つづきです
二宮…くんの手を取り、歩き出したものの。
せっかくの誕生日。
どこかで食事でも と思ったが、彼の食の好みは難しかった。生物は苦手だし、高級食材を食べるとお腹をこわすという。
俺の知る美味い店は、大概が寿司屋や高級店ばかりで…
何より、予約もないこの時間からでは難しかった。
結局、そう遠くないこともあり
俺のマンションでコンビニで買った弁当と小さなケーキで、彼の誕生日を祝うことになった。
「なんか…ショボいよな。悪い」
ロウソクの立たないケーキを前に
申し訳なさそうに二宮くんに視線を向けた。
「ううん、こっちの方がいい。ありがとう」
「そう?二宮…くんが良ければ、俺は全然構わないけど////」
「カズでいいよ。下の名前、和也だから」
「じゃあ、俺は潤で」
「ふふ、潤くん。ありがと」
「あ、そうだ。これ着てよ。
ってか…もらって?」
俺は、買ったまま、まだ袖を通していなかったTシャツをカズに手渡した。
「ちょっとデカいかな?でも…似合いそう」
「いや、高いんじゃない?もらえないよ」
「ってか…もう何枚かプレゼントするから。
誕生日プレゼント。
お前、そのTシャツも首とか脇とか開いてるし、なんか…色々と見えそうなんだよ」
実際、生地も薄くなっていて…
胸の尖りの存在も、薄らと分かってしまう。
カズは、しばらく…自分のヨレヨレのシャツを訝しげに眺めていたが、俺の視線の先に気づいたようで、「そういうことか」と素直に受け取った。
「カズは成人してるよな?」
乾杯しようとして
彼のとても可愛らしい外見に、一瞬手を止め確認する。
聞けば、俺と同じ年だった。
安心してグラスにワインを注ぐ。
誕生日おめでとう とグラスを合わせると
カズは美味しい と目を細めた。
「そういや、俺だって…最初から気付いてたのか?」
そう問うと、カズはフルフルと首を横に振った。
「最初は、ただのかっこいい人だなって思ってた笑
姿勢とかすごい綺麗だしさ。
でも、3回目だったかな?フードを被り直した時にアナタの目が見えたの。それがすっごい目ヂカラで…
どっかで見たことあるなって思って、視線を感じて振り返ったらポップと目があった」
「って、結構初期からじゃねぇかよ。
うわ、バレてないと思ってた。恥ずかしい」
「…そういえば、最近こなかったよね」
それまで饒舌に語っていたカズの口が、ふ と止まった。
ふたりの間に、微妙な空気が流れる。
「もう精力剤は必要なくなった?
オレのオススメしたやつが効いたのかな」
「え…っと、効いたような、そうで無いような…」
「あ、この間買ったやつ。ひどいなぁ、パッケージすら開いてないじゃない!」
少し悪酔いしたのだろうか?
カズは耳まで真っ赤になっていた。
目ざとく見つけた精力剤を手に取ると「アナタが飲まないなら、オレが飲む!」と…
口にポイっと放り込んだ。
「ちょっ、酒飲んでて…大丈夫なのか?」
「んー、多分?平気でしょ♪」
べーっと出した舌の上には、何も乗っておらず
既に飲み込んでしまった後のようだ。
赤く、濡れた…舌。
そんなカズの無邪気な仕草に
覚えのある情欲が、湧き上がっていた。
つづく
miu