UNISON RESEARCH Sinfonia 真空管プリメインアンプ 2006年 イタリア ¥640,000
歓喜の歌
燃えるように温度感が高く、情熱的サウンド、エモーショナルな感情が唸りを上げぶつかってくる。
迸るようなパッション、飛び散る汗、アップリフティングなフィーリング、濃密な色彩感、
血の通った暖かい表現はきわめて扇情的であり、歌姫が熱っぽく訴えかけてくる。
豊満で肉感的な低音を朗々と奏でる。昂った感情が一気に高みへと駆け上がり、
精神を鼓舞するような強い高揚感をもたらす。可愛らしい瀟洒な姿からは考えられない
物凄い情熱的雰囲気で、爆発的な感情で空気を震わせる、圧巻のプレイバックである!
歯切れのいいトランジェントのよさ、猛々しいダイナミズムの表現も迫力抜群である。
夢の世界を連想させる快い美音は芸術性がきわめて高く、母性的な温もりと優しさがあり、
個性豊かなもので魅惑的な表現なのだが、いささか楽天的過ぎて厳格さや緊張感には
乏しいとも云える。だが、この音に惚れてしまったら最後、虜になってしまう。
蠱惑的な音色に心臓をワシ掴みにされる。これほど大きな感動を覚えた事はほとんどない。
ドラムスは誇張気味なくらいのワイルドさで興奮をもたらすが、ハジケるような弾力のある
リズム感はすこし切れが悪くなる。緩みのない引き締まった低音が望ましく思えたのだが、
ラテン的音作りの為の音響マジックだろう。この音は創成期KRELLの記憶を強く喚起するものだ!
音が混ざり合い、混然一体となり音楽の躍動を高らかに歌う。分離感を際立てるものではない。
とにかくノリがよく、音楽を聴く愉しさを思い起こさせてくれる"快楽的な音"なのである!
低域が若干緩く、細部が甘くなるのを除けばハイファイ的な音の見地においても及第点である。
UNISON RESEARCH Sinfoniaのサウンドは特段といっていいほど非常に濃厚なものだが、
KT88/6550シングルエンド・パラレル/ウルトラリニア(三極管接続)の出力段は高域のピュアな
透明感を獲得した。逞しいドライブ力もこの規模の管球機としては高いものといえるし、
どっしりとした盤石感がことのほか頼もしい。B&W 800D/JBL S9800も十分駆動できる。
電流供給能力も十分なものをそなえるが、ピアノは些か厳しく、ソプラノの合唱でハーモニーが
重なる部分では声量のない歌手が精一杯声を張り上げるような苦しさがみられた。
バスドラムの重低音では時折型崩れを起す。ユニゾンリサーチでは真空管アンプの
キーデバイスとなるトランスにスイス製高純度リッツ線の巻き線を使っている。
同社ではSMT845など初期製品を除いて出力段はセルフバイアス式でバイアスは深く
出力管の動作領域の限界まで掛かっている。前段のドライブ能力が高い事も相まって
オーバーロードには強く、高いパワーマージンを備えた設計である。OCTAVEでは
音が崩れるような過負荷がかかるとサーキットプロテクションで強制的にシャットダウンする
入念な保護回路をそなえているが、Sinfoniaは厳しいソースにおいて低音部が崩れながらも
動作し続ける仕様であるため、過負荷連続運転に注意して丁寧な取り扱いを心がけたい。
初期モデルでは出力管の寿命が短い上に動作中に寿命となるとボン!という大きな音と
共にヒューズが飛び、抵抗が焼けてSinfoniaがほぼ100%故障する。2000時間程度での
早めの出力管交換、サーキュレーターによる強制空冷。頻繁な電源のオン・オフを避ける事、
具体的には電源の再投入は真空管が常温に戻ってから。などの使いこなしを実行する。
サービスエンジニア「ええ、ユニゾンの故障は多いですね、真空管が寿命になった時に
抵抗も焼けてしまうんですよ」UNISON RESEARCHは故障が多いとされるが、
こうした使いこなしの努力もしてみてほしい。未確認だが、宿痾(しゅくあ・持病の事)
対策は旧代理店のエレクトリでリペアーの機会があるときに実施してくれるそうだ。
暖気時間は動的ウォーミング・アップで二時間以上かかる。試聴判断は慎重を要する。
単に個性や色艶が強いだけには留まらず、高い芸術性、バランスや質感に昇華されている。
付属のリモコンで操作可能なのはボリュームとセレクターのみであるようだ。
CHUNGHOP L102EにてOCTAVEと本モデルのリモコンをラーニングが出来た。
操作性も大幅に高まるしお勧めである。空中でリモコン同士を至近距離で向かい
合わせる。インジケーターが点滅してもすぐボタンを離さない、上手く動かなかったら
何度でも繰り返しトライして欲しい。このリモコンでかならず学習できる。(2019/4/1)
マッキンの60kg級のアンプのような重厚長大で分厚い低域を誇る製品と比較すると
雄大なスケール感などでSinfoniaはかなり格下感が出てしまうので、なにに重きを置かれるのか、
それによって評価が分かれる機種かも知れません。大型ハイパワーアンプを持っている方は
是非実際に聴いてみて良かったら買ってみて下さい。
CD、AV、Tuner、AUX 出力27W+27W インピーダンス4Ω/8Ω(バイワイヤリング対応)
サブウーファー出力端子1系統(アクティブ用) 周波数特性20-30kHz
仕様真空管KT88(SOVTEK)×4 12AU7A(EH)×2 12AX7A(EH)×2
W440×D415×H205mm(含突起部) 重量25.0kg リモコン付き (VR・SELECTORのみ)
UNISON Sinfoniaは動作中の出力管の寿命でほぼ95%故障。カソード抵抗が焼けて
コンデンサーがパンクする。使い方は慎重を要する。出力管は2000時間で定期的に交換。
ゲッター減、真空度が下がり頭が白くなったもの、ピーという高周波ノイズや
ハムノイズ、ガサガサノイズが出たものは寿命のサインなので早めに交換する。
サーキュレーターで強制空冷して球の寿命を延ばす。電源を入れたら30分は切らない。
電源を切ったら球が常温に戻るまで再投入を待つ。経過時間は数取り器で計測する。
このアンプの故障原因は出力管6550/KT88の寿命がほっとんど。もうほとんど。
出力管が死ぬ際にボンという大きな音を出して抵抗を焼損したり、キャパシタが液漏れする。
異常を感じたらすぐ電源を切って修理に出す。ここでなるべく再度電源を入れてはいけない。
基盤が丸焦げになって基板交換で修理代が20万位になってしまうことがある。
異常の場合に限るが意外にも出力管は1本ダメになる事もあれば、2本、4本全部
ダメになる場合もある。当然電源入れたまま外出したり寝落ちしたりと目を離してはいけない。
オーバーロードの保護回路はなくアンプの能力では耐えられない過大な出力がある場合は
まずヒューズが飛ぶが、出力管に過大に電流が流れ過ぎてしまう場合があり、
代理店で電流が流れ過ぎない様に本体を調整してもらえる。38cmの
ダブルウーファーであまり大音量を流したりしない方が良い。過度な負荷(大音量など)を
掛けると真空管の痛みが早くなるし、負荷が掛かり過ぎて真空管の消耗が急激に進んだ
り本体が壊れる可能性もある。