つづきです






マンションに戻り、先刻ドラッグストアで購入した袋を開けてみた。

それは、小瓶に入ったドリンク剤。

一本じゃさすがに効き目がないだろうと、同じ商品を三本買ってみたのだが。
口にしてみると、漢方薬のような苦味が広がる。
なんとなく効きそうな気もするが、あまり飲みやすい味ではなかった。

少し時間を置き、自分で…触ってみる。
視覚からも刺激をした方がいいかと、男女が激しく絡み合っている動画も見たけれどダメで。

残念ながら、三本飲みきっても
俺のモノが反応することはなかった。








「あれ?効かなかったの?」


俺の姿を見つけた彼が、すすっと近寄ってきた。


「……ああ」

「そっか、残念。
おじさんたちには人気だったんだけどなぁ。
ちょっと高いけど、こっち試してみる?」

「…ほんとに効くのか?」

「わかんないよ。使ったことないもん笑
オレが知ってるのは…お客さんの口コミだけ。
深刻な状態なら、病院に行ったほうがいいと思うよ?」


別に、文句を言いにきたわけじゃない。
ああいうものは個人差もあるし、俺に合わなかっただけなのかもしれない。
まぁ、医者にかかるほど悩んでいる訳ではないので、とりあえず別の種類で試してみようと思ったのだが。


「好みとかある?飲みやすい味がいいとか」

「あー…この間のは苦かったな」

「そっか。なら…こっちが良いかも。マスカット味だって」


商品を差し出した彼の手を見れば、指先に血が滲んでいて。
聞けば、紙で切ったのだという。
俺はポケットからコインケースを取り出すと、そこに入れていた絆創膏を手渡した。


「これ、使えよ」

「えっと…ありがとう。
売るほどあるけど、貰っておくね」


彼は花が咲いたように、にっこりと笑った。


「あ、そう…だよな」


ここはドラッグストアだ。
確かに、絆創膏なんて売るほど…ってか、売っている。
余計なことをしたかと思ったが、俺が渡した絆創膏を嬉しそうに見つめていたから良しとしよう。


「…じゃあ、今日はマスカット味を買ってくわ」

「ふふ。意外とお子ちゃまな舌だね」

「////うるせぇ」

「じゃあ、これはオレから。絆創膏のお礼」

「え?」

探していた精力剤だけでなく、ホットアイマスクも一緒に手渡され、困惑した。


「…そっちのほう、さ?
疲れてるせいかもしれないから。
リラックスできると、また違うと思うよ?試供品で悪いけど使ってみて?」


白衣を着ている訳じゃないし、バイトなんだろう。
それでも…
相手のことをよく見て、必要なものを提案してくれる彼を、とてと好ましいと思った。

身バレを防ぐなら、こういったものはネットで買ったほうが良いのに…

俺は、定期的にこの小さなドラッグストアへと通うようになっていた。




つづく


miu