これは…

考えさせられる…


最低賃金で、他人の家の汚れたトイレや浴室を日に4時間も5時間も磨き続ける仕事…


これって、自分をどんなふうに考えたらいい?


もちろん、清掃の仕事が好きでやりがいを感じているなら、OKだ。だけど、メイドである自分を、あたかも誰もいないかのように振る舞う家主が、やって当然よ、なんなら、自分は仕事を与えてあげてるのよ、的な態度であったなら、どうだろう…

そこに何の思いやりもなく、侮蔑の眼差しだけがあったなら…多分、自己肯定感は著しく下がるに違いない。ステファニー(この物語りの著者であり、主人公)は「幽霊になったよう」と書いている。



ホームレスシェルターに入ったり、フードスタンプをもらったり、カビだらけのアパートで暮らしたり…好きでそうなったわけではない。

ただ少し、タイミングが悪かった。

ボタンの掛け違いのように、一度生じたズレはなかなか元に戻せない。気付くまでに時間がかかり、気付いてもやり直すには根気がいる。



注意深く進んでいても、誰にでもちょっとしたミスはあるものだ。そして、そのことが思わぬ破綻へと繋がることもある。


この物語りは実話である。

そのことが驚きと同時に、強いメッセージを発していると思う。


何よりも、自分の全てをかけて守り抜いた最愛の娘であるミアに、この物語りは捧げられるべきだろう。愛の全てが詰まった、この作品は彼女にとって宝物になるはずだ。


この作品は2つのことを教えてくれる。

ひとつめは…「貧困」は誰の隣にもあるということ。パンデミックを、或いはもっと遡れば、リーマンショックを経験したならわかるだろう。安泰だと思われた世界も、簡単に崩壊するのだ。そんな社会の出来事とは別に、人は、病やアクシデントで簡単に生活の術を失うこともある。だから、ステファニーの生きたこの数年の過酷な日々は、決して特別ではない。誰にでも起こり得る。

二つめは…「チャンス」は誰にでもある、こと。

諦めさえしなければ。しかし、容易くはない。それはこの物語りを読めばわかる。

不屈の精神と、強い魂がなければ、底の底からは這い上がれない。けれど、出来るのも確かだと、ステファニーは証明してくれる。



不確かな明日の不安と絶望…それと対局の大きな夢と強い希望…この作品には相反する2つの要素が存在し、暗から明へと、美しい対比をみせている。


それは…1人の女性の成長の記録でもある。



肉親や家族からは得られなかった愛を、大きな夢で満たし、自分を叱咤激励しながら、やがて愛を掴み取った、ステファニーの苦闘と昇華の物語り。






元々は、Netflixのドラマから原作へと移りました。










ドラマはドラマの構成があるようで、原作とは少し筋立てが違います…が、これはこれで良かったです。




現在、ステファニーはモンタナで夫と2人の娘さん達と暮らしているようです。その様子が彼女のInstagramで更新されています。明るく笑っている彼女…執筆活動と並行して、シングルマザーの支援の活動も広く行っているとか。


ステファニー…

凄い人…本当に。

そして…良かったね…本当に良かった。

頑張ったね!ステファニー!!