つづきです
何だか…考えれば考えるほど、智があの公園にいた理由が、オレが思い描いていたものと違うような気がした。
「ねぇ。智が学校サボってるのってさ、その…」
「ん?あぁ。笑
一人暮らし始めたまでは良かったんだけど、絶妙に朝 起きれねぇんだわ。
それでも学校を丸々全部サボる訳にもいかないからさ?次の授業が始まるまで…あの公園で時間つぶしてた」
……へぇ。
なんだ、そういうこと?
家にも学校にも、どこにも居場所がなくて…
行き場を探してあの公園に行き着いたって訳じゃないんだ。
全然…
全然、可哀想なんかじゃないじゃん。
視線を床に落とすと、景色がぐにゃりと歪んだ。
ジャージの上に落ちた雫が 色を変え
頭の中に、あの声が響いた。
” 君って可哀想な人だね "
咄嗟に耳を塞いだが、鳴り止むことはない。
それどころか、それは次第に大きくなっていく。
あぁ、そうか。
…やっぱり、可哀想なのはオレなんだ。
オレだけが…
「…なり、和也!」
「?!」
耳を塞いでいた手を取られると
智の澄んだ声に包まれ、周りから雑音が消えた。
「大丈夫か?」
「…う、うん」
……不思議だ。
智といると、あの…呪いのような声も
深く休まることのない身体も
その全てが、最初から存在しなかったかのように思えてしまう。
握られた手を、そっと…握り返して
頬に当てた。
その安らぐ温もりに、ポロポロと涙がこぼれる。
「…おい、泣くなよ…」
困ったような声に続き
濡れた頬にそっと添えられたのは、唇だった。
…そっか。
両手が塞がってるから、涙を唇で…
/////
急に恥ずかしくなり、繋いていた手を離すと
智は自由になった手でオレを抱きしめた。
トントン と、優しいリズムが背中に響く。
あぁ。
まただ。
どうして…この人の腕の中は
こんなに気持ちいいんだろう。
「ごめん…もう少しだけ、このまま…」
そう言って目を閉じると
頭の中が真っ白になり
再び…静かな眠りに誘われた。
つづく
miu