物に五大力と書き、

好いた男性への貞操の証しと

されるようになったのだとか。

このお芝居の小万は、腕に「五大力」と

入れぼくろ(小さな入れ墨)をしているのですが、

これが思わぬ小道具になるのです。

 

 

 

このお芝居、私はこれまでに数回、

さまざまな役者さんで観てきました。

印象に残るのは2008年11月の歌舞伎座公演。

源五兵衛が仁左衛門さん、三五郎を菊五郎さん、

小万は当時時蔵を名乗っていた萬壽さん、

脂の乗ったお三方によるお芝居で、

なかでもにざ様の

恐ろしさと美しさと悲しさが共存する姿に、

ぞっとしつつも酷く感動したことを記憶しています。

 

 

 

さて、今回は源五兵衛と三五郎が

Wキャストということでも話題です。

Aプロは勘九郎さんが源五兵衛、松也さんが三五郎。

 

 

 

 

 

 

 

Bプロはその逆で、松也さんが源五兵衛、

勘九郎さんが三五郎という配役です。

 

 

 

 

私が観たのは、このBプロのほう。

 

 

 

今回は、配役がただ違う、というのではなく、

演出方法にも違いがあるようで、上演時間をみても、

終演がAプロは8時43分、Bプロは8時47分、

Bプロのほうが長くなっています。

二幕目の幕切れ、

殺害事件を起こした源五兵衛が立ち去る雨の場面で、

Aプロは効果音、Bプロは本水を使うところで

この差が生じるのようなのですが、

他にもこまごまと違いがあるようです。

時間とお金が許すなら、両方見比べるのは実に楽しそう!

ちなみに、松也さんは

仁左衛門さんから受けた指導を

忠実にきっちりと守ってのお芝居、

勘九郎さんは独自の演出が

随所にちりばめられているとのこと。

そういえば、コクーン歌舞伎でも

『盟三五大切』、やりましたものね。

 

 

 

で、Bプロを観ての感想を一言でいうと、

若々しい『盟三五大切』でしたねえ。

お話としては、「ありえない」の連続。

コミカルに話が進んだ、と思うと

阿鼻叫喚の殺しの場、

トーンはみるみる陰惨になっていき、

しかし最後はスコーンと抜けたように大団円。

南北らしいジェットコースターストーリーが

若いキャストによって

瑞々しくすっきりと演じられています。

 

 

 

松也さんの源五兵衛は、耐える人。

お坊ちゃま育ちでうぶな男に、

じわりじわりと狂気に灯がともる姿が、

品があると同時に悲しさ、切なさも帯びてよかった。

勘九郎さんバージョンは

メチャクチャ迫力があって怖いらしいけれど。

勘九郎さんの三五郎は、小悪党を絵に描いたような。

ひたすらワルイんだけれど、可愛げがある。

小万との濡れ場は色気たっぷりでドキドキ。

キレのいい台詞、所作もカッコよかった。

そして、二人の芝居を受け止める

小万役の七之助さん

ときに性悪な空気を出しつつも、

根っこは夫に尽くす良い女房、

かつては武家に仕えた女性という、

一人の人物の中のいろいろな顔を

自在に表現していました。

それにしても、源五兵衛と三五郎の演技が

キャストによって違うとなれば、

七之助さんはもちろん、他のお役の皆さんも、

自ずと演技は違ってくるわけで、

そのあたりの見比べも、また、面白そう。

 

 

 

その他の配役は、お先の伊之助を巳之助さん、

芸者菊野を新悟さん、ごろつき勘九郎を亀蔵さん、

家主弥助を彦三郎さん、

三五郎父・了心を権十郎さん、

源五兵衛伯父・富森助右衛門を又五郎さん。

源五兵衛の家来・六七八右衛門

(ろくしちはちえもん、すごい名前だ!)

を演じた歌昇さんには泣かされました。

 

 

 

というわけで、

華やかな舞踊の小川家祭りから、

THE南北ワールド全開の世界と、

まったく違った景色が見られる今月の夜の部。

あらためて、

歌舞伎は引き出しが多いエンタメだと思った次第。

 

 

 

『六月大歌舞伎』@歌舞伎座、

6月25日㈭千穐楽です!

 

 

 

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