つづきです
それから一時間ほどで、まーくんのお父さんも帰ってきた。手にいっぱい荷物を抱えて。
何を買ってきたの?ってまーくんが聞くと、トイレシートやら子犬用のご飯やら。
そんなのたくさん持ってきたのにって口を尖らせるまーくんに、あって困るもんじゃないだろうって。
似たもの親子。
でも、この子が来るのを楽しみにしてくれていたようで、ワタシも嬉しくなった。
そのあとは名前で一悶着。
基本的には、お父さんとお母さんで決めれば良いと思ってはいたんだけれど、お父さんのネーミングセンスが何ともイマイチで。
これには、まーくんも口を出さすにはいられない。
「よし、桃太郎にしよう」
「えええ、何で?!」
「強そうだろ?」
「だって女の子だし」
「女の子だって良いじゃないか」
やいのやいの。
キャンキャンキャン。
あぁ、ワンコがここにもいる。笑
「ダメだって、そんなの。ねぇ、カズちゃん」
「え、あの…」
突然振られて戸惑うワタシ。
確かに女の子だし、桃太郎はなぁ。
でも、それを言うとお父さんかわいそうかも。
なんとも答えづらくて口をモゴモゴさせていると、横から鶴の一声が。
「じゃあ、間をとってモモにしましょ♪」
お母さんの提案に、お父さんもまーくんも顔を見合わせてウンウンと頷いている。
おお、さすが。一瞬で解決。
お母さんって偉大だなぁと思ったら、なんだか楽しくなってしまって。
くすくすと笑っていたら、カズさんもそれで良いかしら?って聞かれたから、勿論ですって答えた。
「さて、と。
母さんウチに寿司桶あったよね?」
持ってきた荷物には、寿司ネタが。
何でクーラーボックスがあるのか不思議に思ってたけど、そういうことだったのね。
本当に…
まーくんってば、サプライズ好きというか、びっくり箱というか。
お母さんが用意してくれた、たくさんのご馳走の横に、まーくんの握った寿司が並べられる。
少し早い夕飯を、家族みんなで囲んだ。
「泊まっていけば良いのに」
「明日は店開けるから」
「そうか、残念だな」
「また、来ます」
うん。絶対にまた来よう。
モモと遊びたいし、お父さんお母さんの顔も見たい。まーくんの顔も見せてあげたい。
「じゃあね」
走り出した車。
振り向けば、お父さんもお母さんも
いつまでも…手を振って見送ってくれていた。