翔潤のお話です。
軽く BL含みますので、ご注意下さい。
シャワーで 躰を洗い流し、軽く身支度を整えた。
春とはいえ この季節、夜はまだ冷え込む。
潤に風邪をひかせてはいけないと、上着を手に取り 玄関のドアを開けた。
一歩、二歩と 足を進める。
重なる木々の合い間から 空を見上げると
そこには 深い…藍色が広がり
白く清廉な光を放つ、大きな月が
ぽっかりと浮かんでいた。
他者を寄せ付けない その姿。
美しさに魅入られたのか
…それとも、囚われたのか
俺は しばらく
その場に立ち尽くしていた。
「しょおくん…もしかして、体力の限界なんじゃない?」
ニヤリ、と 笑いながら 俺のケツをポンと叩き、軽快に歩き出す潤。
さっきまで重く 動かなかった身体は、呪縛から解かれたように軽くなっていた。
「何言ってんだ! まだまだイケるからな?…覚悟しろよ、潤」
腰に手を回し、抱き寄せる。
手に持っていた上着を その肩へとかけた。
俺に寄り添うように、躰を預ける潤。
………?
頭上から降り注ぐ月光が刺さる。
それが 視線にも似て…胸の奥が騒ついた。
「どうかしたの?」
「…いや、何でもない」
月に背を向けるようにして
俺たちは、駅の方向へと歩きだした。
同じ学校に在籍してしるのに、校舎が別というのは何とも つまらないものだ。
潤と 偶然すれ違う なんて事もない。
しょおくーん♡
手を振りながら駆け寄ってくる潤を 妄想し
俺は中庭のベンチに座り、ボーッと 空を見つめていた。
「何だか 寂しそうですね」
「鈴木さん…」
目の前に影が落ち、見慣れた顔が覗き込んでいた。そのまま 隣へと座る。
「潤くんじゃなくてごめんなさいね?」
「別に…」
そう言ってはみたが、俺たちのことを知っている彼女に対し、今更 取り繕う必要も無かった。
「…忙しいんだよ、あいつ」
最近、潤は バイトも始めた。
住んでいるアパートから、自転車で20分ほどの距離にある古着屋だ。
オシャレな潤には とても似合っている。
「でも、今日…櫻井さん、バイト休みですよね?」
ふふっ と楽しそうに微笑む綺麗な瞳。
…どうやら、一週間ぶりに潤の家に行く日だということは、彼女に バレているようだった。
つづく
miu
