〜二宮の場合〜





信じられない


信じられない


信じられない



バクバクとうるさい胸の音を、なんとか押し込めようと深く息を吸い込んだ。


何で?


あの相葉くんがオレに声を掛けてくれるなんてあり得ない。

運動神経抜群で、二年生にしてバスケ部のエース。かっこいいのは言うまでもなく、明るくて誰からも好かれる

クラスどころか、この学校の中心。人気者。

こういう人をスーパーアイドルって言うんだと思う。


二年になって同じクラスになって。

同じ部屋の空気が吸えるだけで、マジ感謝。


それなのに"おはよう"って。しかも名前まで。

推しに認知される日がくるなんて

はぁ、生きてて良かった。

思い出すだけで白ごはん3杯食えそう。


それにしても危なかった。

下手に言葉を交わすと、オレが相葉くんヲタなのがバレちゃう。

名前覚えてない なんて、そんなことあるワケないじゃない。相葉雅紀16歳高校二年生1224日生まれAB型両親と弟がひとり身長176cmで脇腹のホクロがセクシー好きな食べ物は唐揚げと麻婆豆腐とフィナンシェ。

最近は3丁目のラーメン屋さんの味噌ラーメンがお気に入りという情報を掴んだので、相葉くんの聖地巡礼と称してそのラーメン屋さんに行ってきた。

もちろん相葉席もゲット。ふふ。ふふふ。

ここに相葉くんが座ったのかと、ペタペタと椅子を撫でてきた。

はぁあの時はテンション上がったなぁ。


って。

うっかり口を開くと、全部漏れちゃうの。

こんなの引くよね?絶対に隠さないと。

何とか最低限の文字数で会話を終えることができて良かった。


友人たちの輪の中に戻って行く相葉くんの後ろ姿を、そっと見送る。

足長っ。背中から腰のラインなんて芸術的。好き。


それにしても、このメガネって優れモノ。

これのおかげでこっそり相葉くんを見ていてもバレないし、更には相葉くんの笑顔が放つキラキラビームを和らげてくれるんだもの。眩し過ぎて直視できないんだもん。


ふぅ、と息を吐き出したオレは


スマホに保存してある

オレの方を向いていない(隠し撮りともいう)相葉くんの写真に視線を落とした。





miu