つづきです。
軽くBL含みますので、ご注意ください。











あれから月日は流れ
俺は18歳になり、元服の儀を迎えた。

周りから成人として扱われるようになり

病気がちになった父から、兄は事業を引き継ぎ、まだ若かった俺は…古いこの屋敷の管理を命じられた。

広いこの屋敷…

普段は使わない部屋も多く、その殆どは閉め切ったままだった。

渡された、全ての部屋の鍵。

ズッシリと重い 鍵の束に刻まれた
部屋番号を一つ一つ確認していく。

一階から 順に

1-1  1-2  1-3…
2-1  2-2  2-3…

その中に一つだけ、番号のない鍵があった。


「…これ、何処の鍵だ?」

屋敷の見取り図を取り出し
指で追う。

だけど違和感があった。


別棟へと続く階段


そういえば、この先には…何かがあったような気がする。
…なぜ見取り図には載っていないんだ?


俺は 鍵を手に…部屋を飛び出した。


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階段の先にある廊下を進む。

突き当たるはずの、その場所には
薄暗い回廊が続いていた。


近づくにつれ、胸が苦しくなる。

細い糸で絡め取られるようなその感覚を
俺の全身が 覚えていた。


刻印のない、錆びついた鍵を鍵穴に 差し込んで、ガチャリ…と 回す。


ギッ…

重々しい音を立て
ゆっくりと…その扉が 開いた。



あれは…
夢だと思っていた。

家族と使用人以外の人間が 部屋の中に居るはずなんてない。

飴色の綺麗な瞳。
冴え冴えしいほどに美しく光る
白い…肌。

この世のものとは、到底思えない。

そう、幼い子供の見た 夢だったんだ…
ずっとそう思ってきた。

それなのに



「…カズ…?」

『…久しぶり、だね』


カズは 昔と寸分変わらぬ姿で、そこに居た。



つづく


miu