〜相葉の場合〜








あれから数日。

ずっとにのを目で追ってしまう。


お箸を持つのは左なのに字を書くのは右なんだとか、ぷっくりお手手がクリームパンみたいで可愛いなぁとか猫背で丸まった背中とかスマホを見ながらくふくふと緩んでいる口元とか

あれ、何を見てるんだろう?気になる。

メガネで表情が見えないのが口推しい。絶対可愛い顔で笑ってるはずなのに。

あーあ、見たいなぁ。見せてくれないかなぁ。


それにしても、にのって不思議。

この間の体育で計測した50メートル走がオレと同じくらいのタイムだったのには驚いた。

運動神経良いのかとかと思えば、油性ペンのフタが固くてなかなか開けられずに地味に焦ってる姿とか。

やばい。可愛すぎる。

見てて飽きないんですけど。

ってか、目が離せない。


そんな時、担任が席替えをするとか言い出した。


神様どうかにのの隣になれますように。

あ、前後でも良いです!

にのの後ろなら可愛い後頭部を凝視できるし、にのの前なら何かと理由をつけて振り返っちゃう。


オレは祈りながら、席の番号が書かれた紙の入ったティッシュの空き箱に手を突っ込んだ。



「えっとオレは12番だ」



黒板を確認すれば、窓際から2列目の一番後ろ。

普通に考えれば良席。

でも、大事なのはそこじゃない。


にのは


彼の姿を探すと、窓際の列一番後ろ。即ち、オレの隣の席に早々と腰を下ろしていた。

マジ?やった!!



「にの



嬉々として近づこうとすると、オレよりも先にクラスのボス的女子がにの前に立ちはだかっていた。



「ねぇ、二宮。その席私に譲ってくれない?」


……


19番。教卓の真ん前。アンタ目悪そうだし良いよね?私に感謝してよ」



は?

確かににのは目が悪いかもしれないけど、強引すぎない?

ムッとしならがら「あのさ」と言いかけたオレの横を、にのはするりと通り抜けた。



「相葉くん隣だね。嬉しい


「ねぇねぇ、13番って誰?」


「あ、俺だけど」


「悪いオレ最近視力落ちてさ。ここじゃ黒板見えないんだわ。変わってくんない?」


「おー別に良いよ」


「サンキュ」



席交換の了承を得て、にのの隣に座った。

もちろん視力なんて悪く無い。絶好調超。

でも、嘘も方便。

にのと仲良くなる為には必要な嘘なんだ。



「にの、隣よろしくね」


……



返事もなければ視線も合わなかったけど、そんなクールなにのも良い。

メガネの隙間からにののキレイな瞳がチラリと見えただけでオレは満足です。

それに、ほんのりと耳が赤いような


これからの学校生活に、期待しかなかった。





つづく






miu