にのあいのお話です。
軽くBL含みますので ご注意下さい。
「カズちゃんは まだ休んでて?
オレさ、道具の手入れしながら大将を待つから」
仕入れに出かける時間には まだ早かったけれど、まーくんは 身支度をし、板場へと下りていった。
…あまり寝てないんだもん。
疲れてるでしょ?
それなのに、そんな優しい顔するなんて。
なんだよ、ズルイじゃない…
ひとり取り残されたワタシは
階段を下りていく その背中を見送った。
…出会った時の まーくんを思い出す。
『付き合ってください!』
それは …曇りのない
とても 綺麗な瞳だった。
恋愛感情…?/////
それを抜きにすれば、ワタシも最初から好きだったのかもしれない。
無垢で、真っ直ぐな 彼を。
どうしても…
昔からダメだった。
好き嫌いではなく
玉子以外のにぎりは 身体が受け付けなくて。
職人である親父は カッコよかったし、そうなるのだと 子供の頃は思っていた。
…でも、ナマモノが食べられない寿司屋なんて、そんなの 成立しないじゃない。
母が亡くなって12年が経つ。
親父の再婚相手は良い人だけど
やっぱり…
母の思い出が残っているこの店は特別で
少しでも長く続けられれば と
女将の真似事をしてみたり
経営を勉強し、親父のサポートをしてきた。
でも
常連客の軽口を あしらっても
いくら数字とにらめっこしても
ワタシは 親父の ” 味 ” を継ぐことは出来なくて
去年 親父が入院した時、ワタシには店を開けられず…泣きながら 休店の知らせを 貼り出した。
だから、いつか。
親父が 包丁を置く時が この店を閉める時だと、悲しいけれど そう思ってきたんだ。
…そして今、まーくんが現れた。
まーくんが 親父の味を継いでくれるのなら、いずれは…譲渡して、経営から全てを任せても良いのかもしれない。
親父の味もこの店も
間違いなく 大切に残してくれる…
だから、まーくんは
ワタシにとっても
とても大切な人 だったんだよ。
つづく
miu