翔潤のお話です。
BL含みますので、ご注意下さい。








ドアから飛び出して来た 男の腕を掴む。

見覚えのある目は
今も、冷たいままだった。


「どちらに行かれるんですか?佐藤さん。
ちょっと…部屋の中確認させてもらって良いかな?  …相葉くん!」

「コイツは任せて! 先輩、中を!」


佐藤を相葉くんに引き渡し、ドアの中へと足を踏み入れる。

消火器の白い煙が漂う中…

床に横たわる、潤を見つけた。


……目の前の光景に、言葉が出ない。


引き裂かれたシャツ
腿まで下された下着

身体中を 激しい感情が駆け巡る。

はっ…はぁ…

握り締めた拳を 床に叩きつけた。


何故あの時…
潤の側を離れてしまったのだろう。

あんなにも、佐藤には不信感を抱いていたのに。


「はははっ!ご馳走さま。
潤くんの具合…良かったよ。あんあんヨガってさぁ。最高だよ。
しょおくんが調教したんだ?」


背中に投げつけられた 口汚い言葉に  
身体中の血液が 沸騰した。


「てめぇ…ぶっ殺してやる!!」


地の底から響くような…低い声に
自分でも驚いた。

…振り返り、佐藤に掴みかかる。

振り上げた拳を下ろす直前
潤が…俺を一喝した。


「そんな奴はどうでも良いよ!
それより、しょおくん…これ解いて!」

「!!」


その、矢のような言葉に、我に返った。
挑発に乗るなんて 馬鹿げている。

それより、今は…


そっと 跪き、手と足の紐を解く。

かなり暴れたのだろう…
手首は擦れて赤くなり、薄っすらと血が滲んでいた。

脱いだ上着で、潤の身体を隠す。


「触れて…良い?」


頷いた潤の身体を、優しく抱きしめた。

…愛しい人の 痛々しい姿に
全身の震えが止まらない。


「…相葉くん、通報するからスマホちょうだい。潤…良いよな?」


相葉くんの持っていた自分のスマホを受け取ると、警察に通報した。


「…しょおくん、どいて?」

「へ?」


手首をさすりながら、俺を押し退ける潤。
無言で ジーンズを腰まで上げると、俺の横を通り過ぎる。

テーブルに置かれたパソコンを操作し始めると、暫くの間、作業に没頭していた。


「これで…良いかな」


画面から視線を外し、振り返った。
佐藤に近づく。

次の瞬間

バシッ!!

大きな音とともに、奴の身体は…
視界から消えていた。


…何が起きた?

派手に吹っ飛んだ佐藤が、壁ぎわで倒れていた。
苦しそうに、両手で腹を抑えている。

潤は、冷静な視線を向けていた。


「…お前さ、勘違いするなよ。
俺を傷つけることができるのは、唯一…しょおくんだけだ。
お前なんかに、傷つけられない。それに」


一度、言葉を切る。


「それに…
しょおくんの為なら泣くし、怒る。
しょおくんを傷つけるものは、全力で排除する。
…悪かったな?俺は天使なんかじゃ無いんだよ」


もう一発 腹に蹴りが入った。

佐藤は…怯えたように、顔を逸らし
ブツブツと独り言を呟いている。


遠くで鳴っていた
パトカーのサイレンが 近づき

やがて…


止まった。



つづく


miu