マイホームを手に入れた。

 

その後、あららんは幸せに暮らしましたとさ、

めでたしめでたし、となるにはまだほど遠かった。

 

さらに続きがあるので、語らせていただく。

 

さて、新居の鍵をもらい、

あとは入居へ向け準備を進めるだけとなった。

 

借りていたスタジオフラットは家具付きで、何も自前の家具を持ち合わせていなかったので、

庶民の味方、IKEAまで足を運んでショールームでほしいものを吟味し、

新居に必要な家具、その他小物などをまとめてオンラインで発注した。

注文が殺到している時期だったようで、

配達日が注文から約1か月後、新居への入居日数日前と、

かなりギリギリ。

でもとりあえずベッドが入居前には届くということで安心した。

 

ところが、注文してから2週間くらい経った頃であろうか、

IKEAから「ご注文の配達に関するアップデート」という件名でメールが届いた。

何??アップデートって・・・ 嫌な予感が体中を駆け巡った。

メールを開封すると、

注文品の中に含まれていた、どーでもいい小物の入荷が遅れているので、

それに合わせてすべての注文品の配達日が元の予定日の1週間後になった、という通知だった。

ええええーーー、それってその小物のために、ベッドが入居日前に届かないってこと???

ぎゃーーーー!ゲッソリゲッソリゲッソリ

 

ちょうど週末旅行でヴェネチアに遊びに行っていた時の朝のできごとである。

大パニックでヴェネチアから国際電話でIKEAのカスタマーサービスセンターに電話して、

ベッドが予定通り届かないと寝るところがない!

私をフローリングの硬い床の上に寝かせるつもりか、どうにかしてくれと涙ながらに訴え続けた。

さすがに相手も、冷たい木の床の上に寝るのはかわいそうと思ってくれたのか、

わかった、なんとかしてあげると、手を尽くしてくれた。

そしておかげさまで、ベッドフレームと、マットレスだけは

別ルートで先に送ってもらえることになった。

ほっダッシュ

あまりのストレスであやうく「ヴェニスに死す」ところであったが、救われた。

 

そして配達日。

休みを取って新居に赴き、待機する私のもとに、

ベッドフレームと、なぜかマットレスが2つ届いた。。。

さすがにおまけでマットレスをもう一つもらってもどうしてよいのやらわからない。

一つはそのまま持って帰ってほしいと配達の人にお願いすると、

それはできない、カスタマーサービスに連絡をしてくれと言われた。

なんでそういう融通も利かないのかと、あきれたが、

ここはイギリスだから仕方ないと諦めた。

またカスタマーサービスセンターに電話である。

 

そのおまけのマットレスは、私の新居で数日を過ごした後、

無事に引き取られていった。

 

引っ越し当日にも、案の定、トラブルに見舞われた。

頼んだ引っ越し業者の到着が1時間以上も遅れたのだ。

私が借りていたスタジオフラットの周辺は朝9時以降は駐禁となっており、

だからわざわざ8時に指定したというのに、業者が到着したときにはすでに9時を回っていた。

周りが駐禁だらけなんだけど、どこに止めればいいのかなとドライバーから電話が入ったが、

知らんがな、勝手に探してくれハッと伝えた。(まあそれをオブラートで包んだ感じでだけど。)

結局スタジオフラットからは見えない、かなり離れたところに駐車したらしい。

台車で何往復もしてえっちらおっちら荷物を運んでいた。

 

業者の大遅刻でいきなり出鼻をくじかれ、

退去手続き等、結構タイトに組んでいたその日のスケジュールがずれこんで

残り一日、走りまわされる羽目になった。

 

長い一日であった。

やるべきことを全て片付け、夕方、正真正銘、新居への入居が完了したときは

ぐったりし過ぎていて、これでとうとう、という感慨に浸るのも忘れていたほどであった。

 

その晩は、当時まだ付き合っていた、

イギリス人の有言不実行男もしくは優柔不断男の、通称「ゆふ男」が、

入居祝いをしようと、仕事帰りに夕飯を調達して訪ねてきてくれたのだが

ベジタリアンの彼は、スーパーでベジタブル寿司セットを二人分とサラダを買ってきた。

なぜ私の分までベジタリアン用なのかと突っ込みたかったが、そこはぐっとこらえた。

生まれて初めて食べるベジタブル寿司セットは、とてつもなくまずかった。

そして何より、泡でかんぱーい、お疲れさーん!と行きたいところだったのに

お酒はなるべく飲まないほうがいいと思っている堅物の彼が買ってきてくれたのは、ジュースだった。

ジュースで乾杯とはしけしけ中のしけしけである。

おーーーーい、入居祝いの時くらい、ちょっとはめ外して楽しくいこうぜー、思ったが、

いかんいかん、その気遣いに感謝せねばと、またしても言葉を飲んだ。


食事が終わった後、彼は私の新たなマイホームを隅々まで嘗め回すようにチェックし、

あーだこーだと私には不要な意見やアドバイスを述べて、帰って行った。

(その後3か月後にお別れしております)

 

そしてマイホーム入居初日の夜は更けた。