つづきです。
軽くBL含みますので、ご注意下さい。
店の前で、座り込んでいる男と
それを 心配そうに覗き込んでいる男。
…顔なんて見なくてもシルエットで分かる。
全く…本当に 無防備が過ぎる。
危機感が足りないよな。
潤には 後でよく言い聞かせよう と、俺は顔を上げた。
「ごめんね、潤が迷惑かけて。えーと…」
生田です、と ぺこりと頭を下げた青年は、どこかで見た覚えがあった。人懐っこい笑顔が印象的だ。
記憶を辿るが…思い出せない。
「いえ、全然。
潤、嬉しかったみたいで…」
??
…何か嬉しいことがあったのか。
考えてみたが、俺に思い当たることは無かった。
目の前の潤は、座りながらも半分眠っている。俺が来たことにも気づいていない。
これは早く家に連れ帰った方が良さそうだ。
「あ、生田くんも家に帰るんだろ?一緒に送っていくよ」
最初は遠慮していたが、俺の強い勧めで車に乗り込むと、彼の口から思いがけない言葉を聞いた。
「櫻井さん…ですよね」
「え、どこかで会った?」
「潤とは高校の同級生なんです。櫻井さん、俺らの学年でも有名でしたから」
…従兄弟の設定はダメか。
どうする?
考えを巡らせていると、彼もまた少しばかり酒に酔っているのだろうか。
涙ぐんだ声が 車内に響いた。
「あの、酔った事 怒らないでやって下さい。
俺…高校の頃、潤が好きだったんですよ。
だから潤が櫻井さんのことを見てるのも気付いてた。
今日ね、やっと…話せたんです。あの頃 言えなくて、腹の底にしまい込んだ気持ちを。
あ!でも誤解しないで下さいね。俺も今、好きな人と一緒に暮らしてますから。
…お互いにそんなことを話してたら、嬉しくなっちゃって、つい酒を…」
助手席で小さな寝息を立てている潤に視線を向ける。
その頬には、薄っすらと涙のあとがあった。
…そっか。
「あぁ…怒らないよ。ありがとう」
生田くんをアパートに送り届け、行き先に迷う。
潤の家に送っていくべきだとは思うが、彼の話を聞いて…俺は、今すぐにでも 潤を抱きしめたい衝動に駆られていた。
人通りのない、静かな場所に車を停める。
「…潤?」
そっと…肩を揺らす。
小さく身じろぎした潤に、キスを落とした。
堪えきれずに…深く合わせると、甘い吐息とともに綺麗な瞳が開かれた。
「ん…しょおくん…おかえり」
「ふは!ただいま、潤。
もう1時過ぎだけど…家に帰るか?」
「やだ。しょおくんといる」
「即答かよ。笑
じゃあ、どこか泊まってく?
こんな時間だけど、メッセージだけはしとけよ。お母さん心配するから」
「うん…わかった」
スマホを取り出して 送信すると
運転席の俺の上に覆いかぶさってきた。
つづく
miu