つづきです。
「具合はどうだ?」
夜になり、オレが熱を出して寝込んでいると知った兄さんが、ベッドの横に座り込んだ。
本当は、熱なんてとっくに下がっていたが、とても…起き上がれるような精神状態じゃなかった。
気遣うように、そっと伸ばされた手を振り払い、唇を噛みしめる。
「…かず?」
(言っちゃダメだ)
…そう思うのに
もう、自分では修復できないほど、オレの心は深い傷を負っていたのかもしれない。
「何やってたんだよ…」
「…え?」
何のことか分からず戸惑っている兄さんに、畳みかけるように言い放った。
「男が好きだなんて気持ち悪い…!
その汚い手でオレに触るなよ」
ヒュッ
息を飲む音が聞こえた。
悲しく歪む顔。
部屋の空気が一気に変わった。
傷つけると分かっているのに…言葉の刃は止められない。
オレは更に突き立てた。
「顔なんか見たくない!オレの部屋から出て行けよ!」
「ごめん…」
バシッ!!
…俯いたままの兄さんに、オレは枕を投げつけた。
「…なぁ、お前のそれって…」
それまで何も言わず、黙ってオレの話を聞いていた智さんが、口を開いた。
「憧れの兄ちゃんを男に取られちまった、ガキの可愛い嫉妬?それとも、兄ちゃんをオカズにオナニーした自分への自己嫌悪か?」
その無遠慮な物言いに、カッ…と頭に血が上った。
「…っ、あんたに何が分かるんだよ!」
「分かんねーよ。分かんねーけどさ。
お前、本当は…兄ちゃんに抱かれたかったんじゃないか?」
「そんな、違う…」
オレは頭をぶんぶんと振った。
「違うなら違うで良いさ。
でも…そこんとこハッキリさせないと、前に進めないぞ?」
とん、と 大きな手が
オレの薄っぺらい胸を叩いた。
つづく
miu