久しぶりに恩田陸さんを読んだ。

やっぱり、いいなぁ…と改めて思う。


決して難しい言葉を使ったり、凝った表現をてんこ盛りにしているわけでもないのに、その情景がすっと入ってくる。


浮かび上がる景色には、風や雨や、音や匂いや、色…そんなものが織り込まれていて、肌で感じることができるようだ。


一番はじめに好きになった作品は「夜のピクニック」だった。もう、本当に何十年も前の作品だ。

あの時に感じた、清々しさは、今も健在だと思う。

そして、夜のピクニックの題材にもなった「歩く会」を、息子が経験したことで、勝手ながら、縁のある作家さんだと思っている。母校での公演は、皆んなが誇りに思ったことだろう。高校3年間で、夜通し歩く伝統行事である「歩く会」は、あの作品にあるように、一人一人の胸に、深く刻まれる思い出となる。この先もずっと忘れない、忘れられない、一コマだろう。


今回は、「ゴシック調」ということで…そして、本の装丁が美しくて、思わず手にとった。

ゴシックものが、大好きなのよね…

そして、表紙の絵も好みだった…


意外とそういう本の出会いも多いもので。


怪しげな雰囲気と、訳ありな登場人物、そして謎。

短編集なのだが、そのどれもが、あっという結末になるのも、マジックのようだ。


リセシリーズという、一連の作品の外伝的な位置付けらしい。このシリーズを一気に読んで見たいと思う。


いいものは、いい。

凄い人は、やっぱり凄い。


本を読むことは、異世界の体験でもあり、旅のようでもあり、何より、作家との出会いでもあると、改めて思い出させてくれた一冊でした。


文学とはなにか

小説とはなにか

作家とはなにか


そして、心に響く本物とはなにか


彼女の作品は、心の中に長く長く住むことのできる、素晴らしい芸術だと思います。