つづきです。







それからも時々自分のアパートに戻ることがあったが、ほぼ…智の部屋で過ごしていた。

時折、あっちの方が激しくて寝不足になることもあったけれど////

かつてのような、病的なまでの不眠は解消され
オレは穏やかな日々を送っていた。


智は…
相変わらず "おはようのキス" でオレに起こされている。

アラームが鳴るよりも早く目覚めた朝、起き抜けのベッドの中で感じた熱っぽい視線。
そっと薄目を開けてみたら、智が…愛おしそうにオレを見つめていた。
////なによ、起きてるじゃない。
だったら、起こされるまでもなく、先に起きていれば良いと思うのだが。
オレのキスで起きることが、智の中では朝のルーティンになっているらしい。

精神的にも落ち着き、生活リズムが整って
普通に自分でも起きられるようになったのに
おはようのキスを欲しがるなんて…
そんな我儘すら、可愛くてしかたない。

だから、オレも気づかないふりをしてあげる。


あと何回…
こうしてあなたを起こせるのかを、数えながら。




時は、とどまることなく進んでいく。

公園の木々は 赤や黄色に色づき
そして、その葉を落としていた。
 
凍えるような冷たい空気に
丸い背中をさらに小さくする。

指先に白い息を吹きかけながら…


オレは冬の訪れを感じていた。



小さなケーキをふたりで囲んでクリスマスを祝い

正月はそれぞれの実家に戻り


そして今日 

受験へと向かう智の背中を見送った。


これまで何度か…
彼の口から志望校の話が出かかったが、その都度誤魔化し、その話題から逃げた。

…ごめん。


オレ…自分が思っていたよりも、好きになってしまってたみたい。 

いくつも年下のあなたを。


合格したら、ちゃんと「おめでとう」って言うから。
笑って…見送るから。

だから、もう少しだけ
あなたの恋人でいさせて?


しん、と静まり返った部屋の中

いまだ智の体温の残る体を
ギュッと…抱きしめた。



つづく


miu