つづきです♪
一度その気持ちに気づいてしまったら、もう坂道を一気に転がるようだった。
まぁくん って
名前を呼ばれる度、ドキドキと跳ねる胸
その唇に
肌に…触れたい
よく考えてみたら、少し前まで一緒に風呂とか入ってたんだよな。
オレ、何で平気だったんだろう。
そんなことを考えたら、もう…
腹の奥底に勝手に湧き上がる情動は、どうにもならなくて
カズと別れた後
溜まった欲を発散するようになっていた。
カズを避けるように、いつもより早く家を出る。
一つ学年が違うことがこんなにもありがたいと思ったのは初めてだった。
「あれ、珍しく早いじゃない」
「オレだって、色々あるんだよ」
「色々って。笑
…カズくんだっけ?今日は幼馴染の子と一緒じゃないんだ」
「う…」
ケンカでもした?と いきなり確信をついてくる翔ちゃん。何でもお見通しって顔でオレの反応を楽しんでいる。
「…ケンカじゃないよ」
「ふうん。まぁ、良いけどさ?相葉くんが元気ないと調子出ないんだよな」
そう言って翔ちゃんの投げた視線の先には、ひとり歩いているカズの姿があった。
いつもなら、オレと並んでバカみたいな会話をしているはずなのに。
何かを探すようにして校舎を見上げるから、慌てて窓から離れた。
…ああ、やっぱり可愛いよなぁ。
あんな事をしてしまったのに、考えるのはいつもと変わらなくて。
「オレ、最低だよな…」
机の上に突っ伏して、頭を抱えた。
カズに会いたくて
声を聞きたくて堪らないのに
…怖くて会えない。
「さっきカズくん、相葉くん探してこの教室まで来てたよ?居ないって言っておいたけど」
「うん、変なこと頼んでごめんね。
翔ちゃん、ありがとう」
休み時間には逃げるように教室を離れ、放課後も普段は遊ばないような友達と連む。
そんなことを繰り返しているうちに
気づけば、あれから10日ほどが経っていた。
「こんなに会わないなんて…初めてだ」
好きなのだと自覚したあの時から
いつか…
カズから離れなければならない日が来るだろうと思っていた。
だって、オレたちは
幼馴染以上にはなれないのだから。
のろりと立ち上がった。
今日は土曜日。
これだけあからさまに避けていたのだから、直接カズが家に来ることもないだろう。
それでも、この部屋にはカズの痕跡が多すぎる。
とりあえずコンビニにでも行って、それから…
尻のポケットにスマホをねじ込むと、上着を手に取った。
バタン!
突然開いたドアに、身体が固まる。
そっと振り返ると…
明らかに不機嫌そうな顔をしたカズが立っていた。
「…あの、入る時はノックくらい…」
「今までそんなのしなかったじゃない。オレもまーくんも」
「そうだけど…やっぱり、色々とさ、見られたくないこともあるし」
「オレは見られて困る事なんて何もないけど。
ねぇ、オレ…何で避けられてるの?」
「何でって、え?!」
想定外の質問に、思わず…言葉に詰まってしまった。
つづく
miu