つづきです










そういえば。


ずっとバタバタしていて、朝から何も食べていないことに気がついた。

普段から少食なオレだけど、流石に腹の虫がぐぅと主張する。


ぺたぺたぺた


後をついてくる、履き慣れたサンダルの音。


コンビニの前まで来て…

少し考え、そのまま通り過ぎた。


ほとんど料理とかしないけど、カレーくらいならオレでも作れる気がする。

小学校の時、調理実習で作ったし。

少し先にあるスーパーまで足をのばして、材料を買い込んだ。だって野菜を切って肉と一緒に煮れば良いんだよね?

食材を適当に放り込んだカゴはずっしりと重かった。


買いすぎた荷物は不思議と苦にならず、軽い足取りでマンションへと戻ってきた。


ふんふん♪と鼻歌を歌いながら料理を始めてはみたものの…


普段使わない包丁は驚くほど切れなくて。



「痛っ!」



うっかり、指の方を切ってしまった。


それでも箱の裏に書いてあるとおりに、鍋に入れて煮ると、とりあえずカレーっぽいものが出来上がった。少々水っぽい気もするが、匂いは間違いなくカレーだ。うん。オレってやれば出来る。


まぁくん早く帰ってこないかなぁ。


このカレーを見て「え、これニノが作ったの?」ってビックリする顔が目に浮かぶ。ふふ。


…なんて思っていたら、ご飯を炊いてないことに気がついて、慌てて炊飯器のスイッチを入れた。

まぁくん、あと30分は帰ってこなくていいです。





「残業なの、かなぁ…」



テーブルの上のスマホを手に取る。

普段は7時過ぎには帰ってくるんだけど…

8時を過ぎても、まぁくんに送ったメッセージは未読のままだった。

仕事が忙しくて、メッセージを読んでいる暇もないのかな。


…そういうこともあるよね。先に食べてよう。



「いただきます」



温めたカレーを口に運ぶ。


お腹がすいていたはずなのに…

ひとりで食べたカレーは、なんだか凄く味気なかった。






つづく




miu