老騎士バルド・ローエンがとにかくカッコいい。


そして、バルドの愛馬、スタボロス。


始まりはこの老騎士と老馬の死出の旅だった。

闘いに明け暮れた騎士としての人生…老いを感じた1人と1頭が、人生の残りの時間を自由に過ごそうと旅に出る。


その先々で出会う様々な出来事や、トラブルや、人間…気づくと、何の因果か1人と1頭が、5人と2頭になっていた…。


バルドを慕って集った人々。

ゴドン、ジュルチャガ、ヴェン改めカーズ、ドリアテッサ…そして、愛馬スタボロス、ユエイタン、ドリアテッサの愛馬クリルヅーカ。


旅を続ける中で出会った5人は、やがて固い絆で結ばれてゆく。。。


「食」のシーンが多いのも特徴的だ。

野営をしながらの料理、時折立ち寄る街での食事…味覚のこだわりが沢山あって、生きることと、食べることの健全な繋がりを感じる。


それぞれが抱える人生の中での記憶、目標、夢、しがらみ、後悔…バルドの大きくて温かい眼差しが、それらを優しく包み込み、悩む人々を、解放し癒し成長させてゆく。


バルドのような人物に出会えた奇跡…

きっと、誰もが、この強く逞しく、優しい老騎士の虜になるに違いない。


世界と自分とを照らす鏡…

そんな鏡を見せてくれるバルドとの旅。

鏡を通して見た、世界と自分に向き合うことで感じる様々な想いが丁寧に描かれていて、シンプルに生きることの魔法のような素晴らしさを教えてくれる。。。


自然、時間、食、動物、そして、自分を鍛えること…それらと素朴に、でも、深く繋がりながら生きてゆく…その中で見えてくる澄んだ世界を、私も体験してみたいと思う。


忙しさに振り回される日々、情報が溢れ、雑音が溢れ、目まぐるしく変わる景色の中で、バルドの周囲に漂う、清らかで厳かな空気をどうしたら体験できるのか。



澄んだ目と心を持ちたい、シンプルに生きたい、丁寧に暮らしたい、自然を慈しみたい…



バルドの存在が、大きな安堵感を与えてくれる。

「衰えてからが意外と長く、且つ素晴らしい」と教えてもらった気がする。


この年齢になってからわかる味わい…

元気をもらえる物語りだ。


続く旅が楽しみだ。