にのあいのお話です。
軽くBL含みますので、ご注意を。








「あの…これはね、その…」

とりあえず、前を手で隠してみた。


まーくんは クルリと後ろを向き、その場に座り込んだ。着替えを取りに部屋に戻ると、バタバタと パンツを穿き、頭からTシャツを被る。

無言の背中の前で 正座し、相手の様子をうかがう。少しだけ ズズ…とにじり寄り、まーくんとの距離を縮めた。

ワタシの動く気配を感じ、振り返る瞳…

暫しの沈黙の後、まーくんは 立ち上がると、この部屋から出て行ってしまった。


………なんだよ。

股間に ぶら下がってるモン見たら、やっぱ…興ざめした?

男が好きだなんて、気の所為だった
オレってバカだなぁ

そういうこと?


もう ワタシの事…好きじゃ…

気付けば、涙が 頬を伝っていた。


拭っても  拭っても溢れてくる雫
その正体に…漸く気付いた。


あぁ…そっか、好きなんだ。


こんなタイミングで 自分の気持ちに気付くとか、本当に…間が悪い。

握った拳を額に押し当てて
ゴツン、と叩いた。

どうする?  このまま 諦める?

だって、拒絶されたら…怖いよ。

自分で自分を抱きしめると、温まった筈の身体は  すっかり冷え切っていた。


あの時…
まーくんは  好きだ と言葉で伝えてくれた。

…ワタシも  伝えるべきなんじゃない?


後を追い、狭い階段を駆け下りた。


照明の落とされたはずの店内に、一ヶ所だけ点る明かり。

小上がりになっている座敷に
その後ろ姿が見えた。


「まーくん…」

ビクッと 震えた背中に、ひとつひとつ 言葉を置いていく。


「あの、そのままで聞いて。
ワタシね、まーくんのこと好きみたい。
だけど、気にしないで欲しいんだ。伝えたかっただけだから」


振り返った まーくんの瞳は 濡れていた。
なんだ、二人して泣いてたんだね。
…優しいひと。
もう悩まなくて良いよ。


「言いたかっただけ。
本当に 気にしないでくれる?」

「そんなの、無理」

気付いた時には まーくんの腕の中にいた。


「好きって…こういう好き?」

少し鼻にかかる甘い声が 
耳元で溶けていく。


「うん、こういう…好き。
あの…まーくんは ワタシの事嫌になったんじゃ…」

「は?  そんなワケないでしょ!?
あのまま カズちゃんと二人でいたら…襲っちゃいそうで、慌てて  オレ…」

「襲っちゃうって…ワタシを?!…凄いな」

「オレは そのくらい好きなんだからね!
カズちゃんの ”好き” より、大っきいんだよ」

「…そんなの、分かんないよね?」


冷え切っていた身体に 温かいものが流れ始める。涙だか、鼻水だか…なんだか分からない雫が頬に落ちるけれど、それすら嬉しいと思う自分が信じられない。

なんなの?
好きになるってこんなだった?

戸惑いながらも 
そのクシャクシャな顔を見上げ


しょっぱい唇を 奪ってみた。




つづく



miu