つづきです









オレも彼の後を追い、4人で食卓を囲む。

気になってチラリと横を見たけれど、彼は下を向いたまま一言もしゃべらない。

…あの時の男と同一人物とは思えないくらいだった。



「ごめんなさいね、雅紀くん。和ってば人見知りで…」



そんな和也くんを見て、和代さんは申し訳なさそうに言った。


いや、人見知りじゃないと思うけど。

コミュ力半端なかったよ?

初めて会ったオレと…

その、あんなことしたんだもん。


心の中でそう呟きながら、オレは引き攣った笑いを浮かべていた。

テーブルの上にはオレの大好きな唐揚げがたくさん乗っているのに、ちっとも箸が進まない。

くそぅ。お前のせいだぞ。


そんな中、突然、和也くんが口を開いた。



「あの…さ。オレ、ここには住まないから」


「え?」


「どうして?」



父さんも和代さんも、寝耳に水だったのだろう。

目を丸くしていた。



「だって、二人の邪魔したくないし」


「何言ってるんだ、和くん。邪魔だなんてことない。一緒に暮らそう」


「そうよ、和」



父さんも和代さんもアタフタしている。


急にこんな事を言い出したってことは…

もしかして気づいた?

オレが原因? 



「……」



急に罪悪感が湧き上がる。

オレは悪くない…けどさ。でも。

この展開に、どうしたらいいものか分からず、黙って様子を見守っていたのだが、和也くんの決意は堅いようで、ひとり暮らしをするの一点張り。


やがて和代さんの目には涙が浮かび、父さんに至ってはやっぱり結婚はやめた方が良いのかもしれないなんて言い出す始末。

ちょっと待って。何かやばい雰囲気かも。


この和也くんに関しては、少々…

いや、かなり問題ありそうだけど、それでも和代さんは良い人だし、ふたりには幸せになってもらいたい。


ここは、オレがなんとかしなきゃ!


ムクムクと持ち前のお兄ちゃん気質が顔を出し、隣に座っていた和也くんの肩をガシッと抱き寄せた。



「オレ、弟が出来てめっちゃ嬉しいんだ。カズって呼んでも良い?」 


「え、う…うん」


「ね、カズ。だったらオレのアパートで一緒に住もうよ。兄弟仲良く。ね?」


「…はい?」


「じゃあ決まり。

父さんも母さんも、それなら安心でしょ?」


「雅紀」


「雅紀くん…」




明日迎えにいくからね、と

自宅に戻るという、二人の姿を見送った。





つづく



miu