軽くBL含みますので、ご注意下さい。
〜過去の記憶〜 Ⅲ
オレが 躰を使って手に入れた仕事は、大野義和事務所 の事務職だった。
真面目で有能。
人当たりも良いオレは、次第に大事な案件も任されるようになる。
第一秘書の田中さんに その仕事振りを買われ、事務所の一社員から 議員秘書へと抜擢されるまで、そう時間はかからなかった。
大野議員と直接仕事をするようになり
一年ほど 経った、ある日
オレは 決行した。
話したいことがある、と 自宅を訪れる約束を取り付けた。…もちろん、先生以外 誰も居ない日を調べて だ。
「…君は、本当に優秀だ。私の求める以上の結果を出してくれる。
これからも、頼りにしてるよ」
「恐れ入ります」
向かい合い、酒を口に運ぶ。
先生はすこぶる上機嫌で、空のボトルが テーブルに転がっていた。
…いつもより、確実にペースが早い。
オレは、相手の感情を読み取る能力には長けているようだ。
気を許す、先生の微妙な変化を感じ取った。
酔ったタイミングを見計らい、隣に座る。
「先生…話があるんですが」
「何だね」
「オレ、先生のこと…」
肩にもたれ掛かり、スラックスの上から太ももに手を這わせた。
一番手っ取り早いのは、身体の関係を持つことだった。秘書…しかも男との不適切な関係そのものは、スキャンダラスで 充分大野の弱みにもなり得る。
大野が オレの躰に溺れれば、こんなに扱い易いことはない。
…コイツは父親じゃない
ただ 血が繋がってるだけの、赤の他人。
倫理も…罪悪感も 何も無い。
オレの中にあるのは、憎悪だけだ。
コイツを地の底に引きずり落とすためなら、どんな方法だって 厭わない。
そう思ったのに…
大野はため息を吐きながら、オレの髪を撫でた。
「…私があと5歳若かったら良かったんだがな」
「オレなんかじゃ…ダメですか?」
「いや、そうじゃ無いんだ。
私はね…数年前から 機能しないんだ」
…大野は不能だった。
モノが 勃 たないだけでなく、性 行 為 そのものに 対する 興味がなくなってしまったらしい。
チッ…
オレは心の内で 舌打ちをした。
誤算だ。でも、代替案は考えてある。
「でも、先生のこと 尊敬してます。
好きなんです。オレの この躰…利用できませんか? 」
この世界、男色を好む人間は少なくない。
オレの躰を 賄賂代わりに使い
重要な取引の対価とすることを提案する。
値踏みをするような視線。
頭の良い人だ。瞬間的に、リスクとリターンの計算をしたのだろう。
先生の目の奥が キラリと光ったのを
オレは見逃さなかった。
自分にとって利益があるなら、利用する。
…さすがだよ。
ふふっ
あんたの政治家生命も、あと少しだな。
不正の証拠さえ、この手に掴めば…
破滅への カウントダウンが、始まった。
つづく
miu