つづきです。
クスクスクス
その時、ぼくたち5人以外の
小さな小さな笑い声が 耳をかすめた。
「ほら、やっぱり気付かないよ…」
「今回もダメだね」
「こんなに近くまで来たのになぁ」
「5人も居るのに…惜しいよね」
「ねぇ、聞こえないかな?
オーイ!」
「え、何? 誰かいるの?」
一面の緑色が広がる中で
ただ一ヶ所だけ
微かな光を放っている。
全員の視線が、その一点に集中した。
……え?
小さいけど、明らかに他の葉っぱとは違う
”何か” が いる。
目を凝らして、よーく見た。
サワサワサワサワ…
風に揺れてる 5枚の葉。
その中心には
小さな小さな 顔が付いていた。
「げ」
「何だ?コレ」
「……凄い」
「え?え? 顔付いてる!?」
「気持ち悪っ!」
「…こいつ、気持ち悪いって言いましたけど」
「いや、そこよりもさ…」
「全員に見えてるの?」
「あれ? この場合、どうするの? この中から1人だけ?」
「5人いるのに?」
ぼくたちは肩を組み
丸くなって作戦会議をする。
「見た?」「見た」「あれ何?」「分からねえ」「ちっさいオッサンとか?」「どうする?」「捕まえる?」「でもさ、関わらない方が良いんじゃね?」「話くらい聞いてみようよ」「うん」「だな」
「…あのさ、きみたち 何者?」
ぼくの問いに ユラユラと揺れながら
5枚の葉っぱは 小さく答える。
「…ほほー何者 ときましたか」
「新鮮な反応だね」
「え、オレたちって…何者?」
「…あのさ、話が ややこしくなるから」
「俺たちは 世間一般的に言うところの…妖精 かな」
こほん、と 1つ咳払いをし
妖怪が 何やら喋りだした。
「俺たちを見つけることが出来た人間に、神様からの祝福を与えるため…ずっと ここで待ってたんだ」
「怪しいよね?」
「 しゅくふくって何さ?」
「やっぱ、ちっさいオッサンじゃない?」
「…逃げるか」
こっち側の話がまとまった所で
「あのさ、祝福だかなんだか知らないけど…知らない人からモノを貰っちゃいけないんだよね。だから…ぼくらは 帰るよ」
じゃね、と 小さく手を挙げて
ぼくらは 踵を返し
各々来た方角へ歩き出した。
「わー!! 待った!
お願い、ちょっと戻ってきて!?」
慌てた声に 後ろ髪を引かれ
…足を止めて、チラッと振り返った。
「物じゃないから!
祝福っていうのは…そうだな、ちょっとした”ラッキー” かな?
例えば テストで順位が 1つ上がるとか?」
「そうそう、帰り道で100円拾うとか?」
「今年一年、風邪ひかないとか?」
「好きな子の隣の席になれるとか?」
「え?ちょ、待って
…希望って何言えばいい?」
「そこは適当に流しなさいよ。子供相手なんだから…」
ゴニョゴニョと
顔を寄せて揉めている。笑
ははっ…何だか、面白いや。
「まぁ、良いじゃん!!
俺らを見つけた君たちに、ラッキーをプレゼント! オレたち5枚の中から、好きな葉っぱを選んでよ」
この頃には もう…全然 怖くなんてなくて
緑色した 妖怪に 興味津々。
ぼくたちは吸い寄せられるように、5枚ある葉っぱを それぞれ摘んだ。
選んだ葉っぱは、にっこりと笑うと
端から溶けるように… スッと 消えていく。
「ぼくら今、摘んだよね?」
「消えちゃったよ」
「…夢とか?」
「全員で、同じ夢見たの?」
「そんなことないよね!」
きっと、良い事があるんだよ!と笑いあっていると、遠くで呼ぶ声がした。
「おーい、翔くん!探したよ?
もうすぐ集合時間だから、帰ろう!」
「あ、今行く!
…じゃあね。バイバイ」
手を挙げると
パチン と ハイタッチされた。
パチン☆
パチン☆
パチン…
みんなで 合わせた手を繋ぎ
キュ…と握る。
「また、どこかで会えるかな?」
「うん」
「会える気がする」
「だよね」
「同じく!」
緑の妖怪が言ってた 祝福なんて
本当かどうか…そんなの 分からない。
だけど、この時
根拠のない自信が芽生えたんだ。
強く信じれば、想いは引き寄せられる。
だから、ぼくたちは また会えるよね。
そう信じて、今はこの手を離そう。
「またね」
「またな」
「じゃあね」
「また、今度」
「うん…またね」
5人が それぞれの方向に走り出す。
この先、再び…繋がる未来を信じて。
さて、この後の5人の出会いは…皆んなが知っている通りです。
ただ 残念な事に、この時の事は誰も覚えてません。
覚えてるのは……
クスクスクスクス…
おわり
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
本当に今更のネタですが…
でもね、希望的観測というか
明るい未来を信じたい自分がいて
下書き…もしてない
案 だけで止まってたお話を 仕上げました。
じゃね!
また来るよ〜ヽ(´▽`)/
miu