つづきです
それから数日。
智は課題とバイトが忙しいとかで、家にいない日が続いていた。
…実際に家帰っていないわけではなく、深夜に戻っては朝早く出かけてしまっているらしい。
忙しい智の負担になりたくなくて、声を聞きたい衝動に駆られながらも、そこはメッセージで我慢する。
それも…悩んで、彼が返事に困らないような、短くて当たり障りのない文章。
”昼飯何食べた?" とかそんな…
オレが本当に言いたいこととは全然関係ないことを送信する。
…だって、いつ会える?なんて、重いセリフ引くでしょ。
そんなの、とても言えないもの。
しばらくすると、向こうも休憩時間なのか
スマホの画面に智の名前が表示された。
慌ててそれに触れる。
”かずに会いたいなぁ"
もう…こういうとこ敵わないわ。
必死に気持ちを誤魔化そうとしていたオレがバカみたいじゃないよ。
まぁ、同じくらいの重さなら…別に大丈夫よね?お互い様ってことで。
"オレも会いたいなぁ"
さすがに " いつ?" とは聞けなかったけど。
智に会いたい気持ちを隠す必要はないんだと思うと、少しだけ心が軽くなった。
「カズ、何ニヤニヤしてんだよ?」
「ニヤニヤって////」
「ここんとこ…智忙しいみたいだな」
「うん。そうみたいね。
あ、その節はお世話になりました////」
潤くんは、智の気持ちもオレの気持ちも、結構前から気づいていたという。
些細なことにも気づく彼にとっては、どうにも分かりやす過ぎたらしい。
智のことが好きなのに変に強がってばかりのオレと、オレを好きなくせにいつまでも煮え切らない智に、いい加減腹が立ったのだとか。
「別に…お前たちがくっつけば、俺のイライラが解消されんだよ」なんて。
一見ぶっきらぼうにも見える言葉の奥に、優しい光が灯っていること、ちゃんと気づいてるよ?
「ふふ…ありがとうね?」
「だから、お前らのためじゃ////」
「はいはい、オレたちのためじゃないのよね」
顔を見合わせ、笑う。
オレの…
オレたちの絶対的な味方。
…本当にあなたがいてくれてよかったと
オレは心からそう思った。
「そういえば…」
「ん?」
「智のやつ、バイト代で布団を買い替えるなんて言い出してさ」
「!!? ゴホッゲホッ!!」
思わず咳き込んでしまい
大丈夫か?と潤くんに心配された。
「全く…智は一度言い出したら聞かないからな。『押入れいっぱいなのに荷物増やして』って、母さん怒ってたよ。
って、どうした和?顔真っ赤だぞ?」
…その方向なんだ笑
////おばさんごめんね と
オレは、心の中でひたすら謝るのだった。
つづく
miu