5-days原田の天本です。前回に引き続き読解力のPISA2022の結果概要(日本)を紹介しましょう。
◆読解力の定義
自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと。
<測定する能力>
「①情報を探し出す」「②理解する」「③評価し、熟考する」
〇これまでの経緯(読解力)
□日本の国際順位
2000年 8位
2003年 14位
2006年 15位
2009年 8位
2012位 4位
2015年 8位
2018年 15位
2022年 3位
〇測定するのは社会で生きていくために必要な言語能力で、国語の学力より幅広いとされる。数学や科学の問題の理解でも読解力は試され、学びの基礎となる力といえる。
日本の読解力は03年調査で8位から14位に転落し「PISAショック」と呼ばれ文部科学省が全国学力テストの復活や学習内容を増やすなど「脱ゆとり教育」を本格化する契機になった。
文部科学省は「脱ゆとり教育」を進めて順位を回復してきたが、18年調査で再び急落した。スマートフォンやSNSの普及で長文に触れる機会が減ったことなどが要因とされた。
○読解力の平均得点(516点)は、OECD加盟国中2位(順位の範囲:1-6位)。
前回2018年調査(504 点)から有意に上昇し、前々回2015年調査(516点)と同水準。
○OECD平均は平均得点の⾧期トレンドが下降しているが、日本は平坦型(平均得点のトレンドに統計的に有意な変化がない)。
○日本は習熟度レベル1以下(相当に厳しい学力レベル)の低得点層の割合が前回調査に比べて有意に減少している。
○前回2018年調査では、ある商品について、販売元の企業とオンライン雑誌という異なる立場から発信された複数の課題文から必要な情報を探し出したり、それぞれの意図を考えながら、主張や情報の質と信ぴょう性を評価した上で、自分がどう対処するかを説明したりする大問において正答率がOECD平均より低い状況が見られた。
○今回調査では、この大問の正答率が全体的に微増する傾向が見られた。
〇文部科学省…「PISA(読解力)の結果分析と改善の方向(要旨)」
※上記の資料は、平成17年1月のものだが読解力について詳細に述べているので紹介します。
[ねらい]
義務教育終了段階にある生徒が、文章のような「連続型テキスト」及び図表のような「非連続型テキスト」を幅広く読み、これらを広く学校内外の様々な状況に関連付けて、組み立て、展開し、意味を理解することをどの程度行えるかをみる。
[特徴]
1.理解するだけではない。
⇒テキストに書かれた情報を理解するだけでなく、「解釈」し、「熟考」することを含んでいる。
2.読むだけではない。
⇒テキストを単に読むだけでなく、テキストを利用したり、テキストに基づいて自分の意見を論じたりすることが求められている。
3.内容だけではない
⇒テキストの内容だけでなく、構造・形式や表現法も、評価すべき対象となる。
4.文章だけではない。
⇒テキストには、文学的文章や説明的文章などの「連続型テキスト」だけでなく、図、グラフ、表などの「非連続型テキスト」を含んでいる。
◇今後の改善の方向
教科国語を中心としつつ、各教科や総合的な学習の時間等を通じて、次のような方向で、改善の取組を行う必要がある。
1.テキストを理解・評価しながら読む力を高めること
読む力を高めるためには、テキストを肯定的にとらえて理解する(「情報の取り出し」)だけでなく、テキストの内容や筆者の意図などを「解釈」することが必要である。さらに、そのテキストについて、内容、形式や表現、信頼性や客観性、引用や数値の正確性、論理的な思考の確かさなどを「理解・評価」したり、自分の知識や経験と関連づけて建設的に批判したりするような読み(クリティカル・リーディング)を充実することが必要である。
特に授業の中では、なんのためにそのテキストを読むのか、読むことによってどういうことを目指すのかといった目的を明確にした指導が重要である。
2.テキストに基づいて自分の考えを書く力を高めること
読解に当たっては、単に読んで理解するだけでなく、テキストを利用して自分の考えを書くことが求められる。テキストの内容を要約・紹介したり、再構成したり、自分の知識や経験と関連付け意味付けたり、自分の意見を書いたり、論じさせたりする機会を設けることが重要である。
特に、「自由記述(論述)」に不慣れな生徒には、授業のまとめのときに、自分の考えを簡潔に書かせるなど日常的な授業の工夫が重要である。
3.様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実すること。
読むことについては、朝の読書の推進を含め、読書活動を推進すること。その際、文学的文章だけでなく、新聞や科学雑誌などを含め、幅広い範疇の読み物に親しめるよう、ガイダンスを充実することが求められる。
授業の中で、自分の意見を述べたり、書いたりする機会を充実すること。その際、自分の経験や心情を叙述するだけでなく、目的や条件を明確にして自分なりの考えを述べたり、論理的・説明的な文章に対する自分なりの意見を書いたりするなどの機会を意図的に作っていくことも大切である。
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