つづきです
「ニノ?」
鍵を開け部屋に入ったオレは、部屋を見渡した。しかし、ニノの姿は見当たらない。
トイレも風呂場もクローゼットも、全部の扉を開けたが、見つけることが出来なかった。
「え…なんで?」
どこに行ったんだろう。
次第に不安になるオレの視界を、大野さんが横切った。
一点を見つめ…
迷いなく冷蔵庫を開けると
中で…ニノが冷えていた。
「何してんの?! 風邪引いちゃう!」
「だって、幽霊は風邪引かないもん」
ニノの冷静な突っ込みに「気分的な問題だよ」と、口を尖らせた。
その手を引こうとしたが、触れられるはずもない。何とか、宥めすかして出て来させようとしたのだが、ニノは冷蔵庫から出てこなかった。
…今日は無理だな。
大野さんには悪いけど、また今度にしてもらおう。
「あの、大野さん…」
振り返ったオレを押しのけると、冷蔵庫の前で大野さんは仁王立ちをしていた。
右手を見つめると何やらブツブツ言い…
冷蔵庫の中に手を突っ込んだ次の瞬間、ぐいっとニノを引っ張り出した。
え……えぇっ?!
幽霊 捕まえた!
この人、こんな凄い技を持ってるの?
「手荒なことして悪かったな。
とりあえず、話がしたいんだ…」
目を白黒させているニノを抱きとめ
大野さんは 静かにそう言った。
狭い部屋の中、3人が膝を付き合わせる。
沈黙を破ったのは、ニノだった。
「…話って?」
「回りくどい言い方をする気はない。成仏する気はあるか?」
「成仏…」
揺れる瞳がオレに向けられる。
「あ、勘違いすんなよ?
コイツはお前と離れたい訳じゃない。ニノを幸せにしたいんだと」
「……成仏は、出来ない」
ハッキリ言い切った その言葉に
大野さんの眉が、ピクリと動いた。
つづく
miu