にのあいのお話、ラストです。
まーくんのご両親を見送った後
関係者を招待しての プレオープン。
新店舗お披露目も無事に終わり
翌日から、いよいよ 新しい生活がスタートした。
派手な宣伝などしていない。
それでも口コミで、店の評判は徐々に広まっていった。
ランチ時間には、行列が出来ることもある。
順調な滑り出し。
ワタシたちは、忙しく充実した日々を過ごしていた。
「はい、寿司雅です。
…え、取材…ですか?」
電話を取ると、この店をテレビで紹介したいという 取材の申し込みだった。
若いイケメン店主と
可愛らしい従業員?
どうも ハタから見たら、そんな構図らしい。
(自分で言ってて恥ずかしいが…)
それが 人々の興味を誘うのだろうか…
これまでにも、テレビや雑誌の取材申し込みが 度々あったが、まーくんはそれを全て断っていた。
電話の声を聞きつけ、独り言のようにつぶやく。
「カズちゃん…断ってね。
興味本位で騒がれるのは 好きじゃない。オレは、目の前のお客さんを大切にしたいんだ」
手元から視線を逸らさず、言い放つ。
それは、仕事に集中している 職人の顔。
「ふふっ…店長、カッコいいじゃない」
「…それにさ、テレビとか出ちゃったら…
カズちゃんを狙って来る奴が絶対いるから!
そんなのダメだからね!!」
…かと思えば
一転して オロオロと視線を泳がせ、唇を尖らせる。
ぷっ!
クスクス
あははっ…
店のあちこちから 笑いが上がった。
//////// もう…
お客さんのいる前で何を言ってんのよ。
「…はいはい、分かってます。
取材は断りますから」
この店を始めて 1年。
本当は…そろそろ2号店を出さないか なんて打診も来ている。
でも、店の規模を広げるつもりなんて無い。
自分の目が 行き届く客数。
家族経営の 小ぢんまりとした店。
…それで良い。
儲けることより
食べた人の喜ぶ顔が見たい。
ここの店主は そういう人だから。
ガタッ!!
カウンターに座っていた青年が、突然立ち上がった。
「あの…俺を弟子にしてください!!」
深々と頭を下げる青年。
ワタシとまーくんは…
顔を見合わせ、目を丸くした。
「この味に惚れました!
俺、自分の手で…人を感動させるものを作り出したいんです!
どうか….お願いします!!」
頭を下げたまま、その青年は動かない。
その場にいた誰もが、固唾を飲んで見守っていた。
やがて、まーくんの口が開いた。
「……3か月」
「3か月?」
「3か月で、見込みがないと思ったら…その時は辞めてもらうけど、それで良い?
下働きからだからね…キツイよ」
「はい…はいっ!お願いします!!」
夢と希望に キラキラと輝く瞳。
…それには、見覚えがあった。
本当に、親父も まーくんも分かりやすい。
好きなのよね?
こういう…真っ直ぐで 一生懸命なヒト。
…ふふっ
彼の本気を見せてもらいましょう?
「あ!だけど…」
険しい表情の まーくんが、言葉を続けた。
「カズちゃんに手を出したら…速攻追い出すからねっ!!」
…それはアナタでしょ ////
心の中でツッコミを入れ
この店と ワタシたちの明るい未来に
思わず 目を細めた…。
終わり
後ほど、あとがきUPします
miu