Re:05〜恐怖の元旦ブレーキ編1〜 | Memory and Experience ~Cinquecento syndrome~

Memory and Experience ~Cinquecento syndrome~

○○○ 71' FIAT500との生活○○○
MEXが綴る旧FIAT500との悲喜こもごもな日々

少なからずあったトラブル。

幾度となく立ち向かった記憶。

そう、心に刻み込まれたそれは、思い出として鮮明に甦るのである・・・(笑)。


というワケで、本人はモ~レツに必死なので、忘れようにも忘れるはずも無く、時にそれは、その場の空気、匂いまでも残る程、鮮明な記憶として頭の中に残っているのであります。

そしてそれをこのような形で、恥を忍んで(?)ネタにしている次第であります。


『チンクェチェント物語り/リタ~ンズ』

第5章(2011→2014改訂版)

~Problema generando speciale編~

(トラブル スペシャル編)


あれは2008年の元日だった。

(まさに新年早々初日のことなのです。どーしたって忘れるワケがないのです!)

広告によると、新年早々、早朝から開いているという、奇特なホームセンターがあるとのことで、一路、千葉県内にあるそこへと行こうと思い立ったのだ。

そもそも年末忙しく、買い物へ出かけることができなかったために、新年早々買い出しをしようという魂胆である。

「道は空いているだろうから、片道30分かな。」

先ずチョークを引いて、スターターレバーに手を掛けてチンクのエンジンをかけた。


『恐怖の元旦ブレーキ~走馬灯の真実~Part1』

"喜びの朝"


2~3分、軽く暖気運転をして、ゆっくりと走り出す。

自宅周辺の裏道を走りながら、空冷エンジンとミッションをゆっくりと暖めてやる。

それがいつのもやり方である。

その日は風も特に強くはなく、空は快晴。

気温もいつもよりは暖かめの、とても穏やかな元日の朝である。

私はセーターの上に革ジャンを着込んで運転していた。

フロントガラス越しに降り注ぐ朝日と、開け放ったキャンバストップがから入る冷たい風。

吐く息は白いが、新年に相応しく、きりっと引き締まる感じが心地よい。

エンジンも暖まり、とても上機嫌である。

空冷エンジンのチンクは、気温の高い夏場よりも、秋~春にかけての季節に、エンジンが暖まった状態が一番調子いいのである。

『ブリリリィィーーーー』

と、好調の空冷エンジンが奏でる、独特の乾いた滑らかな排気音が、静かな朝の街に響く。

「もっと、もっと走ろうよ!」と催促しているようでもあり、ステアリング越しに心をくすぐるのだ。

運転の腕はともかくとして、一体感とはこういうことかと思える瞬間でもある。

朝日を浴びながら、午前9時前、千葉県内に入り、行徳方面へチンクを向けた。

案の定、元日の朝は交通量はほとんどなく、走るのにもストレスが無く快適である。

それでも信号があるのは仕方がないことであり、それが赤になったのでブレーキを踏んだ。

『ギュムム~』

これがチンクのブレーキの踏み方の基本。

チンクのブレーキは4輪ともドラムブレーキである。

ブレーキペダルを踏む力の加減が、そのままブレーキングの強さに直結する脚力ブレーキなのだ。

右足に伝わるペダルからの反発力がブレーキの効き具合を伝えてくるため、力の加減がわかりやすい。

現代のブレーキと比べるとかなりチープであるが、小型軽量のチンクには必要にして十分であり、これで不足を感じたことはない。

しかし、今朝は何かが違った。

「ん?・・・なんだ?」

右足でペダルを踏み込む強さと、ブレーキの効き具合に若干の違和感がある。

右足に伝わる反発力が、「いつもと違う。」と訴えてくるのだ。

いきなり来るトラブルは避けようも無いが、全てのトラブルに於いてその予兆がない訳ではない。

それはさすがに10年近く、チンクと共に過ごしてきたので学習したことである。

従って、こういう感覚に襲われた時は要注意なのである。

「今度○○ガレージへ行った時に、ブレーキシューをみて貰おうかなぁ。」

私のチンクのブレーキシューは、少し柔らかめの物が付いている。

○○ガレージのSさんのお勧めであり、ソフトな感じだがよく効くので有り難い。

ただし、減りも若干早いために、定期的に点検・交換作業が必要になるのだ。

「でも、シューが減るにしてはまだちょっと早いよなぁ、またブレーキシリンダーのブーツでもパンクしたのかな?」

各ドラムに付いているブレーキシリンダーのオイルブーツは、チンクのウィークポイントでもある。

急ブレーキ等で、ペダルを『ドン』と踏んでしまうと、オイルブーツがパンクすることが多いそうだ。

パンクしてしまうと、当然ながらブレーキフルードが漏れてしまい、最悪はブレーキが効かなくなる恐れがあるのだ。

実際、過去にそれでブーツをパンクさせてしまったことがあり、その時はブレーキが効かなくなることはなかったが、それ以来ブレーキペダルの踏み込み方と、フロントのトランクフード内にある、リザーバータンク内のブレーキフルードの減りには気を遣っている。

ブーツのパンクは、ホイールを付けた状態では気付きにくいが、ブレーキフルードが減り始めるのですぐにわかるのだ。

しかし、最近急ブレーキを踏んだ記憶も無く、つい先日リザーバータンクを見た際には、特にフルードの減りは見受けられなかったことがいささか気がかりではある。

それに、効きが幾分弱い感じがするくらいで、止まれないとかそういう危機的状況にあるわけではない。

とは言え、まぁ心構えは必要なのである。

「ブーツはゴム製だから劣化して割れたのかな?まぁ、スピードを控えめにして、車間距離を十分とって行こう。」

信号が青に変わりまた走り始める。

『ブリリリィィーーー、ブリン、ブリリリィィーーー』

シフトアップをしながら、

「あと12~13分で着くかな。」

などと考えていたのだった。


つづく


チンク乗りとしての心構えは正しかった。

だが、現実は・・・。


次回

トラウマ1号事件”炎上の恐怖”から8年以上。

ついに襲い来るトラウマ2号事件発生!


『恐怖の元旦ブレーキ~走馬灯の真実~Part2』

"TAXI vs 力こぶ"


2008年1月1日、恐怖の大王はやって来たのだ。

最後の対抗手段は・・・力こぶなのだ。


by MEX