これは、各エピソードの「前日譚」という位置付けで、小説版となっています。


フリーレンがアフターファンタジー、つまり、「後日譚」となっているのに対して、事の前…「前日譚」となっている未発表のエピソードを小説化した、という点が興味深くて、楽しく読みました。


「葬送のフリーレン」という物語りの世界観の一つには「静謐」という点とある種の「諦観」という点が挙げられると思います。


ファンタジー特有の、浮世離れした娯楽性の強さが強調されないのは、ひとえに、こういった世界観があるからだと思うのです。


悠久の時を生きる者にとって、「別れ」や「変化」は当然のことながら、度々経験するわけで、いちいち感情移入することもなく、淡々と、通り過ぎてゆく…当たり前のことのように。主にフリーレの飄々とした雰囲気や、無愛想さ、切り替えの早さ、諦めの良さ、物分かりの良さが、ある種の「諦観」や「無常」となって、物語りの基幹を成していることに気づくと、なるほど、単なるファンタジーではないなぁ…と思うわけです。


大人が魅せられるのも納得です。


小説版のこの作品は、その世界観を壊すことなく、各キャラクターをより深く知るには、とても有効かな、と思いました。



個人的には、最後の「葬送」という章が良かったです。(短編集になっています)


馬車に乗り込む仲間が、1人、また1人と途中下車してゆく…ふと、気がつくとフリーレンは1人になってしまうかもしれない…と気づく。

(エルフより長生きする種族はいないから)


でも、窓から先を除いてみると…

そこには、馬車を待つ、新たな旅人の姿が…。


誰かが降りても、また、新たな人が乗り込んでくる…そして、また降りてゆく…


そんな繰り返しを見続けるフリーレンに、ヒンメルはこう問います。

「ひとりは寂しくないかい?」と。


この一言に、ヒンメルの優しい愛情が溢れています。自分の死後も、長く長く生き続けるフリーレンを想い、せめても楽しい思い出を残すことで、その長い旅路の孤独を癒そうとするのです。



フリーレンの物語りが、年齢層の高い読者にも指示されるのは、普遍的なテーマである「無常」と「愛」とを謳っているからかもしれません。






「記憶」を辿る旅ではあっても、フリーレンが生きている限り、ヒンメル達の想いも絶えることはないのでしょう。旅の果てに、人間の愛を知ることができることを願ってるよ、フリーレン♡



余談ですが…

長寿の動物種は心拍数が低いといわれます。

フリーレンに、心電図をつけてみたい、血圧と脈拍数を測って、ついでに血液検査をしたら、長寿に関する貴重な発見があるかもしれない…なんならDNA🧬を解析してみたい…と思ってしまう、最近のワタシです。