いつもの末ズとは 別のお話になります。
軽くBL含みますので、ご注意を。











あ…れ?


忙しく動き回るゲーム画面から顔を上げると、辺りには 微かに…甘い香りが漂っていた。

その元を 視線で辿る。

普段であれば 特段気にも留めないが
今日は…そういう日。

市販品のチョコレートを持っていても、こんな風に香りは立たないだろう。
彼が 身体に纏った 甘いヴェールは、ほのかな期待をも連れてきた。


「…潤くん」


少し眠たそうな瞳が 振り返る。
隠さない欠伸が、大きな口を開けた。


「ふぁ…   何?呼んだ?」

「なんか、甘い匂いがするんだけど」

「…分かるの?」


すげー鼻が良いんだな  と
目を細め 微笑む潤くん。

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真っ白な百合の花が、揺れた。


足元に置かれた カバンに手を突っ込むと、中から 包みを取り出す。

それをワタシの手の上へと乗せた。


「じゃあさ、味の感想 聞かせてくれる?」


キラキラと輝く瞳が あんまり眩しくて…
ワタシは 視線を落とした。

この手の中にあるのは、形の崩れた チョコレートの欠片と 無造作に包まれていた…現実。
見れば、赤いリボンが結ばれた 可愛らしい包みが、カバンの端からのぞいていた。

…彼の睡眠時間を削ったのは、ワタシ宛ての贈り物でないことは 明白。

落胆を顔に出さないように 続ける。


「これ、試作品なの?」

「…っていうか、端っこの部分」


一欠片摘んで、口の中へと放り込んだ。


…思慮深さを感じさせるような、大人な甘さ。その後で キリッとした スパイシーな香りが鼻腔を擽り、抜けていく。

甘味と苦味、舌触り
香りまで

どれを取っても 完璧なバランスに…
よく知る あの人を思い出した。



自分の勘の良さに 嫌気がさす。

すごいよ、アナタ。



「これって…翔ちゃんっぽいね」

「…そ、そう?////」

「うん…」


イメージして作ったの?


だけど、
だけどさ。


「…苦い、潤くん」

「マジで?!」


たとえ一瞬でも、甘い…夢を見てしまったワタシには、この味は苦すぎるから。


「上手くできたと思ったんだけどな…」

「…苦いからさ、甘ーい言葉の一つも 添えてやったらどうです?」


もう一つ、口に含むと
落ちた肩を ポン…と叩いた。

我ながら お節介がすぎる、な。


勘違いした道化師の涙が 

舌の上で 
ゆっくりと…溶けていった。




おわり





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バレンタインですねラブラブ

甘ーいお話は 色んなところでUPされてると思うので、ほろ苦いお話にしてみました。

今日が ステキな日になりますように…




ごめん…
エロいチョコバナナの画像は使えなかったの( ̄▽ ̄;)





miu